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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
ラプラス変換とその使い方8<過渡現象編7>ラプラス変換等価回路による交流過渡現象の解き方(2) 元東京電機大学短期大学教授 間邊幸三郎

電磁気現象は微分方程式で表され、一般的には微分方程式を解くための数学的に高度の知識が要求される。ラプラス変換は、計算手順さえ覚えれば、代数計算と変換公式の適用により微分方程式が解ける数学知識への負担が少ない解法である。このシリーズでは電気回路の過渡現象や制御工学等の分野での使用を念頭に置いて範囲を限定して、ラプラス変換を用いて解く方法を解説する。今回は、ララプラス変換等価回路を用いた交流過渡現象の解き方を解説する。

1.短絡電流の遮断

 【例題1】 第1図の回路で、CがスイッチSを閉じて短絡された状態にあるとき、t=0でSを開いて短絡電流を遮断すれば、Lにはどんな電流が流れるか。また、Sの極間にはどんな電圧が現れるか。

第1図
第1図

 【解答】 この場合のs回路は第2図となる。

第2図 s回路
第2図 s回路

 図中の電流 formula001 formula001 は短絡時の定常電流で、

formula002
formula002

である。

 <解法A> ① 電流Is、② Sの極間電圧Vs(=Cの端子電圧 formula003 formula003 )の順で求める方法。

 <解法B> ① 電荷 formula004 formula004 を求め、得られたqから、② Sの極間電圧 formula005 formula005 、③電流 formula006 formula006 の順に求める方法。

 電流と電荷の関係は、

formula007
formula007

であり、s関数上では、電流 formula008 formula008 と電荷 formula009 formula009 の関係は電荷の初期値 formula010 formula010 が零なので、

formula011
formula011

であり、電荷 formula012 formula012 は、

formula013
formula013

 ここで、 formula014 formula014    formula015 formula015

とおけば、

formula016
formula016

 ①  formula017 formula017 の場合は、 formula018 formula018 であり、(1・11)式第1項の電荷 formula019 formula019 は、複素起電力法によれば、

formula020
formula020

で、そのs関数部は、巻末の変換公式[1]により逆変換され、電荷 formula021 formula021 は、

formula022
formula022
formula023
formula023

となるので、電荷 formula024 formula024 は、

formula025
formula025

 また、(1・11)式第2項の初期電流による電荷 formula026 formula026 は、

formula027
formula027

 したがって、求める電荷 formula028 formula028 は、次式となる。

formula029
formula029

 Cの端子電圧 formula030 formula030 は、

formula031
formula031
formula032
formula032

 電流 formula033 formula033 は、

formula034
formula034
formula035
formula035

 第3図に電圧と電流の関係を示す。

第3図 電流
第3図 電流

 ②  formula036 formula036  の場合は、

formula037
formula037

とおけば、電荷 formula038 formula038 は、

formula039
formula039

  formula040 formula040 なので、 formula041 formula041 の関係にある。

 したがって、①の電荷の式である(1・13)式と(1・11)式の右辺第2項について、 formula042 formula042 formula043 formula043 に置き換えれば、次式のように(1・31)式が得られる。

formula044
formula044

 したがって、 formula045 formula045 も①の電荷の式である(1・22)式において同じ置き換えをすればよく、求める電荷 formula046 formula046 は次式となる。

formula047
formula047

 C端の電圧 formula048 formula048 は、

formula049
formula049
formula050 formula051 formula051
formula050 formula051 formula051

 求める電流 formula052 formula052 は、(1・28)式中のβをjγに置き換えることで求められる。

formula053
formula053
formula054
formula054

 第4図に電圧と電流の関係を示す。

第4図 電流
第4図 電流

 ③   formula055 formula055 の場合は、 formula056 formula056

 電荷 formula057 formula057 の式である(1・11)式にこの条件を代入すると、

formula058
formula058
formula059
formula059
formula060
formula060
formula061
formula061
formula062
formula062
formula063
formula063
formula064
formula064
formula065
formula065

 C端の電圧vCは、

formula066
formula066
formula067
formula067
formula068
formula068
formula069
formula069

 第5図に電圧と電流の関係を示す。

第5図 電流
第5図 電流

2.無負荷変圧器の開放

 【例題2】 第6図の回路が定常状態にあるとき、t=0でSを開いたとすればスイッチSの極間にはどんな電圧が現れるか。ただし、 formula070 formula070 の関係にあるものとする。

第6図
第6図

 【解答】 回路各部の電圧や電流を第7図(a)のように定めると、この場合のs回路は同図(b)となる。

第7図 s回路
第7図 s回路

 第7図(b)において、RLCから成る閉路の図示の方向の電流Isは、

formula071
formula071

 Cの端子電圧VCsは、

formula072
formula072
formula073
formula073

 (2・4)式右辺第2項のs関数部は、巻末の変換公式[2](2…7)式により次のように逆変換できる。

formula074
formula074
formula075
formula075
formula076
formula076

 この結果、Cの端子電圧vCは、

formula077
formula077
formula078
formula078

となるので、Sの極間電圧 formula079 formula079 は、

formula080
formula080
formula081
formula081

 いま、次のような回路条件にあったとすれば、

formula082
formula082
formula083
formula083

 また、

formula084
formula084

と仮定すれば、 formula085 formula085 なので、Sの極間電圧v

formula086
formula086

となる。この結果、この場合の電圧vのグラフは第8図となる。

第8図 電圧波形
第8図 電圧波形

【巻末資料】

  第1表 双曲線関数とその性質

formula087
formula087

***********  変換公式  *****************************************************************

 変換公式[1] 例題1の逆変換式の求め方(β>0)

 次の変換公式を利用すると、

formula088
formula088
formula089
formula089
formula090
formula090
formula091
formula091

となるので、(1…2)式に逆変換公式(1…1)を適用すると、次のように計算できる。

formula092
formula092
formula093
formula093

 変換公式[2] 例題2の逆変換式の求め方(β>0)

formula094
formula094
formula095
formula095
formula096
formula096

   << 変換公式のまとめ >>

formula097
formula097
formula098
formula098
formula099
formula099
formula100
formula100
formula101
formula101
formula102
formula102
formula103
formula103

 以下、複素起電力関係

formula104
formula104
formula105
formula105
formula106
formula106
formula107
formula107
formula108
formula108

 注1  formula109_2 formula109_2 式の求め方

formula111
formula111

 注2  formula112_2 formula112_2 式の求め方

formula113
formula113

 別解

formula114
formula114