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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
感電災害の防止対策 旭エンジニアリング(株)川崎事業所 EDグループ 課長代理 大川 美彦

感電による労働災害の特徴は、①建設業に多く発生、②重篤化しやすい、③低圧による感電災害は夏季に集中する点があげられる。夏季に低圧の感電死亡災害が多く(7~9月が多い)発生していることについては、(a)作業従事者が着衣を半袖にするなど、直接皮膚が露出することが多くなること、(b)作業従事者の発汗が多くなり、皮膚自体の電気抵抗や皮膚と充電物の間の接触抵抗が減少すること、(c)厳しい作業条件下での作業となることから、絶縁用保護具や防護具の使用を怠りがちになることなどが原因となっている。このため、例年8月を「電気使用安全月間」と定め注意の喚起と電気安全知識の啓蒙活動が展開されている。

01.感電と人体

 人体に電流が流れたとき、電流の大きさ、通過時間、通電経路によってピリピリと感じる程度から火傷、死亡といった重大災害にまで至る。第1表に「人体への通過電流値と影響」、第1図に「商用周波数の交流に対する人体反応曲線」を示す。ドイツのケツペン氏によると、大きな電流が人体を通過すれば、短時間で危険になり、小さな電流なら長時間流れても危険はなく、その限界は50[mA・s]と提唱した。ヨーロッパでは、50[mA・s]に安全率を見込んで30[mA・s]で運用され成果をあげている。このため、わが国でも30[mA・s]を基本としており漏電災害の防止を目的とする漏電遮断器は高感度・高速形の30[mA]、0.1[s]のものが一般的に採用されている。

 



02.防止対策の基本

 感電防止の基本は、電気機器や配線の絶縁を常に良好な状態に保ち、感電災害の原因となる漏電それ自体を起こさせないことである。また電気作業者といえども、「うっかり」、「思い込み」に起因する感電事故が多いので、むやみに露出充電部に接近しないことが重要である。これには電気機器や配線に対して日常点検や保守管理の励行、電気作業における絶縁用保護具・防護具・用具を用い標準作業を行うことなどがあげられる。



03.保護接地の励行

 電気機器が絶縁不良などで漏電を生ずると、電気機器の金属ケースには大地との間に電圧が現れる。そのため人が知らずにこれに触れると、人体に電流が流れ感電災害が発生する。そこで第2図に示すように電気機器の金属ケースを接地して、金属ケースに生じる対地電圧を人体に危険のない程度に低く抑える方法が考えられる。電気設備技術基準の解釈第29条には300V以下の電気機器の金属ケースには100Ω以下の、300Vを超える低圧の電気機器の金属ケースには10Ω以下の接地工事を施すことが規定されているが、感電防止の観点からこの接地抵抗値はできるだけ低いことが望ましい。



04.漏電遮断器の設置

 漏電遮断器とは、低圧の電路や電気機器で漏電が生じた場合、漏電を自動的に検出して電路を開放し、感電の危険源を除去する装置である。現在では低圧電気の感電災害の防止対策として最も優れた方法と考えられ、感電災害の多い電路や人が容易に触れやすい電路には労働安全衛生規則第333条(漏電による感電の防止)や電気設備技術基準の解釈第36条で設置を義務づけている。漏電遮断器の動作原理は第3図に示すように電路から大地に漏れた地絡電流を各電路に流れる電流のベクトル和として零相変流器(ZCT)で検出し、遮断機構を作動させるものであり、定格感度電流(検出できる地絡電流)や動作時間(遮断器が電路を開放するまでの時間)によって第2表に示すような種類がある。感電災害の防止を目的にした場合は、高感度高速形のものを選定しなければならない。使用にあたっては漏電遮断器を電路に設置しても電気機器の金属ケースには接地を施す必要がある。また、感電防止用の漏電遮断器を各分岐回路ごとに設置し、幹線回路との間に地絡遮断協調を考えた使い方が好ましい。

 

 



05.その他の防止対策

 保護接地の励行、漏電遮断器の設置以外にも次のような対策がある。
①二重絶縁構造の電気機器の使用
②低電圧電源の使用(24Vとか48Vのような超低電圧の電気機器の使用)
③非接地電路の採用



06.検電器・接地工具

 活線作業および活線近接作業を行う場合、事業者は絶縁用保護具・絶縁用防護具を作業者に使用させ、作業者はそれを使用しなければならないよう義務づけられている。しかし、原則は停電作業を基本とする。停電作業を行う場合は停電させた電路への不意の通電による危険を防止するため少なくても次の処置を講じる。
①開閉器の通電禁止
 停電に用いた電源スイッチを作業中施錠し、停電作業中であることを明示した表示類を電源スイッチ自身にまたはその近傍に設ける。
②検電と短絡接地
 作業のために停電した場合は検電器具を使用して停電を確認するとともに、誤通電またはほかの電路からの誘導による不意の通電の危険を防止するため短絡接地器具を用いて電路を確実に短絡接地する。