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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電験問題「発電機と電動機の原理(4)」 東電設計(株) 池内 大典

 電験3種試験問題への対応として、発電機と電動機の原理について、できるだけ絵と図面を使って解説する。今回は発電機と電動機の電機子反作用に関する説明を行う。

1.電機子反作用について

 発電機、電動機には界磁電流が固定子の磁極に作る主磁束と、導体すなわち電機子巻線に流れる電機子電流が作る磁束がある。それぞれの磁束が合成されて合成磁束となり、様々な影響が発生する。この電機子電流による磁束が及ぼす作用を電機子反作用という。

(1)固定子の磁界と電機子巻線で作られる磁界の合成

 直流発電機の場合、第1図(a)のように、固定子の磁束φ1は水平方向で、回転子が右回転の場合、電機子巻線電流がフレミングの右手の法則により左側導体には表から裏、右側導体には裏から表の方向に流れるので、電機子巻線が作る磁束φ2は、アンペアの右ねじの法則により上から下の方向になる。これを合成した合成磁束とφ3は第1図(b)のように左上から右下方向に傾くことになり、これを交差磁化作用という。更に磁束の分布も一様ではなくN極は上側、S極は下側に集中することになる。このとき、固定子の磁極が飽和すると全体として磁束が減少する減磁作用が生じる。これをベクトル図で示すと第1図(c)となる。同図から合成磁束φ3の方向=ベクトル方向なので、左上から右下方向に傾くことが分かる。ただし、磁束が集中すると減磁作用が生じることは忘れないこと。

 これをベースに直流機、同期機の電機子反作用について説明する。

2.直流機

(1)電機子反作用

 回転方向が右回りの直流機で、固定子の磁束の方向、電機子巻線の磁束の方向、合成された磁束の方向を第2図に示す。(a)は無負荷時、(b)は発電機、(c)は電動機を示す。

(b) 発電機 (c) 電動機(b) 発電機 (c) 電動機

■(b) 発電機■                   ■(c) 電動機■

■第2図 発電機と電動機の電機子反作用■

 同図(a)のように無負荷の場合は固定子の磁束φ1だけなので磁束の方向は水平で、電気を取り出すブラシの位置の電機子巻線と磁束の交差はないので、起電力がなく安定して電気を引き出せる。このように合成磁束の方向と直角の方向の軸を電気的中性軸と言う。無負荷時の場合は垂直方向の幾何学的中性軸と同じになる。

 同図(b)のように発電機に負荷がかかると、前章1.(1)で解説したように合成磁束φ3の方向は左上から右下の斜線方向となり、電気的中性軸はφ3の方向と直角方向で、幾何学的中性軸より回転子の回転方向である右側に傾く。ブラシを同図(a)と同じように幾何学的中性軸に置いた場合は電機子巻線で発生した起電力をブラシで短絡することになるので、短絡電流が流れ、ブラシから火花が出ることになる。これを防ぐには、ブラシを新しい電気的中性軸に移動させなければならない。

 同図(c)のように電動機の場合、電流は発電機と逆方向になるので、アンペアの右ねじの法則により磁束の方向は発電機と逆方向になり、合成磁束φ3の傾きは左下から右上方向となり電気的中性軸はこの直角方向で、回転子の回転方向と逆の左側に傾き、発電機と同じようにブラシを通した短絡電流が流れ、ブラシから火花が出ることになる。

 このように直流機に電機子反作用が発生すると、

 ① 起電力を発生しているコイルをブラシで短絡することになるので、整流中のコイルを通して短絡電流が流れ、更にブラシに火花が発生する。

 ② 場合によっては火花が正負ブラシ間を短絡するフラッシュオーバー現象が生じる。

 ③ 減磁作用があるので発電機では電圧低下、電動機では回転速度の上昇が生じる。

(2)電機子反作用軽減対策

 電気的中性軸の傾きは電機子電流が大きく変動するので、電流に合わせてブラシの位置を変更するのは容易なことではない。この対策として、第3図のようにブラシの位置は垂直方向の幾何学的中性軸に固定し、電機子電流が作る磁束と逆方向の磁束を電機子電流に比例して発生させ、ほぼ無負荷の状態と同じ環境を作る装置として、固定子の磁極の間に設置する補極と固定子の表面に配置する補償巻線がある。

3.同期機

(1)同期発電機の構造

 第4図のように、磁極の回転子と、三相のa、b、c相の巻線を120°位相をずらして配置する固定子で構成される。回転子は右回転しているので、フレミングの右手の法則によりa相には図のように表から裏に向かう電圧(プラス)が発生する。電機子電流は負荷に応じて流れる。

(2)固定子の三相巻線に発生する電圧

 回転子の磁極の磁束波形は正弦波なので、a相の電圧は磁極の正弦波に比例し、磁極が左側N極、右側S極で水平のときは0、第4図のように上側N極、下側S極で垂直のときはプラスの最大電圧が発生する。また右側N極、左側S極で水平のとき電圧は0であり、中間は正弦波に比例し、電圧波形は第5図(a)になる。b、c相は120°づつ遅れるので、三相交流電圧の波形は第5図(b)となる。

(3)固定子の三相巻線が作る回転磁界の磁束と回転方向

 次に固定子の三相巻線が作る回転磁界の磁束の大きさと回転方向について解説する。a、b、c相の電圧と同方向のプラス電流が作る磁束の方向は、第4図の各相の巻線にアンペアの右ねじの法則を適用すると、第6図(a)のようにa相は左向き水平方向、b、c相は120°づつ遅れる方向になる。

 固定子の三相巻線が作る合成磁束は、第5図(a)の電圧と電流波形の関係から、電圧と電流が同相の場合、各相の電流の波形は同図(b)の電圧波形と同様になる。同図(b)から、

 (a)スタート位置

 電流は最大電流に対して、a相:0倍、b相:逆方向(−) formula001 formula001 /2倍、c相: formula002 formula002 /2倍なので、各相の最大磁束をφmとすると三相の合成磁束φ2は第6図(b)の方向で、大きさは下式のように3/2= 1.5φmになる。

formula003 (1)
formula003 (1)

 (b)30°進んだ位置

 電流は最大電流に対して、a相:1/2倍、b相:逆方向(−)1倍、c相:1/2倍なので、合成磁束φ2の方向は第6図(c)のように30°回転方向に進みb相の逆方向と一致し、大きさは同様になる。

formula004 (2)
formula004 (2)

 (c)60°進んだ位置

 電流は最大電流に対して、a相: formula005 formula005 /2倍、b相:逆方向(−) formula006 formula006 /2倍、c相:0倍なので、合成磁束φ2の方向は第6図(d)のように60°回転方向に進み、大きさは(1)式と同じになる。

 (d)90°進んだ位置

 電流は最大電流に対して、a相:1倍、b相・c相:逆方向(−)1/2倍なので、合成磁束φ2の方向は第6図(e)のように90°回転方向に進みa相のプラス方向と一致し、大きさは(2)式と同じになる。

 このように固定子に120°の位相差を持って三相巻線を配置すると、三相巻線が作る合成磁束φ3は回転磁界となり、

 ① 大きさは各相の最大磁束の1.5倍であり、

 ② 方向は回転子の回転方向で、

 ③ 各相の最大磁束発生時の方向と一致する。

(4)同期発電機の電機子反作用

 電機子反作用は磁極の主磁束φ1に対する三相巻線が作る回転磁界の磁束φ2の影響を表すものである。どのような影響を及ぼすか解説する。交流なので、電圧と電流の関係には「同相」、電流が進む「進相」、電流が遅れる「遅相」がある。解説では進相は90°進み、遅相は90°遅れとする。

 (a) 同相の場合

 第5図(a)から電圧、電流ともに最大なので磁極の主磁束φ1の方向は第4図のように上向き垂直方向、三相巻線が作る回転磁界の磁束φ2の方向は第6図(e)に示す左向き水平方向になり主磁束と交差する。この結果、第7図(a)のように合成磁束φ3は左に傾く。これにより、N極の左側は増磁、右側は減磁し主磁束にひずみが生じる。この作用を交差磁化作用または偏磁作用という。

 (b) 90°の進み電流

 第5図(a)から進み電流の場合、電流が最大のとき電圧は0であるので、主磁束φ1は第3章の(2)で解説したように、左側N極、右側S極の水平方向となり、回転磁界の磁束φ2の方向は第6図(e)に示す左向き水平方向なので、第7図(b)のようにφ1とφ2は重なり合成磁束φ3が増加する増磁作用となる。

 (c) 90°の遅れ電流

 第5図(a)から遅れ電流の場合、電流が最大のとき電圧は180°進んだ位置の0であるので、主磁束φ1は同章(2)で解説したように、左側S極、右側N極の水平方向になり、回転磁界の磁束φ2の方向は第6図(e)に示す左向き水平方向なので、第7図(c)のようにφ1とφ2は逆方向になり、合成磁束φ3が減少する減磁作用となる。

 (d) 通常の電流

 通常の電流は電圧と同相電流(有効電流)と進み、遅れ電流(無効電流)が合成されているので、有効電流だけの力率1の場合は交差磁化作用、遅れ力率の場合は交差磁化作用+減磁作用、進み力率の場合は交差磁化作用+増磁作用となる。

(5)同期電動機の電機子反作用

 電動機に発生する逆起電力は発電機と同方向であるが、電機子電流は外部からの入力なので発電機とは逆方向になる。これを考慮すると第7図のφ2の方向が反対になるので、発電機の電機子反作用とは逆でφ3は電圧と電流が同相の場合には、右に傾く交差磁化作用または偏磁作用になり、進み電流の場合は減磁作用、遅れ電流の場合は増磁作用になる。

 以上のように、同期機の電機子反作用は直流機のようにブラシがなく火花が発生することはないので、特別な装置は不要です。ただし、主磁束の増減に合わせて電圧が上昇・下降するので、この対応として主磁極の界磁電流を調整する必要がある。



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