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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
対称座標法6(実践編3)地絡回路の計算(2)二相短絡インピーダンス地絡、三相短絡インピーダンス地絡 元東京電機大学短期大学教授 間邊幸三郎

三相回路の計算法の中でとかく理解しにくいとされている「対称座標法」について、できるだけやさしく解説し、その使い方を習得する。本講では、実践編3として、対称座標法による地絡回路の計算(2)二相短絡インピーダンス地絡、三相短絡インピーダンス地絡について解説する。

2.二相短絡地絡回路

[3] 二相短絡一相地絡回路

 第12図の回路のようにb相端子とc相端子とが短絡し、a相端子が formula001 formula001 を通して地絡したときの地絡電流及び発電機端の電圧を求めてみよう。

第12図 二相短絡一相地絡回路第12図 二相短絡一相地絡回路

第12図 二相短絡一相地絡回路

***  回路条件 **********************************************

formula002
formula002

***  対称分変換*********************************************

formula003
formula003

 (54)式で、第1行を2倍したものから第2行と第3行を引くと、 formula004 formula004 なので、

formula005
formula005
formula006
formula006
formula007
formula007

***  対称分回路計算 ***************************************

formula008
formula008
formula009
formula009

 ここで、対称分電圧を整理すると、次のようになる。

formula010
formula010

 ① 式計算の場合 

 (64)式を発電機の基本式と等値すると(65)式、更に(65)式を整理すると、(67)式となる。

formula011
formula011
formula012
formula012

 上式を電流の対称分について解けば、(68)式が成立し、同式を前回の(7)~(14)式にならって解けば、(70)式を得る。

formula013
formula013

 (70)式の第1行を2倍したものと第2行と第3行の和を等値して(71)式、整理して(72)式、

formula014
formula014
formula015
formula015

 ② 図計算の場合 (55),(57)式及び(63)式の関係は、対称分回路が第13図であることを示している。

第13図 二相短絡一相地絡回路の対称分回路第13図 二相短絡一相地絡回路の対称分回路

第13図 二相短絡一相地絡回路の対称分回路

 したがって、対称分電流は第13図から次のように求めることができる。

formula016
formula016

***  逆変換 ***********************************************

formula017
formula017

 各相電圧は次のようになる。

formula018
formula018

 なお、a相電圧は(52)式の回路条件から(86)式で求めた formula019 formula019 を使って次のように求めることもできる。

formula020
formula020

3.二相インピーダンス地絡回路

 第14図の回路に示すようにb相端子が formula021 formula021 を通して、c相端子が formula022 formula022 を通して、それぞれ地絡したときの地絡電流及び発電機端の電圧を求めてみよう。

第14図 二相インピーダンス地絡回路第14図 二相インピーダンス地絡回路

第14図 二相インピーダンス地絡回路

***  回路条件 **********************************************

formula023
formula023

***  対称分変換 ********************************************

formula024
formula024

 上式のすべての行を加えると、

formula025
formula025
formula026
formula026
formula027
formula027

 (6)式の右辺第2項は、

formula028
formula028
formula029
formula029

***  対称分回路計算 ***************************************

 ここで、上式を発電機の基本式と等値し、整理すると(11)式となる。

formula030
formula030
formula031
formula031
formula032
formula032
formula033
formula033
第15図  二相インピーダンス地絡回路の対称分回路第15図  二相インピーダンス地絡回路の対称分回路

第15図  二相インピーダンス地絡回路の対称分回路

 図計算による場合は、(4)式及び(13)式から対称分回路は第15図となる。この結果、電流 formula034 formula034 は第15図から次の各式で求められる。

formula035
formula035
formula036
formula036
formula037
formula037

***  逆変換 ***********************************************

 各相の電流は、

formula038
formula038

 各相の電圧は、

formula039
formula039
formula040
formula040

 [注] b、c両相の電圧は回路条件式である formula041 formula041 から求めることもできる。

4.三相短絡インピーダンス地絡回路

 第16図の回路のようにa相端子、b相端子、c相端子の3端子が短絡し、それが formula042 formula042 を通して地絡したときの地絡電流及び発電機端の電圧を求めてみよう。

第16図 三相短絡インピーダンス地絡回路第16図 三相短絡インピーダンス地絡回路

第16図 三相短絡インピーダンス地絡回路

***  回路条件 *********************************************

formula043
formula043

***  対称分変換 ********************************************

formula044
formula044
formula045
formula045

***  対称分回路計算 ***************************************

 発電機の基本式と(4)式を等値して、

formula046
formula046

 上式の第1行から(10)式、第3行から(11)式が成立し、 formula047 formula047 であり、第2行から(12)式が成立し、 formula048 formula048 は(13)式となる。

formula049
formula049
formula050
formula050
formula051
formula051

 なお、三相短絡インピーダンス地絡回路の対称分回路は、第(10)、(11)、(12)の式より、第17図となる。

第17図 三相短絡インピーダンス地絡回路の対称分回路第17図 三相短絡インピーダンス地絡回路の対称分回路

第17図 三相短絡インピーダンス地絡回路の対称分回路

***  逆変換 ***********************************************

formula052
formula052
formula053
formula053

5.地絡回路計算のまとめ

[1]計算の流れ

 地絡回路では一般的に零相回路が入ってくる。

 (1)回路条件    回路における電圧、電流、電圧電流相互、の関係を式で表す

 (2)対称分変換   ① 電流の変換 I’=CI  

 ② 電圧の変換 V’=CV

 ③ 電流と電圧の相互変換 V=ZIの場合は、

   V’Z’I’  、ここに、 Z’CZC-1

 ④ 電圧方程式

 (3)対称分回路計算 

 (4)逆変換     ① 電流の逆変換を行うI=C-1I’

② 電圧の逆変換を行うV=C-1V’