〜終わり〜
■ぜひアンケートにご協力下さい■
第1図において直列リアクトルが付いていない進相コンデンサ(Xc /n)が接続されている系統に負荷設備による高調波が存在していると、電源側の誘導性リアクタンス(nXl0)とこの進相コンデンサとが並列に接続されていることになり、この両者の並列共振作用によって電源側への高調波流出電流が増加する現象が生ずる。したがって、当該進相コンデンサ(Xc/n)回路に直列リアクトルを挿入することによって誘導性とし、このような高調波の増加を防止するようにしている。第1図から、
Ⅰln=Ⅰn (nXl-Xc/n)/{nXl0+(nXl-Xc/n)} ( 1 )
これを数式的に解析すると( 1 )式で進相コンデンサ用直列リアクトルを設置しない場合、すなわちXl=0とおくと、( 1 )式は、
Ⅰln=Ⅰn(Xc/n)/{(Xc/n)-nXl0}
と変形され、明らかに、
(Xc/n)>(Xc
/n)-nXl0
であるからⅠln>Ⅰnとなり、負荷設備から発生した第n次高調波電流(Ⅰn)よりも電源へ流出する第n次高調波電流(Ⅰln)のほうが多くなることが分かる。
次に第5次高調波、第7次高調波発生源がある場合を例にして、この現象を説明すると次のようになる。
第2、3図はn=5、7として第5次高調波、第7次高調波発生源をもっている一般的な回路の高調波に対する等価回路を示す。
第4、5図に示す高調波発生源から発生する第5次高調波電流I5〔A〕、第7次高調波電流I7〔A〕、電源側の基本波リアクタンスXl0〔Ω〕、コンデンサの基本波リアクタンスXc〔Ω〕、6%直列リアクトルの基本波リアクタンスXl〔Ω〕とすると、電源側への第5次高調波流出電流Il5〔A〕、第7次高調波流出電流Il7〔A〕は高調波電流源I5、I7に対し、電源側のインピーダンスとコンデンサ回路のインピーダンスとが並列に接続されているので、電源への高調波流出電流は次式に示すようになる。
Il5=I5 (5X t-Xc/5)/(5Xl0+(5Xl-Xc/5)) ( 2 )
Il7=I7 (7Xl-Xc/7)/(7Xl0+(7Xl-Xc/7)) ( 3 )
ここで、直列リアクトルが設置されている場合は、
Xl0=0.29Ω、Xl=2.95/(Q×10-3 )〔Ω〕、X c=49.28/(Q×10-3 )〔Ω〕
として( 2 )、( 3 )式に代入すると、
Il5=I5×4.89/(1.45(Q×10-3 )+4.89)( 4 )
Il7=I7×13.61/(2.03(Q×10-3 )+13.61)( 5 )
また、直列リアクトルが設置されていない場合は、X l =0Ωになるので、Xl0=0.29Ω、X c =49.28/(Q×10-3 )Ω、として( 2 )式、 ( 3 )式に代入すると、
Il5=I5×9.86/(9.86-1.45(Q×10-3 ))( 6 )
Il7=I7×7.04/(7.04-2.03(Q×10-3 ))( 7 )
( 4 )、( 5 )式及び( 6 )、( 7 )式を用いて、6%直列リアクトルが設置されている場合及び直列リアクトルが設置されていない場合について、高圧進相コンデンサの定格容量Q=53.2〜1,060kVarに対して、電源系統への第5次高調波電流流出比率=(Il5/I5)×100〔%〕、第7次高調波電流流出比率=(Il7/I7)×100〔%〕を計算すると第1表に示すようになる。
高圧進相コンデンサの定格容量 Q〔kVar〕 |
6%直列リアクトルが設置されている場合 | 直列リアクトルが設置されていない場合 | ||
第5次高調波流出電流比率 (Il5/I5)×100 〔%〕 |
第7次高調波流出電流比率 (Il7/I7)×100 〔%〕 |
第5次高調波流出電流比率 (Il5/I5)×100 〔%〕 |
第7次高調波流出電流比率 (Il7/I7)×100 〔%〕 |
|
53.2 | 98.4 | 99.2 | 100.8 | 101.6 |
106 | 97.0 | 98.4 | 101.6 | 103.2 |
213 | 94.1 | 96.9 | 103.2 | 106.5 |
319 | 91.4 | 95.5 | 104.9 | 110.1 |
532 | 86.4 | 92.6 | 108.5 | 118.1 |
1,060 | 76.1 | 86.3 | 118.5 | 144.0 |
(注) ① 電源の系統短絡容量は150MVAとする。
② 高調波発生機器による第5次高調波電流 I5〔A〕 、第7次高調波電流 I7〔A〕 とし、電源系統への第5次高調波流出電流 Il5〔A〕、第7次高調波流出電流 Il7〔A〕とする。
③ 高圧進相コンデンサの定格容量Q〔kVar〕はJIS規格(1990)による標準定格容量である。
直列リアクトルが設置されている場合は、電源系統への高調波電流流出比率は常に100%未満であり、進相コンデンサの定格容量が大きいほど少なくなる。
直列リアクトルが設置されていない場合は、電源系統への高調波電流流出比率は常に100%を超過しており、負荷設備から発生した高調波電流よりも電源系統へ流出する高調波電流のほうが多くなる現象で、進相コンデンサの定格容量が大きいほど、この傾向は大きくなる。
このような理由によって、JIS規格(1998)の改正により、進相コンデンサは直列リアクトル付きのものを使用することになった。
仮に需要設備の負荷に高調波発生機器がない場合であっても、直列リアクトルが設置されていない進相コンデンサは、配電系統の高調波を拡大する作用がある。よって高調波に対して進相コンデンサに直列リアクトルを挿入し、合成リアクタンスを誘導性にしている。
電源に進相コンデンサを投入すると、一般に進相コンデンサの定格電流に対し、数十倍程度の大きい突入電流が流れる。この突入電流によって回路の変流器の二次側に異常電圧が発生し,レアーショートや火花放電などによる損傷を起こす場合がしばしばある。
更にサージ電圧によって電圧継電器を誤動作させ、制御回路に悪影響を及ぼすことがある。このためには直列リアクトルを設置することによって突入電流を進相コンデンサの定格電流の約5倍程度に抑制することができる。