
変圧器のスコット(T)結線は古くから知られている方法ではあるが、変圧器の結線方法の妙ともいうべき方式であり、興味深い。この方式は相変換方法の一つであって、三相交流から二相交流に変換を行うもので、三相交流回路から大きい単相交流負荷(交流式電気鉄道、電気炉など)にまたは非常用予備発電装置から単相交流負荷に供給する際などに三相交流電源への電圧不平衡防止のためしばしば採用される。 ここでは変圧器のスコット(T)結線の原理、接続方法とその使用例について紹介する。
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変圧器のスコット(T)結線はその用途として代表的なものは、交流式電気鉄道であり、その他電気炉や最近は非常用予備発電装置の単相交流回路にしばしば使用されている。それらの例を簡単に紹介する。
(1) 交流式電気鉄道の変電設備の使用例
交流式電気鉄道は我が国では新幹線や比較的電化が遅れていた東北・北海道・北陸・九州地方などの在来線に採用されている。
交流式電気鉄道には単線式と複線式とがある。通常、き電回路は変電所に対してデッドセクションの左右に単線式の場合2回路、複線式の場合4回路が必要になり、これに対して三相交流で供給すると著しい不平衡をきたすおそれがある。したがって、変圧器のスコット(T)結線を使用して位相角が90°異なる単相交流に変成して変電所を境界にして単線式の場合は左右方面別に二つのき電回路、複線式の場合は上下・左右方面別に四つのき電回路に供給し、一次側(三相交流側)電流ほぼ均等にして三相交流電源への不平衡による影響を軽減している(第4図)。
三相交流電源系統から大容量の単相電力を使用すると、三相交流側に不平衡電圧を生じ三相負荷に逆相電流が流れて、特に誘導電動機はこの影響を受けやすく、過熱したり、正味発生トルクが減少したりする。したがって、三相交流電源側の電流はできる限り平衡させることが望ましく、交流式電気鉄道では電気設備技術基準第55条及び同基準解釈第260条に基づき、連続2時間の平均負荷で三相交流電圧不平衡率 が3%以下にするよう規定されている。
(2) 非常用予備発電装置の使用例
非常用予備発電装置の負荷は主として防災用負荷に供給される例が多いが、これらには三相負荷と単相負荷とがあり、後者に対して電源の三相交流電圧不平衡による影響を軽減するため第5図に示すように三相交流→二相交流に変換するためにスコット(T)結線変圧器がしばしば使用されている。