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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電力系統における様々な電気現象として (株)高岳製作所 監査役 松田高幸

本講では、電力系統における様々な電気現象として、瞬時電圧低下、電圧フリッカ、変圧器インラッシュ及び鉄共振の発生メカニズムと留意事項について解説する。
※テキスト中の図はクリックすると大きく表示されます

01 電力品質に関する電気現象

(1) 電力品質に関係する様々な電気現象

① 電気事故としては以下の3種類程度がある。

  • 短絡事故
  • 地絡事故
  • 断線事故

② 様々な電気現象としては、次のようなものがある(極まれな現象も含む)。

  • 平常時に発生
    高調波フリッカ負荷による電圧変動電波ノイズ
    インラッシュ電流 ・電圧や電流の不平衡 ・電波ノイズ
  • 事故時に発生
    瞬時電圧低下 ・電圧低下と上昇 ・過負荷
    ・電力動揺と脱調 ・周波数低下と上昇 ・間欠地絡
    単独運転 ・CT誤差 ・事故時高調波
    ・事故時誘導電圧と電流
  • 平常時及び事故時に発生
    ・雷サージ ・地絡サージ ・開閉サージノイズ内部発生ノイズ
  • その他
    鉄共振 ・直流偏磁 ・残留電圧 ・磁気嵐

(2) 今回のテーマとの関係

  • 実務では上記の「電力品質に影響する様々な電気現象」に示すように多くの電気現象や異常現象が考えられる。
  • ここで今回のテーマで直接関係の深い、高調波、電波ノイズ、開閉サージノイズ、内部発生ノイズは、下線(ここでは赤色)で示している。
    また、波形の比較や参考として示しているフリッカ負荷による電圧変動、イン ラッシュ電流、瞬時電圧低下、単独運転、鉄共振などは斜体(青色とし、いず れも極簡単に説明、 鉄共振などは電圧波形例のみ)で示している。
  • 更に上記以外の平常時に発生するもの(電圧や電流の不平衡)、事故時に発生す るもの(電圧低下と上昇、電力動揺と脱調、周波数低下と上昇、過負荷、事故 時高調波、CT誤差、間欠地絡、事故時誘導電圧と電流など)、平常時及び事故時に発生するもの(雷サージ、地絡サージ)、その他(直流偏磁、残留電圧、磁 気嵐など)について、黒字(標準)で示している。
    これらは極まれに発生するものが多いが、実務上関係することもあるので、参 考として記載している。


02 主な電気現象のメカニズムと留意事項

(1) 瞬時電圧低下


① 発生メカニズム


  • 変電所とお客さまB間で事故が発生した場合、事故により電圧が低下し、そ の後遮断器で事故除去するが、その間お客さまAで瞬時電圧低下が発生する。なお、お客さまBは停電となる。

② これらの発生の様子を第1図に示す。

③ また、瞬時電圧低下の波形例、機器の瞬時電圧低下耐量を2図に示す。

④ 最近の対策事例

  • 高速開閉器を用いる方式は新しく、詳しい実績などはまだ聞いていない。
    電力系統への再投入などの新技術も採用されつつある。
  • 電圧低下を抑える装置なども諸々の装置が開発され、徐々に採用されている。
  • 第3図参照。

(2) 電圧フリッカ

① 電圧フリッカの発生メカニズム

アーク炉負荷のような変動負荷により電力系統の電圧も変動する。これによって(照明のちらつきなどが)発生する。電圧変動の例を第4図に示す。
ここで⊿V10なるも定義している(詳細は図の中で説明)。

(3) 変圧器のインラッシュ (第5図参照)

① 発生メカニズム

  • インラッシュは変圧器鉄心の磁束が飽和するため発生する
  • 磁束変化は電圧変化に比例するが、残留磁束があると、その残留磁束を起点に 磁束変化し、その磁束が飽和磁束以上になると過大な励磁電流が流れることに なる。これをインラッシュと呼んでいる。

(4) 鉄共振時の電圧波形例(第6図参照)

① 発生メカニズム

  • 非線形リアクトルとコンデンサとの共振現象
  • 一般にはVTの投入時や開放時に発生するが、いろいろなケースが散見
  • 鉄共振波形の特徴:鉄共振時は1/2や1/3 調波の分数調波

(5) 各種の電圧波形例

① 波形例の種類

ここでは以下の波形例を比較して示す(第7図参照)
  • 瞬時電圧低下波形例(50%電圧、5Hz継続の波形例)
  • 高調波電圧波形例(第5次、5%電圧時の波形例)
  • 電圧フリッカ波形例(10Hz、10%時の波形例)
  • 鉄共振時の電圧波形例
  • インバータ機器接続時電圧波形例