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直流発電機は固定子の界磁巻線が磁界を作り、回転子の回転により電機子巻線に電磁誘導作用が発生し、フレミングの右手の法則で中指の方向に誘導起電力が発生する装置である。回転子と電機子巻線、固定子と界磁巻線の構造はほぼ一定であるが、電機子巻線と界磁巻線の接続方法によって4種類に分類される。
(1)原理図と回路図
(a)他励発電機
第1図(a)に示す原理図のように磁界を発生させる界磁巻線の電源を別電源とする方式で、回路図は第1図(b)のようになる。ここで重要なことは発電機の起電力 、回路の電機子巻線抵抗 、ブラシによる電圧降下 、電機子反作用による電圧降下 である。第1図(b)から発電機の端子電圧を 、負荷電流を とすると、
出力 、発生電力 (2)
出力 、発生電力 (2)
、 は大きな値ではないので問題によって無視することもある。
励磁用の界磁巻線の電源を自己の起電力Eを用いる方式を自励発電機という。この方式には以下に示すように電機子巻線と界磁巻線の接続方法として、両者を並列にする分巻発電機、直列にする直巻発電機、直並列にする複巻発電機がある。
(b)分巻発電機
第2図(a)に原理図、(b)に回路図を示す。発電機の端子電圧を 、負荷電流を 、界磁電流 、巻線抵抗(調整抵抗を含む) とすると、
端子電圧、界磁電流の計算に注意することが重要である。
(c)直巻発電機
第3図(a)に原理図、(b)に回路図を示す。発電機の端子電圧を 、負荷電流を 、界磁の巻線抵抗 とすると、 は界磁電流としての作用もするので、
界磁巻線抵抗 による電圧降下が発生することに注意する必要がある。
(d)複巻発電機
第4図(a)に原理図、(b)に回路図を示す。界磁巻線として分巻、直巻の両方を利用する発電機である。式は省略する。
(2)種類と特性
発電機の特性には無負荷状況で界磁電流と誘導起電力の関係を示す無負荷飽和曲線と、負荷電流に対する端子電圧の関係を示す外部特性曲線がある。
(a)無負荷飽和曲線
他励発電機の場合は、磁極に発生する磁束 は第5図(a)のようにスタート部分を除いて、磁気飽和が生ずるまでは界磁巻線電流 にほぼ比例する。ただし、鉄心にはヒステリシス特性があるので、 の増加より減少の方が磁束は大きくなるが、この差はヒステリシス損となるので、鉄心 は差が少ない材料が使われる。よって、電機子巻線に発生する誘導起電力 との関係は第5図(b)のように1本の曲線で、 であるから、 と が比例状態にあるときには は となり、界磁電流 に比例することとなり、磁極が飽和状態では界磁電流に関係なく、一定の電圧になる。
自励発電機の分巻の場合、基本は同様であるが、第2図(b)のように界磁巻線の電源は他励発電機と異なり、自己の起電力となるので、始動してから定格電圧に至るまでの発生過程について解説する。
第6図で直線を巻線抵抗線、飽和曲線を無負荷飽和曲線という。2本の線の間で起電力と界磁電流E/Rfが往復しながら起電力が上昇していく。すなわち、磁極には界磁電流0の場合にも残留磁束があるので、第6図のように残留電圧 が発生し、これによりわずかな界磁電流 が流れて磁束が増加し、更に起電力が増加する。これを繰り返して界磁電流と起電力が増加し、飽和状態に近い状態で起電力と界磁回路の電圧が一致して一定の電圧、すなわち定格電圧となる。
複巻発電機は分巻発電機と同様であるが、直巻発電機は負荷電流=界磁電流であるので無負荷飽和曲線はない。
(b)外部特性曲線
外部特性曲線は起電力 、端子電圧 、負荷電流 、界磁電流 、電機子抵抗 、界磁抵抗 とするとき、 と の関係を表す曲線で、(1)章で示したように発電機の種類によって異なる式となるので、この式を使って解説する。
・他励発電機
で、 は少数値であるので省略すると、
この式から は一定で負荷電流の増加に比例して の電圧降下が発生するので、第7図(a)に示すように右下がりのほぼ直線となる。 は小さいので電圧変動は少ない。
・分巻発電機
この式の関係は第7図(b)に示すように他励発電機と同様であるが、界磁電流は となるので、 の低下とともには減少し、 から が減少するので、 は他励発電機よりも更に減少することになる。なお、定格電流以上に負荷電流が流れると と がどんどん低下し、限界点に達し安定運転ができなくなる。
・直巻発電機
第8図(a)に示すように は一定ではなく界磁電流=負荷電流であるから、磁気飽和に至るまでは で、分巻発電機の無負荷飽和曲線と同様になり、ここから の電圧降下分が差し引かれることになる。一方、負荷抵抗 とすると端子電圧 となるので、二つのVが同じ大きさになる点で安定した電圧となる。なお、この発電機は用いられることは少ない。
・複巻発電機
負荷電流が増加すると端子電圧は分巻の場合は低下するが、直巻の場合は上昇する(第8図(a))ので、この特性を活かし、様々な外部特性曲線を作ることができる。第8図(b)に示すように、点線で示す分巻の外部特性に対して、分巻が作る磁界に加える直巻の磁界を調整し、端子電圧がほぼ一定になる平複巻、上昇する過複巻(両者を和動複巻)、減少する差動複巻(電流の方向を逆にする)に分類される。
分巻発電機の回路図(第2図(b))を更に単純な電気回路にすると第9図のように電池を用いた回路にできる。この並列回路を使って複数の発電機の負荷分担の計算ができる。図における負荷分担は端子電圧Vは一定であるから、
全負荷電流
よって、
なお、並列運転を円滑に行う条件として、
・極性と端子電圧が等しいこと
・外部特性曲線が等しいこと(異なっても並列運転はできるが、負荷変動時に発電機の容量に比例した運転をするためにはこれが必要である。異なっている場合には界磁電流をその度に調整することになる)
同期発電機は三相交流を発生する発電機で、一般には回転子の界磁巻線に直流電流を流して磁界を作りながら回転させると、固定子の電機子巻線に電磁誘導作用が発生しフレミングの右手の法則で中指の方向に誘導起電力が発生する装置である。固定子と回転子の構造が逆の場合もある。種類として前者は回転界磁形、後者は回転電機子形(少容量機のみ)に分類される。
(1)等価回路
交流回路の扱いになるので界磁回路の直流は関係しない。
交流であるから電機子巻線には電気抵抗Rとリアクタンス Xsがある。 Xsの内訳は通常の漏れリアクタンスと電機子反作用で発生する電機子リアクタンスを合わせたリアクタンスで同期リアクタンスXsという。誘導起電力をEとすると、等価回路は第10図(a)のように単純な回路になる。
図から同期インピーダンス は、
同期発電機は交流であるからベクトル図が大切である。等価回路における起電力 、端子電圧 、電機子電流 と同期インピーダンス の関係は第10図(b)となる。
端子電圧 と電圧降下 のベクトル和が起電力 となり、 は より角度 進む。この を負荷角(内部位相角)という。
発電機の1相の出力 は、
であるが、 の と の関係は であるから を無視すると、ベクトル図は新たに第10図(c)となり、このベクトル図から、
これを(7)式に導入すると、
なお、三相電力への転換は3倍、 、 が線間電圧の場合はそのままでよい。
(8)式から負荷角(内部位相角) が増加すると出力も増加するが、 が限界で、これを超えると出力が減少することになり、同期速度での安定した運転はできなくなる。
ここでもう一つ注意すべきことは同期発電機の場合は が大きいので、 、 の関係は送配電線の送受電端電圧の計算ではなく、力率に関係なく第10図(b)のベクトル図に基づいて計算することである。
(2)特性曲線
特性曲線には無負荷飽和曲線と三相短絡曲線、負荷飽和曲線、外部特性曲線がある。
(a)無負荷飽和曲線
定格速度で回転させたときの無負荷時における界磁電流と発電機端子電圧の関係を示すもので、直流の他励発電機と同様で第11図(a)に示す。
注意事項として、同期発電機には回転子の磁界には残留磁束があるので界磁電流0でもほんのわずかの電圧が発生する。無負荷のとき電機子にコンデンサを接続すると進みの電機子電流が流れ、磁界を増加させる作用が発生する。すると、第6図の直流分巻発電機の起電力発生過程と同様に端子電圧が無負荷飽和曲線に沿って上昇する現象がある。これを自己励磁現象という。
(b)三相短絡曲線
定格速度で回転中の発電機を三相短絡したときの、界磁電流と電機子電流の関係を示すもので、リアクタンスによる遅れの短絡電流が流れるので第11図(b)のように磁気飽和の影響をほとんど受けることなくほぼ直線となる。
(c)負荷飽和曲線
定格速度で、負荷電流を一定としたときの界磁電流と端子電圧の関係を示すもので、無負荷飽和曲線と比較して、 の電圧降下があること、力率が遅れると電機子電流が作る磁束が回転子の磁界を減少させる減磁作用、力率が進むと増磁作用が生ずるので、第12図(a)のように界磁電流はある値以上で端子電圧が生じ、飽和曲線となるが、端子電圧は遅れ力率では低下、進み力率では上昇する。
(d)外部特性曲線
定角速度で回転させ、定格電流、定格電圧となる界磁電流と力率を一定に保ち、負荷電流を変化させたときの負荷電流と端子電圧の関係を示す曲線で第12図(b)のようになる。
力率1の場合は直流の他励発電機と同様であるが、力率が変化すると負荷(電機子)電流の作る磁束が回転子の磁界を、力率が遅れると減少させ(減磁作用)、力率が進むと増加させ(増磁作用)るので、端子電圧は力率1の曲線に比べて遅れ力率では無負荷は高電圧、負荷の増加で大きく下がり、進み力率では無負荷では低電圧、負荷の増加で大きく上昇することになる。
(3)短絡比と同期インピーダンス
第11図の無負荷飽和曲線と三相短絡曲線の横軸は同じ界磁電流であるから、一つ
に統一したものを第13図に示す。
(a)短絡比Ks
短絡比 の定義は図で無負荷飽和曲線の定格電圧 を発生させる界磁電流は 、三相短絡電流は 、三相短絡曲線の定格電流 を流す界磁電流 から、
(b)短絡比 と同期インピーダンス の関係
百分率同期インピーダンスを (100%を1として小数点で表現)すると
(9)式とあわせると
(9)、(10)式は重要である。
同期発電機の並列回路は電機子抵抗が小さいので無視すると第14図(a)のように単純な交流回路になる。交流回路では理解しやすくするためにベクトル図が重要である。
ベクトル図を使って並列運転のときに発生する現象を解説する。
(a)起電力の大きさが異なる場合
並列回路図からa、b 2機の起電力を 、同期リアクタンスを とすると、2つの発電機を循環する電流 は、
これをベクトル図で表すと第14図(b)のように、 は差電圧 から90°遅れの電流となる。 は回路図から とは同方向、 とは逆方向であるから、 に対しては90°遅れ、 に対しては90°進みとなる。この結果、外部特性曲線で解説したように、a機は遅れ電流による減磁作用で起電力低下、b機は進み電流による増磁作用で起電力が上昇し、両機の起電力を同じにする。この循環電流を無効循環電流(無効横流)という。なお、循環電流 は出力とは無関係であるが、電機子抵抗損を増加させることになる。
(b)起電力の位相が異なる場合
ベクトル図は第14図(c)で示す。 の大きさは同じで とする。循環電流 の式は(11)式と同様であるが、 と は位相差があるのでベクトル図のような方向の差電圧となり、差電圧に対して90°遅れの となる。この結果、ベクトル図からa機では、
の出力が増加する。一方、b機ではIの方向が逆になるので、
すなわち、a機の増加出力相当の出力が減少することになる。
この結果、a機は回転速度が遅くなり、b機は早くなるので両機の起電力の位相差は同じくなる方向に向かう。この循環電流を同期化電流(有効横流)という。
このように起電力の調整は負荷分担の調整にはならない。負荷分担は周波数が変動するとき、速度調定率によって分担割合が変化する。
(c)並列運転の条件
並列運転を円滑に行う条件として、
・無負荷誘導起電力の大きさ、位相、周波数、波形、相回転が等しいこと
(差電圧が生ずると循環電流が流れ、損失の増加、短絡現象なども生ずる)
・発電機を回転させる原動機は角速度が均一、速度調整が適切であること
(負荷分担を容量に比例させるなど、適切に分担して運転を継続させるため)
次回は電動機について解説する。