〜終わり〜
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変圧器と同様、負荷が接続されるのは二次側=回転子なので、一次側=固定子側は電圧、周波数一定で安定しているが、二次側は負荷の大きさによって、回転子の回転数が変動するので、電圧、周波数は滑りsに比例して変動し、電流も変動することになる。
このことから二次側の等価回路を用いて、二次側の入力、出力、銅損の関係を解説する。
二次側等価回路(前回解説)は端子が短絡されるので第1図となる。更に抵抗r2 / sを巻線抵抗r2と(1)式のr2を差し引いた値を用いると第2図となる。
図からr2、x2は二次側回路(回転子巻線)の抵抗とリアクタンスで は誘導電動機の出力に相当する抵抗となる。
第2図から二次側の入力P2、出力(機械的出力)P20、銅損Pc 2の関係は二次側電流をI2とすると、
二次側回路の全抵抗はr2 / sであるから、
以上から三者の関係は(5)式となる。
入力P2 : 銅損Pc 2 : 出力P20=1 : s : (1−s ) (5)
更に二次側(回転子)の効率η2は(6)式となる。
効率η2=出力P20 /入力P2=1−s (6)
なお、出力P20は電動機の機械損を含めた出力なので、問題に機械損の言葉がある場合はこれを差し引かなければならない。注意してもらいたい。
一方、全体の効率ηは一次側にも銅損、鉄損があるので、P2にこれを加算して一次側入力P1を算出して、
全体の効率η=(出力P20−機械損) / 一次側入力P1
=(出力P20−機械損) / 二次入力P2 +一次側の銅損と鉄損 (7)
滑り は(3)式から(8)式として求めることもできる。
滑りs=銅損Pc2 /入力P2 (8)
誘導電動機は始動時の回転速度 (滑り1)から同期速度Ns(滑り )に至る過程で、一次側に印加する電圧は一定としても、一次、二次の負荷電流、機械的出力、トルク、効率、力率などは一定ではなく変動する。この変動状態を各種の特性として解説する。この各種特性をグラフで表す曲線をトルクの場合トルク速度特性曲線といい、横軸は滑りsで起点は回転速度が (s=1)、終点は同期速度Ns(s=0)とし、縦軸はトルクで表現する。ここでは電流とトルク特性の解説をする。
(1) 電流特性
電流 - 速度特性曲線は第3図で電流は、
・滑り1〜s1間はほぼ一定
・s1〜s2間は緩やかに傾斜して減少
・s2以降は滑りに比例して減少し、滑り で電流も となる。
この過程を二次電流I2を主体に解説する。I2は第1図の等価回路から左側の式を算出し、分子と分母に(s / s)を掛けると(9)式になる。
(9)式から、
(a) 始動時からしばらくの間(滑り1〜s1 )
始動時はs=1でしばらくの間は1に近く、x2はr2の4〜8倍の大きさであることから、(9)式にs=1を入れ、r2を無視すると(10)式となり、しばらくほぼ一定の始動電流を継続する。大きさはx2とr2の関係で異なるが、定格電流の5倍を超える。
(b) 同期速度付近(滑りs1〜 )
sは に近づくのでsx2も に近づき無視すると(11)式となり、電流はsに比例して減少する。
(c) 中間の状態(滑りs1〜s2 )
回転速度がしだいに上昇してsが1より減少していくと(9)の左側の式から( r2 / s )の値はx2に近づいてくるので、(10)式の継続はできなくなる。更に回転数が上がりsが に近くなると、x2より大きくなり(11)式に近づく。こうしたことから、中間状態ではa点からしばらくは緩やかに減少し、途中から急傾斜となってb点と結ぶ特性となる。
一次電流I1は励磁電流I0があるのでI2を一次側に換算してI0とベクトル和にする。特性はI0は小値なのでほぼ同様である。
(2) トルク特性
(a) トルク 〔N・m〕と出力(機械的出力)P20の関係
電動機のトルク 〔N・m〕と出力(機械的出力)P20〔W〕の関係は回転数をn〔rps〕とすると(12)式となる。
ここで、二次入力P2と同期速度n s 、滑りsとの関係式
を(12)式に導入すると(13)式となる。
この二次入力P2は同期ワットという。このようにTは同期ワットに比例するとともに二次入力から求めることができる。
(b) トルクTと滑りsの関係
トルク - 速度特性曲線は第4図でトルクと滑りの関係は、
・始動時a点から最大トルクb点に至るまではほぼ滑り に反比例して増大
・c点〜滑り 間は滑り に比例して減少し、滑り でトルクも
・b、c点間は少し穏やかな傾斜で減少
この詳細を解説する。
トルクは(13)式のように二次入力P2に比例する。第1図の二次側等価回路からI2は(14)式となり、
これを(2)式に導入するとP2は(15)式となる。
(13)式に導入するとトルク は機械損を考慮した定数 を用いて(16)式となる。
(16)式を用いて第4図のトルク - 速度特性曲線を解説する。
① 始動時のトルク
(16)式でs=1とすると、前述のようにx2はr2の4〜8倍の大きさであることから、図のa点のようにTは小さく、始動トルクが小さい。
② 最大トルクTm
(16)式の分子のsを分母に移動すると(17)式になる。
E2、r2、x2は一定で、sだけが変動するので、最大トルクTmは( r2 )2/s=s (x2)2の時に生じ、その滑りsmは(18)式となる。
(17)式に導入するとTmは(19)式となる。このTmを停動トルクという。
以上のことから、例としてx2がr2の5倍、すなわちx2=5r2を(16)式、(19)式に入れると最大トルクに対して始動トルクは1/2.6程度に低下する。
③ 回転してから最大トルクに至る過程のトルク
(16)式で は1に近く、r2≪x2であるからr2を無視すると(20)式となり、トルクTはsにほぼ反比例し、図のようにa点から反比例曲線をスタートしb点に近づくと穏やかな曲線となる。
④ 回転速度が同期速度に近づいたときのトルク
(16)式でsが 近くになるので、sx2を無視すると(21)式になり、トルクTはsに比例し、図のc点から右傾斜の直線で減少し、sが 、すなわち同期速度になるとTは になる。
⑤ b、c点間のトルク
停動トルクb点の周辺は若干穏やかな傾斜し、途中からc点に向かってほぼ直線でトルクは減少する。
(3)比例推移
(a) トルク
トルクTは(17)式の分母、分子をsで割ると(22)式になる。
E2、r2、x2、Kは一定なので(r2 / s)が同一であればTは一定になる。
巻線形では前回解説したように回転子巻線に調整抵抗rを直列接続できるのでrを接続し、合成二次抵抗R=r2+r=mr2とすると、Rとs mの関係は(23)式となる。
(24)式から回転子巻線抵抗r2に新しく抵抗rを接続し、合成抵抗Rがr2のm倍になると同じ大きさのトルクの新しい滑りs mもm倍になる。これをトルクの比例推移という。
この比例推移の関係を第5図に示す。
この特性を用いて巻線形ではトルクを一定に保ちながらの速度制御や始動トルクの確保などが行われる。かご形ではr2は一定なので、こうした制御はできない。
(b) 電 流
電流についても(9)式から(r2 / s)が同一であればI2は同一になるので、トルク同様に第6図に示す比例推移となる。
この特性を用いて始動電流の制御などが行われる。
(4)運転中の速度特性
第4図のトルク - 速度特性曲線から、最大トルクを超えて更に回転速度が上昇すると滑りとトルクは比例関係になり、滑りは定格負荷で3〜5%、無負荷では なので、出力と速度の関係は第7図のようにほぼ同期速度に近い安定した速度特性になる。電流も第3図から同様といえる。
このことから誘導電動機は、速度が安定した定速度電動機といわれる。