〜終わり〜
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連立一次方程式は、複数の一次方程式を同時に満足する解を求めるものである。例えば、電気回路網の基本法則はオームの法則と、キルヒホッフの法則である。電気回路では各岐路の電流を任意に定義できるが、回路網が複雑になると、その値を求めることは容易ではない。各岐路の電流を定義し、キルヒホッフの法則を用いて、電圧と電流の関係を表す一次方程式を作り、それを連立して解けば各電流の値を求めることができる。ここでは、連立方程式の作り方として、電気回路網を例に、岐路電流法および網目電流を解説する。また、解き方としての消去法、置換法および行列式による方法を解説する。行列式による方法は多元連立一次方程式を機械的に解くのに便利である。
このような棒で囲った配列による表を行列式という。横の配列a1、b1を第1行、a2、b2を第2行、縦の配列a1、a2を第1列、b1、b2を第2列という。
また、a1、b2(一般に左上の隅から右下の隅へ引いた対角線)を主対角線といい、a2、b1(一般に左下から右上の隅へ引いた対角線)を逆対角線という。
また、a1、a2、b1、b2のおのおのを要素といい、(1)式の右辺を行列式の展開という。また、行及び列が二つである行列式を二次の行列式、行及び列が三つの行列式を三次の行列式という。
さて、二次の行列式の展開は(1)式の右辺に示すように、簡単に主対角線の要素の積と逆対角線の要素の積からなり、その符号は、主対角線を成すものが正(+)、逆対角線を成すものが負(-)となる。このことを図解すると第1図のようになる。
a1x+b1y=c1(2)
a2x+b2=c2(3)
この(2)、(3)式の連立方程式を行列式を用いて解く方法を以下に述べる。
① xの係数a1、a2を定数項のc1、c2で置き換え、係数c1、c2、b1、b2の行列式を作る((4)式の分子)。
② ①の行列式とa1、a2、b1、b2によって作られた行列式((4)式の分母)との商を求めれば、これがxの答になる。
③ 同様にyに対して解くには、yの係数b1、b2を定数項のc1、c2で置き換え、前と同じに行えばよい((5)式を求める)。
(2)、(3)式を行列式を用いて解く。
〔例題1〕第2図の回路で電流I1、I2及びI3〔A〕の値はいくらか。
〔解答〕行列式を用いて解く。
A点でキルヒホッフの第1法則を適用すれば、
I1=I2+I3(6)
閉路①および②にそれぞれキルヒホッフの第2法則を適用すれば、
I1×3+I3×2=11(7)
I2×2-I3×2=2 (8)
(6)式を(7)式に代入すると、
(I2+I3)×3+I3×2=11
これを整理すると、
3I2+5I3=11(9)
(8)式から、
1×I2-1×I3=1(10)
(9)、(10)式を行列式を用いて解くと、
したがって、
I1=I2+I3=2+1=3A
〔例題2〕第3図でR1、R2及びR3を流れる電流I1、I2及びI3〔A〕の値はいくらになるか。
〔解答〕行列式を用いて解く。回路から次の連立方程式が得られる。
I3=I1+I2(11)
閉回路 ア→イ→エ→アで、
2.5I1+1.0I3=40(12)
閉回路 ア→ウ→エ→アで、
1.0I2+1.0I3=20(13)
が成り立つから、(12)、(13)式にそれぞれ(11)式を代入すると、
3.5I1+I2=40(14)
I1+2I2=20(15)
が得られる。(14)、(15)式を行列式を用いて解くと、
よって、I3は(11)式から、
I3=I1+I2=10+5=15A
となる。
行列式による解法は、未知数が3個ある三元の連立方程式に対しても適用することができる。三元の連立方程式について、これを示すと、
a1x+b1y+c1z=d1
a2x+b2y+c2z=d2
a3x+b3y+c3z=d3
この三次の行列式を展開するには、第4図に示すような方法によればよい。
この図にはx、y、zを求める場合の式の分母に相当する行列式の展開の仕方を示したものであるが、x、y、zの分子の展開に対しても同様の方法をとればよい。
第4図の符合の決め方は、主対角線に平行な線によって得られる項は(+)、逆対角線に平行な線によって得られる項は(-)であると記憶すればよい。
この行列式の展開した結果は、
=a1b2c3+a2b3c1+a3b1c2-a3b2c1-a1b3c2-a2b1c3
前述の三元の連立方程式のx、y、zの解は、第5図の行列式を解くことによって求められる。
〔例題3〕第6図に示す回路の電源を流れる電流は何〔A〕となるか。
〔解答〕第7図のように電流I1、I2、I3を仮定しキルヒホッフの第2法則を適用して連立方程式を立てて、電源を流れる電流I3を求めればよい。
連立方程式は次のようになる。
(18+18+18)I1-18I2-18I3=0
(18+4+9)I2-18I1-9I3=0
(18+9)I3-18I1-9I2=24
これらの式を整理すると、
3I1-I2-I3=0
-18I1+31I2-9I3=0
-6I1-3I2+9I3=8
行列式でI3を求めると次のようになる。
この行列式の分子を展開すると、
3×31×8+(-18)×(-3)×0+(-6)×(-1)×0-(-6)×31×0-3×(-3)×0
-(-18)×(-1)×8=744+0+0-0-0-144=600
一方、行列式の分母を展開すると、
3×31×9+(-18)×(-3)×(-1)+(-6)×(-1)×(-9)-(-6)×31×(-1)
-3×(-3)×(-9)-(-18)×(-1)×9=837-54-54-186-81-162=300
したがって、
ちなみに、この回路の合成抵抗Rを求めてみると、
となる。
このように、三元連立方程式をそのまま行列式による解法で解くと、計算が煩雑になりミスしやすいので、置換法で二元連立方程式に直してから、行列式で解くのが賢明である。