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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電験のための数学(2)連立方程式と行列式 東京電気技術高等専修学校講師 福田 務

 電気工学に数学を応用する場合、まず問題を方程式に作り上げることが大切であるが、更にこの方程式を数学の基本に沿って解くことが、より大切になる。回路網の電流、電圧の計算には、キルヒホッフの法則を適用することが多く、このような場合には、まず、岐路または網の目の数に応じて連立方程式を作り、これから未知電流を求める。連立方程式の解法として、消去法、置換法及び行列式による方法などがあるが、多元の連立方程式の場合には、行列式による解法が最も簡単である。

1 行列式による二元連立方程式の解き方

formula001 (1)
formula001 (1)

 このような棒で囲った配列による表を行列式という。横の配列a1b1を第1行、a2b2を第2行、縦の配列a1a2を第1列、b1b2を第2列という。

 また、a1b2(一般に左上の隅から右下の隅へ引いた対角線)を主対角線といい、a2b1(一般に左下から右上の隅へ引いた対角線)を逆対角線という。

 また、a1a2b1b2のおのおのを要素といい、(1)式の右辺を行列式の展開という。また、行及び列が二つである行列式を二次の行列式、行及び列が三つの行列式を三次の行列式という。

 さて、二次の行列式の展開は(1)式の右辺に示すように、簡単に主対角線の要素の積と逆対角線の要素の積からなり、その符号は、主対角線を成すものが正(+)、逆対角線を成すものが負(-)となる。このことを図解すると第1図のようになる。

    a1xb1y=c1(2)

    a2xb2=c2(3)

 この(2)、(3)式の連立方程式を行列式を用いて解く方法を以下に述べる。

 ① xの係数a1a2を定数項のc1c2で置き換え、係数c1c2b1b2の行列式を作る((4)式の分子)。

 ② ①の行列式とa1a2b1b2によって作られた行列式((4)式の分母)との商を求めれば、これがxの答になる。

 ③ 同様にyに対して解くには、yの係数b1b2を定数項のc1c2で置き換え、前と同じに行えばよい((5)式を求める)。

 (2)、(3)式を行列式を用いて解く。

formula002 (4)
formula002 (4)
formula003 (5)
formula003 (5)

2 二次の行列式を用いてキルヒホッフの問題を解く

 〔例題1〕第2図の回路で電流I1I2及びI3〔A〕の値はいくらか。

 〔解答〕行列式を用いて解く。

 A点でキルヒホッフの第1法則を適用すれば、

    I1=I2+I3(6)

 閉路①および②にそれぞれキルヒホッフの第2法則を適用すれば、

    I1×3+I3×2=11(7)

    I2×2-I3×2=2 (8)

 (6)式を(7)式に代入すると、

    (I2I3)×3+I3×2=11

 これを整理すると、

    3I2+5I3=11(9)

 (8)式から、

    I2-1×I3=1(10)

 (9)、(10)式を行列式を用いて解くと、

formula004
formula004
formula005
formula005

 したがって、

    I1=I2I3=2+1=3A

 〔例題2〕第3図R1R2及びR3を流れる電流I1I2及びI3〔A〕の値はいくらになるか。

 〔解答〕行列式を用いて解く。回路から次の連立方程式が得られる。

    I3=I1I2(11)

閉回路 ア→イ→エ→アで、

    2.5I1+1.0I3=40(12)

閉回路 ア→ウ→エ→アで、

    1.0I2+1.0I3=20(13)

が成り立つから、(12)、(13)式にそれぞれ(11)式を代入すると、

    3.5I1I2=40(14)

    I1+2I2=20(15)

が得られる。(14)、(15)式を行列式を用いて解くと、

formula006
formula006
formula007
formula007

 よって、I3は(11)式から、

  I3=I1I2=10+5=15A

となる。

3 三次の行列式を用いて連立方程式を解く

 行列式による解法は、未知数が3個ある三元の連立方程式に対しても適用することができる。三元の連立方程式について、これを示すと、

    a1x+b1y+c1z=d1

    a2x+b2y+c2z=d2

    a3x+b3y+c3z=d3

 この三次の行列式を展開するには、第4図に示すような方法によればよい。

 この図にはxyzを求める場合の式の分母に相当する行列式の展開の仕方を示したものであるが、xyzの分子の展開に対しても同様の方法をとればよい。

 第4図の符合の決め方は、主対角線に平行な線によって得られる項は(+)、逆対角線に平行な線によって得られる項は(-)であると記憶すればよい。

 この行列式の展開した結果は、

   =a1b2c3a2b3c1a3b1c2a3b2c1a1b3c2a2b1c3

 前述の三元の連立方程式のxyzの解は、第5図の行列式を解くことによって求められる。

 〔例題3〕第6図に示す回路の電源を流れる電流は何〔A〕となるか。

 〔解答〕第7図のように電流I1I2I3を仮定しキルヒホッフの第2法則を適用して連立方程式を立てて、電源を流れる電流I3を求めればよい。

 連立方程式は次のようになる。

   (18+18+18)I1-18I2-18I3=0

   (18+4+9)I2-18I1-9I3=0

   (18+9)I3-18I1-9I2=24

 これらの式を整理すると、

   3I1I2I3=0

   -18I1+31I2-9I3=0

   -6I1-3I2+9I3=8

 行列式でI3を求めると次のようになる。

formula008
formula008

 この行列式の分子を展開すると、

   3×31×8+(-18)×(-3)×0+(-6)×(-1)×0-(-6)×31×0-3×(-3)×0

   -(-18)×(-1)×8=744+0+0-0-0-144=600

 一方、行列式の分母を展開すると、

   3×31×9+(-18)×(-3)×(-1)+(-6)×(-1)×(-9)-(-6)×31×(-1)

   -3×(-3)×(-9)-(-18)×(-1)×9=837-54-54-186-81-162=300

 したがって、

formula009 A
formula009 A

 ちなみに、この回路の合成抵抗Rを求めてみると、

formula010 Ω
formula010 Ω

となる。

 このように、三元連立方程式をそのまま行列式による解法で解くと、計算が煩雑になりミスしやすいので、置換法で二元連立方程式に直してから、行列式で解くのが賢明である。



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