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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
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電験問題「法規 風圧荷重、たるみ、支線強度」 池内 大典

 法規における送配電線の風圧加重・たるみ、支線の強度についてポイントを解説する。

 電験問題では甲種、乙種、丙種風圧荷重の選択と計算、電線のたるみの計算、電柱を支える支線の計算などがある。

1.送配電線の電線に加わる荷重

 電線には第1図のように垂直方向(大地に向かう方向)の垂直荷重と水平方向の水平荷重が加わる。垂直荷重は電線の自重と氷雪による氷雪荷重、水平荷重は台風などの強風で発生する風圧荷重である。

(1)自重の計算

 電線の自重W1は重量m[kg]、重力加速度g=9.8から単位を力の大きさ[N]とすると

  W1=mg=9.8m[N](1)

(2)風圧荷重、氷雪荷重

 風圧荷重、氷雪荷重については電気設備技術基準並びに解釈で次のように定められている。

 電気設備技術基準第32条:支持物の倒壊防止

 架空電線路又は架空電車線路の支持物の材料及び構造はその支持物等が支持する電線等による、引張荷重、風速40m/sの風圧荷重及び当該設置場所において通常想定される気象の変化、振動、衝撃その他の外部環境の影響を考慮し、倒壊のおそれがないよう、安全なものでなければならない。ただし、人家が多く連なっている場所に施設する架空電線路にあっては、その施設場所を考慮して施設する場合は、風速40m/sの風圧荷重の2分の1を考慮して施設することができる。

 電気設備技術基準の解釈第58条:風圧荷重の種別とその適用(単導体電線のみとする)

風圧荷重の種別

 1.甲種風圧荷重:電線の垂直投影面積1m2について980Pa

 2.乙種風圧荷重:電線その他の架渉線にあってはその周囲に厚さ6mm、比重0.9の氷雪が付着した状態に対し、垂直投影面積1m2につき490Pa

 3.丙種風圧荷重: 甲種風圧荷重の1/2とする

風圧荷重の適用

 1.氷雪の多い地方以外の地方では、高温季においては甲種風圧荷重、低温季においては丙種風圧荷重。

 2.氷雪の多い地方(次号に掲げる地方を除く。)では、高温季においては甲種風圧荷重、低温季においては乙種風圧荷重。

 3.氷雪の多い地方のうち、海岸地その他の低温季に最大風圧を生ずる地方では、高温季においては甲種風圧荷重、低温季においては甲種風圧荷重又は乙種風圧荷重のいずれか大きいもの。

 4.人家が多く連なっている場所に施設される架空電線のうち、次の各号に掲げるものについては、甲種風圧荷重又は乙種風圧荷重にかえて丙種風圧荷重を適用することができる。

 (1)低圧又は高圧の架空電線路

 (2)使用電圧が35,000V以下の電線に特別高圧絶縁電線又はケーブルを使用する特別高圧架空電線路

 以上を纏めると第1表となる。

 

 第1表 風圧荷重の種類と適用

地域
区分
氷雪の多い地方以外の地方 氷雪の多い地方 人家が多く重なる場所
低圧または高圧架空線など詳細は上記
低温季に最大風圧を生じる地方 低温季に最大風圧を生じない地方
高温季 甲種風圧荷重 丙種風圧荷重
低温季 丙種風圧荷重 甲種または乙種
風圧荷重
乙種風圧荷重

 

(a)甲種風圧荷重Wkの計算

 風圧の単位はPa=[N/m2]ですから断面積1[m2]に加わる力F[N]を表します。電線の断面積は第2図から電線の直径×長さになります。直径はより線の場合は中心に素線1本で1段ごとに6本増加していきますので2段目は6本で合計7本、3段目は12本で合計19本となります。7本の場合は図のように2段に巻きますので電線の直径は素線の直径d[mm]の3倍、19本の場合は5倍になります。

 以上から倍数nとして第2図の場合の甲種風圧荷重Wkは電線の垂直投影面積1m2について980Paから電線の長さ1mの場合 (2)式になります。

  Wk=980×断面積=980×nd×10-3=980×3d×10-3 [N](2)

(b)氷雪荷重の計算

 第3図のように電線に厚さ6mm,比重0.9の氷雪が付着した状況です。これにより氷雪による垂直荷重と直径を拡大したことによる風圧荷重が加わります。

①垂直荷重W1

  第3図(a)から氷雪の重量ms[kg]は長さ1mとして、電線の直径D[mm],氷雪6[mm]から

 断面積S=π[(D/2+6)2-(D/2)2]=π(D+6)×6 [mm2]

 氷雪の重量は比重0.9からms=0.9×π(D+6)×6×1×10-3 [kg]

 垂直荷重W1’[N]は自重の(1)式のように重力加速度g=9.8から(3)式となります。

  W1’=9.8×0.9π(D+6)×6×10-3 [N](3)

②乙種風圧荷重Wo

 第3図(b)から風圧は電線プラス氷雪の垂直断面積に加わるので、乙種風圧荷重Wo

 垂直断面積S’=(D+6×2)×1×10-3 [m2]、 垂直投影面積1m2につき490Paから(4)式となります。

  Wo=490×断面積=490×(D+12)×10-3 [N](4)

(3) 電線1m当りの風圧荷重を含む合成荷重W

 第1図から垂直荷重には電線自身の自重W1と氷雪による氷雪荷重W1’、水平荷重には各種の風圧荷重WkWoがある。合成荷重Wは垂直、水平荷重のベクトル和で(5)(6)式になります。

   甲種風圧荷重の場合  formula001 formula001(5)

   乙種風圧荷重の場合  formula002 formula002(6)

2.弛度(たるみ)の計算

(1)基本

 送配電線のたるみ(弛度)は第4図のように電線が両支持点間に高低差が無く水平の場

 合水平線ABと電線の最低点Oの距離D[m]で、(7)式で表す。

formula003 [m](7)
formula003 [m](7)

 ここで、W:電線1m当りの風圧荷重を含む合成荷重[N]

      T:電線の水平方向の引張荷重(張力)[N]

      S:径間(電線の支持物間の距離)[m]

 (参考:暗証方法:鳩(8T)が電線の上に2羽(WS2))

(2) 電線の水平方向の許容引張荷重(張力)T

 電線の水平方向の引張荷重(張力)については安全率fを技術基準の解釈66条におい次のように定めている。

 ・高圧架空電線はケーブルである場合を除き、次のような安全率fによる弛度によって施設すること。

  ①硬銅線または耐熱銅合金線では2.2以上

  ②その他の電線では2.5以上

 この規程から(4)式のTは(8)式のように電線の有する引張荷重(張力)Tnを安全率fで割

 ったものとしなければならない。

formula004 (8)
formula004 (8)

(3)電線の実長L

 電線の実長Lは径間S、たるみDとすると(9)式になります。

formula005 (9)
formula005 (9)

3.支線の強度

 支線は例えば架空電線の引き留め箇所や電線の方向が変更される箇所等で支持物を支援する金属線で、電気設備技術基準の解釈59,61,62条で次のように規程されている。

(1)規程(主な内容)

 1.鉄塔は支線を用いて強度を分担させないこと

 2.支線の安全率は2.5以上であること

  ただし、高圧架空送電線の支持物として木柱等を下記に施設する場合は安全率1.5以上

  ・電線路の直線部分でその両側の径間の差が大きい箇所

  ・電線路中5°を超える水平角度をなす箇所

  ・電線路中全架渉線を引き留める箇所

 3.支線をより線とした場合

  ・素線3本以上よりあわせたもの

  ・素線には直径2mm以上及び引っ張り強さ0.69kN/mm2以上の金属線を用いること

(2)支線に加わる引張荷重

 電線の引き留め箇所の支持物における支線の引張荷重T第5図のように電線が引張る水平荷重Pで支持物を倒壊あるいは傾斜させないために、電線と反対方向に引張ってPと平衡させてバランスを取るものである。Tの計算方法は図から

 電線の水平荷重P[N]、高さHp[m]、支線の引張荷重T[N]、支持点の高さHt[m]、電柱との角度θとすると、左右に引張る力のモーメントが平衡すればよいので、支線の水平方向の引張荷重

 T0=Tsinθから(10)式でモーメントのバランスを取り、Tは(11)式となる。

formula006 (10)
formula006 (10)
formula007 [N](11)
formula007 [N](11)

 高低圧架空線が併架されている場合には(10)式の電線側の力のモーメントを高圧線、低圧線ごとに水平荷重×高さを求めて合計する。

 次に5°を超える水平角度αの支持物における電線の水平荷重の合成は第6図のベクトル図から、電線の水平荷重Pと、合成水平荷重P0の関係は (12)式となります。

formula008 (12)
formula008 (12)

 支線の引張荷重Tは(11)式のPに変えてP0を導入する。

(3)支線の素数

 支線の素数nは規程から3本以上で、素線1条当りの引張荷重t[N]、支線に加わる引張荷重T[N]、安全率F、より合わせによる引張荷重減少係数Kとすると(13)式で小数点以下は切り上げます。

formula009 (13)
formula009 (13)

 安全率Fは上記の規程を大切にして2.5と1.5の取り扱いを間違えないことが重要です。

4.過去の計算問題と解答

 問題は2~3年ごとに出題され、最も多いのが風圧荷重に関するものです。

(1)風圧荷重の文章問題を含む問題

 人家が多く連なっている場所以外の場所であって、氷雪の多い地方のうち、海岸地その他の低温季に最大風圧を生ずる地方以外の地方に設置されている、55〔mm2〕(素線径3.2〔mm〕、7本より線)の硬鋼より線を使用した特別高圧架空電線路がある。この電線路の電線の風圧荷重について「電気設備技術基準の解釈」に基づき、次の(a)及び(b)に答えよ。

 (a)高温季と低温季においてそれぞれ適用される電線の風圧荷重の種類として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

  高温季 低温季
(1) 丙 種 丙 種
(2) 甲 種 乙 種
(3) 甲 種 甲種と乙種のいずれか大きいもの
(4) 甲種と乙種のいずれか大きいもの 甲 種
(5) 甲 種 丙 種

 (b)低温季において、電線1条、長さ1〔m〕当たりに加わる水平風圧荷重〔N〕の値として、最も近いのは次のうちどれか。
 ただし、電線に対する甲種風圧荷重は980〔Pa〕、乙種風圧荷重では厚さ6〔mm〕の氷雪が付着するものとする。

  (1)4.7  (2)6.4  (3)7.6  (4)9.4  (5)10.6

 (a)の解答

 電気設備技術基準の解釈58条に規程されたもので、1章第1表から、高温季は甲種、低温季は強風の生じない氷雪地域であるから乙種であるので

 (回答) (2)

 (b)の解答

 水平風圧荷重[N]=乙種風圧荷重Woは第3図から素線径3.2〔mm〕、7本より線の直径D=3×3.2=9.6mmから、(4)式を用いて

 Wo=490×(D+12)×10-3 = 490×(9.6+12)×10-3 =10.6[N]

 (回答) (5)

  電線の直径は素線の本数によるので両者の関係を理解しておくことが重要である。

(2)低温季に最大風圧を生ずる地方における風圧荷重問題 

 氷雪の多い地方のうち、海岸地その他の低温季に最大風圧を生ずる地方で、人家が多く連なっている場所以外の場所における高圧架空電線路の電線の風圧荷重について、「電気設備技術基準の解釈」に基づき、次の(a)及び(b)に答えよ。

 ただし、電線は図のような硬銅より線とする。また、甲種風圧荷重は980〔Pa〕、乙種風圧荷重の計算に使う氷雪の厚さは6〔mm〕とする。

 (a)高温季における電線1条、長さ1〔m〕当たりの水平風圧荷重〔N〕の値として、最も近いのは次のうちどれか。

  (1)3.6 (2)9.4  (3)9.6  (4)10.9 (5)25.4

 (b)低温季における電線1条、長さ1〔m〕当たりの水平風圧荷重〔N〕の値として、最も近いのは次のうちどれか。

  (1)7.7  (2)11.3  (3)14.3 (4)15.4  (5)28.5

 (a)の解答

 甲種風圧荷重は問題図から素線の直径は3.7mmなので(2)式から

 Wk=980×3d×10-3=980×3×3.7×10-3 =10.9[N]

 (回答) (4)

 (b)の解答

 低温季に最大風圧を生ずる地方における風圧荷重は電気設備技術基準の解釈58条の規程から第1表のように甲種と乙種の大きい方を選択しなければならない。

 乙種風圧荷重Woは(4)式を用いて

 Wo=490×(D+12)×10-3 = 490×(11.1+12)×10-3 =11.3[N]

 甲種風圧荷重より大きいので乙種風圧荷重を選択する。

 (回答) (2)

 低温季に最大風圧を生ずる地方においては甲種と乙種の大きい方の選択が重要である。

(3)風圧荷重問題

 氷雪の多い地方のうち、海岸地その他の低温季に最大風圧が生じる地方以外の地方において、電線に断面積150[mm2]( 19本/3.2[mm] )の硬銅より線を使用する特別高圧架空送電線がある。この電線1条、長さ1[m]当りに加わる水平風圧荷重について、「電気設備技術基準の解釈」に基づき次の(a),(b)に答えよ。

 (a)高温季における風圧荷重[N]の値として、最も近いのは次のうちどれか。

  (1)6.8  (2)7.8  (3)9.4  (4)10.6  (5)15.7

 (b)低温季における風圧荷重[N]の値として、最も近いのは次のうちどれか。

  (1)12.6  (2)13.7  (3)18.5  (4)21.6  (5)27.4

 (a)の解答

 高温季は甲種風圧荷重Wkですから、素線は直径3.2mm本数19本なので電線の直径は1章2節(a)で解説したように素線の直径5倍で(2)式から

 Wk=980×nd×10-3=980×5×3.2×10-3 =15.7[N]

 (回答) (5)

 (b)の解答

 低温季は乙種風圧荷重Woですからは、電線の直径D=5×3.2=16mmと(4)式を用いて

 Wo=490×(D+12)×10-3 = 490×(16+12)×10-3 =13.72[N]

 (回答) (2)

 電線がより線の場合電線の直径と素線の本数関係、各種風圧荷重の値:甲種980、そのほかは1/2の490の暗証が大切である。

(4)電線のたるみ

 高圧架空電線に硬銅線を使用して、高低差のない場所に架設する場合、電線の設計に伴う許容引張荷重と弛度(たるみ)に関して、次の(a)、(b)に答えよ

 ただし、径間250[m]、電線の引張強さ58.9[kN]、電線の重量と水平風圧の合成荷重が

 20.67[N/m]、安全率2.2とする。

 (a)この電線の許容引張荷重[kN]の値として最も近いのは次のうちどれか。

  (1)23.56  (2)26.77  (3)29.45  (4)129.6  (5)147.3

 (b)電線の弛度の値[m]として最も近いのは次のうちどれか。

  (1)4.11  (2)6.04 (3)6.85  (4)12.02  (5)13.71

 (a)の解答

 許容引張荷重T[kN]は電線の引張強さを安全率で割ったもので(8)式から

 T=58.9/2.2=26.77 [kN]

 (回答) (2)

 (b)の解答

 弛度(たるみ)の計算は2章1節の(7)式にW=20.67[N/m],S=250[m],T=26.77[kN]を導入して

formula010 [m]
formula010 [m]

 (回答)  最も近いのとして(2)

(5)支線の強度

 図のように低圧架空電線と高圧架空電線を併架するA種鉄筋コンクリート柱がある。この電線路の引留箇所において下記の条件で支線を設けるものとする。

 (ア)低高圧電線間の離隔距離を付け高さを10〔m〕、低圧電線と支線の取り付け高さをそれぞれ8〔m〕とする。

 (イ)支線には直径2.3〔mm〕の亜鉛めっき銅線(引張強さ1.23〔kN/mm2〕)を素線として使用し、また、素線のより合わせによる引張荷重の減少係数は無視するものとする。

 (ウ)低圧電線の水平張力は4〔kN〕、高圧電線のそれは9〔kN〕とし、これらの全荷重を支線で支えるものとする。

 このとき、次の(a)及び(b)に答えよ。

 (a)支線に生じる引張荷重〔kN〕の値として、最も近いのは次のうちどれか。

  (1)15.4  (2)19.1   (3)25.4  (4)27.4  (5)29.0

 (b)「電気設備技術基準の解釈」によれば、支線の素線の条数を最小いくらにしなければならないか。

  (1)5   (2)8  (3)10   (4)12   (5)14

 (a)の解答

 問題図から各電線の水平張力と高さから合成モーメントを求めると

 合成モーメント=9×10+4×8=122[kNm]

 3章2節の(11)式を用いて

 P×Hp=122,sinθ=6/10=0.6から

formula011
formula011 [kN](10)

 (回答) (3)

 (b)の解答

 支線の素線の条数nは3章3節の(13)式を用いて計算する。素線1条当りの引張荷重t[N]は

 直径2.3〔mm〕の亜鉛めっき銅線(引張強さ1.23〔kN/mm2〕)から

 t=1.23×π×(2.3/2)2[kN]、支線に加わる引張荷重T=25.4 [kN]、安全率Fは電線路の引留箇所であるから1.5、より合わせによる引張荷重減少係数Kは減少係数は無視するので1から

formula012 小数点を切り上げて8
formula012 小数点を切り上げて8

 (回答)  (2)

 重要なことはモーメントの計算と安全率の選択です。



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