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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電験のための数学(8)ベクトル解法の基礎になる余弦定理 東京電気技術高等専修学校講師  福田 務

 交流回路を解く場合、一般にベクトル図を描くが、ある偏角をもつベクトルを描くことは、三角形を構成することにつながり、三角形の辺の長さや角の大きさの関係を知ることが解答のカギを握ってくる。三角関数の余弦定理は、三辺の長さと角の大きさとの間の関係を示すもので、それだけベクトル解法の基礎になる大切な定理である。三平方の定理だけでは狭い範囲の問題しか解けないことになる。余弦定理は二つの辺とその挟む角を知ることができれば、第3辺は計算できるというものである。このことについてなぜそうなるのか、また余弦定理の交流計算の応用のしかたについて学ぶことにする。

1 余弦定理の証明

 三角形において、第1図のように2辺に挟まれた角がわかっていれば残りの辺は余弦定理によって求めることができる。余弦定理を示すと

formula001
formula001

 第1式について証明してみると

 第2図の三角形ABCで、頂点Bから辺ACに垂線をおろし、その足をDとする。

formula002         (三平方の定理)
formula002         (三平方の定理)

 ここで  formula003 formula003      

 それぞれ代入すると、

formula004
formula004

  formula005 formula005  であるから

          formula006 formula006 formula007 formula007

 [例題1] 第3図の(1)三角形ABC、(2)平行四辺形ABCDにおける辺BCおよび対角線BDの長さをそれぞれ求めよ。

 [解答](1) 三角形ABCにおいて余弦定理より

formula008
formula008

   したがって   formula009 formula009 [cm]

 (2) 平行四辺形ABCDにおいて

   ∠C=180°― 60°=120°

   また  formula010 formula010 [cm]

formula011
formula011

     ここで  formula012 formula012

   したがって   formula013 formula013 [cm]

 (注) この計算の中でcos120°=-cos60°として式の値を求めたが、一般に三角比の値を求める場合、鈍角のままでは具合が悪いので、これを鋭角の三角比に変えて求めている。三角関数における三角比の式の簡素化のルールだけはしっかりつかんでおく必要がある。

 第4図に、一例としてcos120°=cos(180°-60°)=-cos60°の置き換えについて説明してみた。ほかの三角比についても同じことで、いろいろ応用できるので試みてほしい。

 第4図においてcos120°の値とは、半径rの円周上を点Pが左の位置(第2象限)にきたときの formula014 formula014 の値のことである。ただし、xは負の値であるから

    formula015 formula015   となる。

 [例題2]力率cosθの誘導性負荷と抵抗Rおよび3台の電流計を接続した第5図のような回路がある。それぞれの電流計の指示をI1I2I3とすると力率はいくらになるか。また、負荷電力はいくらになるか。

 [解答]

 この問題の解答に当たっては、三角関数だけで進めていくというわけにはいかない。この回路のベクトルがきちんと描けないことには三角関数の登場するチャンスがない。余弦定理を交流回路で使うためには、まずベクトル図を正しく書くことを念頭においてほしい。

 [解きかたの順序]

 ①第6図のようにベクトル図を描く

 ②余弦定理をどこに当てはめるかを考える
(△oabに適用する)
2辺と挟まれる角をどこにおいたらよいかが余弦定理を使う場合の問題点であるが、この場合I1I2I3で囲まれている △oabに着眼してほしい。角度は180°―θを使うことに注意し、三角比の簡素化を図ると式がまとまりやすくなる。(第7図

 ③ cosθを求める

 ④ 負荷電力Pを求める。cosθを求めれば電力Pは求めることができる。

 第7図のベクトル図の△oabに余弦定理をあてはめると

formula016
formula016

 ここで、 formula017 formula017 だから

formula018
formula018

 したがって  formula019 formula019  となる

 さらに電力(負荷)P

formula020
formula020

 さらにcosθを代入すると

formula021
formula021

 結局、抵抗Rの値と3個の電流計の値だけで負荷電力を知ることができる。

 [例題3]第8図の回路に、交流電圧200Vが加えられているとき、各部の電流I1I2I3はそれぞれ18A20A34Aであったという。負荷の消費電力、無効電力、および力率を求めよ。

 [解答]

 ベクトル図を描くと、第9図のようになる。

 △OPQに着目して余弦定理を適用すると

formula022  
formula022  

 これから  formula023 formula023

 ベクトル図より

  formula024 formula024 であるから  formula025 formula025 である。

 したがって  formula026 formula026

 力率は0.8であるから消費電力P

formula027
formula027

 無効電力Q

formula028var
formula028 var


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