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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
理論計算の落とし穴(1)Δ電流、消費電力、直並列回路の簡単な解き方 東京電気技術高等専修学校 講師 福田 務

電気理論や電力などの計算問題は、電気工学の法則の意味を理解し、幅広く数学の知識を応用して解かなければならないが、試験会場ではあまり時間をかけることはできないため、方針を素早く決定し要領よく計算する必要がある。しかし、その方針次第で落とし穴にはまり、誤答したり時間がかかって解答が求まらないことがある。このシリーズでは、このような落とし穴の例をいくつか取り上げ、計算運用の上手なテクニックを学ぶ。今回は、Δ電流、消費電力および直並列回路の簡単な解き方について解説する。

こんなところに落とし穴がある

【例題1】 

第1図のように、抵抗負荷をΔ結線した平衡三相回路がある。図の単相電力計の指示が1kWであるとき、三相負荷の消費電力〔kW〕として正しいものは次のうちどれか。
 (ア) 1.5  (イ) 1.73  (ウ)2.0  (エ)3.0  (オ)3.46

〔誤答〕 

負荷をΔ—Y変換すると、1相分の電力は、
    [kW] 
 したがって、3相分の電力は、=3=3〔kW〕
                                答 (エ)  

正答〕 

線電流と相電流の位相差はπ/6〔rad〕であるから電力計の指示は、
          
 したがって、この回路の3相電力は、負荷力率が100%だから、
  〔kW〕
                                正解は(ウ

【例題2】 

第2図のような平衡三相回路でΔ結線部分の各相の抵抗に流れる電流[A]として正しいものは次のうちどれか。
(ア)4.62  (イ)6.67  (ウ)8.02  (エ)11.8  (オ)33.3

誤答〕 

3ΩのΔ結線部分の抵抗負荷をΔ—Y変換すると1Ωになるから、 相電流は、
   〔A〕
                                答 (ウ)  

正答

 この場合、まず線電流 を求めると、
    〔A〕
 Δ結線の相電流Δ は、
    〔A〕
                                答 (ア)


 

手間がかかりすぎる解き方を避ける

【例題3】

 第3図の(a)の回路と(b)の回路とは等価であるという。R 〔Ω〕及び X 〔Ω〕はそれぞれいくらか。正しい値を組み合わせたものを次のうちから選べ。

(ア)R=2/13   X=3/13

(イ)R=2/13   X=5/13

(ウ)R=1/2   X=1/3 

(エ)R=5/2   X=5/3

(オ)R=13/2   X=13/3

××× 効率の悪い解きかた ×××

(a)より =2+j3
(b)より b
(a)と(b)が等価であるから、次の(1)式と(2)式が得られる。
   ・・・・・・・(1)    ・・・・・・・(2)
 この2式より、(1)÷(2)を求めると、 が得られる。
 このを再び(1)式に代入すると、
 したがって、  、また、 となり、答は得られるが手間がかかりすぎて、上手な方法ではない。

 以下のような解きかたがあるので知っておくと便利である。

◎◎◎ 効率の良い解きかた ◎◎◎

 アドミタンスを用いて解く。
  
 一方、
ここで、 とおいて、実数部どうし、虚数部どうしをそれぞれ等しいと置けば、
 より  、また  より、  が得られる。

【例題4】 

電圧12Vの電池に抵抗が第4図のように接続されている抵抗に供給される電力が最大となる〔Ω〕の値として正しいものは次のうちどれか。
 (ア)7.5  

 (イ)10 

 (ウ)15 

 (エ)30 

 (オ)40  

××× 効率の悪い解きかた ×××


 Vの両端の電圧、を流れる電流とするときの最大値を求める。
                   
 したがって、この式の分母、分子を で割ると、
 となる。ここで、一定であるから、数学の定理により、 のとき分母は最小となり、電力は最大値をとる。
 したがって、 より、R=7.5〔Ω〕となる。

◎◎ 効率の良い解きかた ◎◎◎ (第5図参照)

 テブナンの定理を用いて、〔V〕、〔A〕、 したがって の消費電力は、
     となり、この式の分母は、一定であるから、 のとき分母は最小となる。
 したがって、=7.5〔Ω〕となる。           ∴ (ア)が正解

* 同じ答を得るにも、ずいぶん計算の手間が省けることになる。