電磁気回路においては、磁束や電荷の時間的変化にかかわる現象があり、それを数式化して解く課題が多く、微分はこのような変化をスマートに取り扱う道具である。ここでは、微分に関する基礎事項と、例題による具体的な取り扱いについて解説する。
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電気工学には電磁誘導に関するファラデーの法則や自己誘導作用、あるいはコンデンサの充電電圧の時間変化など、いろいろな電気現象の変化の様子を数式化して解く課題が多い。このような変化の様子を細かく調べたいときに、微分という手段を使うことによってスマートに答を得られるので、ぜひ微分に親しんでほしい。
では、微分法を用いた計算ではどのように数式(関数)の変化を捉えていくのであろうか。微分に関する基礎的な理解を得たうえで、例題に取り組んでみよう。
ある電気現象を数式(関数)で表したら、第1図のような変化を示すグラフ
y=
f(
x) になったとする。いまこのグラフで、
x がA点(
x1 )からB点
(
x2 )まで変化すると
f(
x) の値は、第2図のように
y1から
y2まで変化していることが分かる。A からBまでどれだけ変化したかといえば、その変化の割合は、平均の変化率を調べればよい。
ここでΔ
x、Δ
yというのはそれぞれ微小な変化を意味する記号と思えばよい。平均変化率は第2図では直線ABの傾きを表している。
y=
f(
x)の曲線上の細かい変化の様子を知るには、平均変化率の幅をできるだけ狭めていきたい。Δ
xを限りなく0近づけることをこのように表現する。
平均変化率を求めるときの x2 - x1=Δx を限りなく0に近づけていくと、その関数はどのような値に近づくかを調べる操作を微分というのである。
つまり、
を求めることが微分をすることである。
さて、関数
y=
f(
x)において
xが(
x1)から(
x1+Δ
x)までの平均変化率は、
となる。 ここでΔ
xを限りなく0に近づけると、
この値を求めることを微分係数を求めるといい、記号
f'(
x1)
で表す。
(例題1)
y =
f(
x) =
x2+3
x-4 において、
xが
x1 = -1 から
x2 = 2まで変
化するときの平均変化率を求めよ。
(解答)
(例題2)
関数
f(
x) =
x2 - 2
x+1 の
x =
x1 における微分係数を求めよ。
(解答)
において、
であるから、
となる。
曲線
y=
f(
x) の
x=
x1における微分係数を求めるということは、
f(
x)
上の点(
x1,
f(
x1))における接線の傾きを求めること同じである。例えば、
y =
f(
x) =
x3 の
x1における微分係数は
f'(
x1) = 3
x12 と
なるが、この3
x12 は点
x1の接線の傾きを示すと同時に、符号をもつ。
実は、この接線の符号が大きな意味をもっている。それは符号が正であれ
ば
x1点で曲線は右上がりになっているし、また逆に負であれば曲線は右下が
りになっている。微分係数を求める目的は、この曲線の状態を調べるうえで
大切なな役目を果たす。
例えば、電気現象の状態の変化が関数で表された場合に、二つの点の微分係数を求めて、もし正の値から負の値になっていれば、その途中に最大値が存在することが分かる。逆に、負の値から正の値になっていればその途中に
最小値が存在することになる。
f'(
x)を求めることが微分するということであるが、
f'(x)のほかに
y' 、
、
などの記号も用いられる。
抵抗
Rに電流を通ずると熱が発生するが、
Rをいろいろ変えたとき、発生する熱量も変化するはずである。このような変化の様子を調べるのに、微分を使うと便利である。
例えば、第3図の回路で抵抗
Rに発生する熱量
Wは毎秒当たりどうなるだろうか。
抵抗
Rに生ずるジュール熱
Wは 毎秒
W =
I2R〔J〕となる。また、この
回路で電流
Iは
であるから、
となる。
(例題3)
発生熱量
において、
E、
rは定数である。
Wが最大になるためにはどのような条件が必要か。
(考え方)
今この式で
Rを大きくして、
R→∞とすると、分母、分子とも∞になって
しまうが、ただ分母のほうに
R2があるため、分母の大きくなり方が分子を押さえ、
W→0になることが想像できる。したがって、
Wは大きくならない。
また、
R→0にすると、分子→0になるから、やはり
W=0になる。
以上のことから、
R→∞、
R→0の途中に最大値のあることが予想される。
この変化の様子を細かく調べるのに、微分を使うと便利である。
(参考)
ここで 関数
を微分するが、関数の商の微分には次のような公
式があるので記憶しておく。
のとき
(解答)
を微分すると、
を微分すると、
したがって、
この微分式
の符号について考えると、
r>
Rのときは
>0であり、
r <
Rのときは
<0となる。
の符号は接線の傾きとも考えられるから、
r>
Rのときは増加(右上
がり)、
r<
Rのときは減少(右下がり)となる。したがって、
r=
Rのと
きに
Wの値は最も大きくなる。したがって、
となって、これが最大値となる。
コンデンサの電圧の時間による変化を例に、微分の考え方を推し進めてみ
ょう。
(例題4)
第4図のような抵抗
R、コンデンサ
C、直流電圧
E及びスイッチSを直
列に接続した回路で、コンデンサ
Cに加わる電圧
vの時間に対する変化が
第5図に示す状態であるとき、次の空欄の下線に入れる正しい文字を、下記文字群から選べ。
ただし、はじめ、コンデンサ
Cの電圧
v=0であり、時刻
t=0でSを
閉じるものとする。
コンデンサに流れ込む電流
i1 と電圧上昇率
との関係は、
(あ)
として表わされる。また、抵抗を流れる電流
i2 は
i2=
(い) (
(う) -
v)
(文字群)
R 、 1/
R 、
C 、 1/
C、
E
(解説と解答)
この問題はスイッチを閉じてから定常状態に落ち着くまでの時間
tの経過
に対するコンデンサの端子電圧
vの変化の様子を問題にしている。したがっ
て、微分の分野の問題であり、設問は微分方程式を立てる部分があるが、時
間経過の途中の問題といっても、要は瞬間、瞬間を止めて考えればよい。
第5図のグラフを0から0.8msまでの時間を一定の幅で、小さく区切って
みると、そのつど電圧
vの変化が一定でないことが分かる。
したがって、コンデンサの端子電圧
vの大きさを示すには、いつの時間帯
での大きさなのかをいう必要が出てくる。このことを
という表現を借りて
示している。電流
iが流れることは、電荷が移動することであり、次の式が
成り立つ。
(電荷)
Q =(静電容量)
C×(電圧)
V
したがって、
が成り立つ。
次にスイッチを閉じて定常状態に至るまで、抵抗
Rに加わる電圧は
(
E -
v)〔V〕であるから、流れる電流
i2は
となる。
このことから
により、
ここで
i1も
i2もどちらも同じ大きさの電流を表現を変えて示したもので
ある。そこで、
i1=
i2であるから、
これを微分方程式という。