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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
コンデンサ物語(1)=電荷を蓄えるしくみ= 元東京電機大学短期大学教授 間邊幸三郎

コンデンサは、電荷を蓄え、放出することで、電圧・無効電力の調整、力率改善、送電能力の向上など、電力系統に必須の設備である。本シリーズでは、コンデンサを現場の実務技術者の視点に立って、いろいろな角度から取り上げ解説する。今回は、その最も基礎的な知識として、コンデンサに電荷を蓄えるしくみについて解説する。

電荷をどのように蓄えるか・・・・コンデンサの仕組み

 第1図(a)のように、スイッチを閉じて平行平板ABに電圧を加えると、同図(b)のように電池から平板導体へ電荷が流れ込みます。
 この状態で、第2図(a)のように、スイッチを開くと、平板AB上の電荷は異種であるため互いに吸引し合っているため電池には戻れず平板に取り残されます。同図(b)
 このため、結果的に平板ABには異種同量の電荷が蓄えられたことになります。

   

 このとき、第3図(a)のように平板に挟まれた空間には電界ができ、同図(c)のように平板間距離に比べて平板の面積が非常に広い場合には、その電界は平等電界となります。
 このときできる電界の大きさ[V/m]は、平板間に加えられた電圧が[V]で、平板間距離が[m]とすれば、
          ・・・・・(1)
となります。
 この電界は電池から入り込んだ電荷でつくられるわけですが、これを電気力線で考えると、ガウスの定理から「真空中では+[C]の電荷からは、/ε[本]の電気力線が出る」ので、(d)図において、平板Aからは/ε[本]の電気力線が出、点線で示すように平板Bに入ります。電気力線はその密度が電界の大きさに等しくなるように定義されているので、平板の面積を[m]とすれば、
           ・・・・・(2)
の関係にあり、電池から入り込んだ電荷(平板上の電荷) は、
          ・・・・・(3)
であることがわかります。


コンデンサとその性能の表し方

 上例でとりあげた平行平板は「電荷を蓄える」働きをもっています。このように、「電荷を蓄える目的でつくられた装置」のことをコンデンサと呼んでいます。コンデンサにおいて電荷を実際に蓄えている場所(上例では平板A,B)を電極と云います。
 (3)式からわかるように、蓄えた電荷は印加電圧に比例するので、コンデンサの性能は、単位印加電圧あたりの蓄電電気量で表すのがよく、
        ・・・・・(4)
と定義します。ここで、 のことを静電容量と呼びます。
 単位は、(4)式で示したように、F(ファラッド)を用います。
 したがって、平行平板コンデンサの静電容量 は、(3)式から、
          ・・・・・(5)
となります。
 第1表にはいろいろな電極形状のコンデンサの例を示します。



コンデンサのパワーアップ 静電容量をモット2増やす秘策は?

 第3図(d)の平行平板コンデンサで、電極AB間に絶縁物を入れて第1図の時と同じ電圧を印加してみると、AB間の電界は外部から強制的に第3図と同じとなります。このため、絶縁物はこの電界中にさらされたことになります。このときの絶縁物を第4図(a)とすると、

 この絶縁物電界中にあるため電気分極(同図(d))が起こります。この結果、第5図のように電極ABともに、分極電荷によって電界が弱められるように作用しますが、電界は外部から強制的にとされているため、この強さの電界を保つために新たに「分極電荷によって弱められた分」だけの電荷が電源部から追加補給されることになります。

 

 このため、同じ電圧を印加しても、絶縁物を入れた方が入れない場合に比べて電極の電荷が増加します。いま、電荷が元の電荷のε倍増加したとすると、
絶縁物を入れない場合の静電容量をとすれば、なので、絶縁物を入れたときの静電容量 は、
          ・・・・・(6)
となり、静電容量が絶縁物を入れない場合に比べε倍になることを意味します。
この場合、キーとなるε比誘電率と呼ばれ、その物質固有の数値をもっています。第2表にはその概数を示します。

第2表 比誘電率の概数

 同表でわかるように、εは1より大きい数値なので、一般に使用されるコンデンサはそのほとんどには絶縁物が入れられています。その種類XXをとって、XXコンデンサというように呼ばれています。
 電気分極を起こす現象を誘電現象と呼んでいます。このため、誘電現象を起こす物質のことを誘電体と云います。したがって、絶縁物は誘電現象に注目した場合は誘電体といいます。先に述べた比誘電率は誘電体の誘電現象の強弱を表すデータということができます。
 また、真空の誘電率εと比誘電率εとの積は誘電体の誘電率といいます。(ε=ε・ε
 したがって、絶縁物を入れたときの静電容量 は、
      ・・・・・(7)
と表せ、(5)式でεをεに置き換えることで扱える関係になっていることがわかります。