〜終わり〜
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ここでは、LやCの電流が90°遅れたり進んだりする理由を、それぞれの電圧と電流の関係式、それを三角関数で表した式を用いて解説する。
よく知られているファラデーの電磁誘導の法則をもとに考えてみる。ある回路でインダクタンスL〔H〕に 秒間に 〔A〕の電流変化が生じたとき、Lに発生する誘導電圧 は次式となる(第1図)。
ところで、この(1)式を見ただけでは90°遅れるという数字は出てこない。 そこで電圧eと電流iが正弦波交流であることに着眼して、(1)式を展開分析してみよう。第1図のインダクタンスLに正弦波交流電圧vを加えると、
そして時刻がt秒から(t+Δt)秒後に電流iはi(t+Δt)に変化したとする。このときi(t+Δt)は次式のようになる。
ここで(3)式を三角関数の加法定理を用いて展開する。
(参考)
ここで使う三角関数の加法定理の公式は、
であるが、参考までに加法定理がどのように導かれるか、三角関数の基礎知識とベクトルの複素数表示を使って証明しておこう。
いま、絶対値(大きさ)が1で偏角がθ1のベクトル を、偏角θ2だけ回転させた場合のベクトル を三角関数と複素数で表示してみると(第2図参照)、
また、 は をθ2だけ回転したベクトルであるから、
(イ)
(イ)
ここで、(ア)式の と(イ)式の の両式を比較してほしい。実数部分とjの付いている虚数部分が等しいから、
の2式が求まる。sinの場合にはサインコス、コスサインと覚え、cosの場合にはコスコス、サインサインと覚えておけばよい。
加法定理で展開すると(3)式は、
となる。
したがって、時刻tから(t+Δt)までの間に変化した電流の値Δiは (4)式−(2)式によって、
= (5)
= (5)
ところで、三角関数の性質から次のことがいえることに気付いてほしい(sin波形、cos波形を描いてみる、あるいは関数電卓で数値を入れて調べてみると分かる)。
や はtが0に近づくと、その値は1に近づく。また、 はtが0に近づくと、その値は に近づく。
この性質を(5)式に当てはめてみると、 と考えられ、 として扱える。
結局(5)式は、
のようにまとまる
(6)式を電磁誘導の法則の(1)式に代入すると、
(7)式で となることもsinとcosの波形から考えるとお分かりになるであろう。
第1図から によって、
が得られる。
これらによって電流iが であったのに対し、電圧vは つまり90°進んでいることになるし、Lを流れる電流iは電圧vに対し90°遅れることが分かる。
第3図のコンデンサCに正弦波交流電圧vを加えると、どのような電流iが流れるのであろうか。いまΔt秒間にΔQ〔C〕の電荷が移動した場合の電流iは定義によって、
また、コンデンサの静電容量C〔F〕、電荷Q〔C〕、電圧V〔V〕との間には Q=CVの関係があるから、
(9)式を(8)式に代入すると、
いまコンデンサCに加わる正弦波交流電圧を、
とし、時刻がt秒から(t+Δt)後に電圧vはv(t+Δt)に変化したとする。このときv(t+Δt)は次式のようになる。
(12)
(12)
したがって、時刻がt秒から(t+Δt)秒までの間に変化した電圧の値Δvは(12)式-(11)式を求めて、
(13)
(13)
ここで、(5)式を取り扱ったのと同様に、tが0に近づいたとき の値が1に近づくこと、及び の値が になることを知って式を整理すると、
となるので、(14)式を(10)式に代入すると、
したがって、コンデンサCに流れる電流iは、Cに加わる電圧 に対して =90°進むことが分かる。