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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電圧・電流波形のいろいろ(1)(直流回路と交流回路) (株)高岳製作所 松田 高幸

現場実務において様々なトラブルに迅速かつ的確に対応するためには、実際に起こる電圧や電流などの波形を理解しておき、波形からトラブルの内容を絞り込むことが決め手になることが多い。本シリーズでは、現象別の特徴ある波形を解説する。今回は、直流回路や正弦波交流回路の開閉に伴う電圧・電流波形を解説する。

1.直流回路の電圧・電流波形

  ① 第1図に直流回路の代表例を示す。

    ここで、Vは直流電圧〔V〕、Iは直流電流〔A〕、Rは抵抗〔Ω〕とする。

第1図 直流回路第1図 直流回路

  ② 第2図に直流電圧Vと直流電流Iを示す。

    VI共に時間に関係なく一定である。

第2図 直流電圧V、直流電流I第2図 直流電圧V、直流電流I

  ③ 直流電圧V、直流電流I、抵抗Rには(1)式の関係(オームの法則)がある。

formula001          (1)
formula001          (1)

2.交流回路の電圧・電流波形

(1)R回路

  ① 抵抗R formula002 formula002 の正弦波交流電流を流すのに要する電圧vは(2)式で表される。

formula003          (2)
formula003          (2)

    ここで、電圧と電流の実効値はVIであり、(3)式の関係がある。

      formula004 formula004   または   formula005 formula005      (3)

    更にviとは同相であるから、記号法で表せば(4)式となる。

      formula006 formula006   または   formula007 formula007      (4)

  ② 第3図に交流回路、電圧・電流波形、ベクトル図の関係を示す。

第3図 交流回路(R回路)における電圧・電流波形第3図 交流回路(R回路)における電圧・電流波形

(2)L回路

  ① インダクタンスL formula008 formula008 の正弦波交流電流を流すのに要する電圧vは(5)式で表される。

formula009           (5)
formula009           (5)

   電圧と電流の実効値はVIであり、(6)式の関係がある。

     formula010 formula010   または   formula011 formula011     (6)

   更にviより90°位相が進むので、 formula012 formula012 を基準ベクトルにすると(7)式となる。

     formula013 formula013   または   formula014 formula014    (7)

  ② 第4図に交流回路、電圧・電流波形、ベクトル図の関係を示す。

第4図 交流回路(L回路)の電圧・電流波形第4図 交流回路(L回路)の電圧・電流波形

(3)C回路

  ① コンデンサC formula015 formula015 の正弦波交流電流を流すのに要する電圧vは(8)式で表される。

formula016           (8)
formula016           (8)

   電圧と電流の実効値はVIであり、(9)式の関係がある。

     formula017 formula017   または   formula018 formula018     (9)

   更にviより90°位相が遅れるので、 formula019 formula019 を基準ベクトルにすると(10)式となる。

     formula020 formula020   または   formula021 formula021     (10)

  ② 第5図に交流回路、電圧・電流波形、ベクトル図の関係を示す。

第5図 交流回路(C回路)の電圧・電流波形第5図 交流回路(C回路)の電圧・電流波形

(4)R-L回路の電圧・電流波形

  ① R-L回路に formula022 formula022 の正弦波交流電流を流すのに要する電圧vは(11)式で表される。

formula023             (11)
formula023             (11)

    ただし、

formula024
formula024

   電圧と電流の実効値はVIであり、(12)式の関係がある。

     formula025 formula025   または   formula026 formula026       (12)

   記号法で表すと、viよりα位相が進むので、 formula027 formula027 を基準ベクトルにすると(13)式となる。

     formula028 formula028   または   formula029 formula029      (13)

  ② 第6図に交流回路、電圧・電流波形、ベクトル図の関係を示す。

第6図 交流回路(R-L回路)の電圧・電流波形第6図 交流回路(R-L回路)の電圧・電流波形

(4)R-C回路の電圧・電流波形

  ① R-C回路に formula030 formula030 の正弦波交流電流を流すのに要する電圧vは(14)式で表される。

formula031             (14)
formula031             (14)

    ただし、

formula032
formula032

   電圧と電流の実効値はVIであり、(15)式の関係がある。

     formula033 formula033   または   formula034 formula034     (15)

   記号法で表すと、viよりα位相が遅れるので、 formula035 formula035 を基準ベクトルにすると(16)式となる。

     formula036 formula036   または   formula037 formula037     (16)

  ② 第7図に交流回路、電圧・電流波形、ベクトル図の関係を示す。

第7図 交流回路(R-C回路)の電圧・電流波形第7図 交流回路(R-C回路)の電圧・電流波形

3.交流電力波形

(1)電圧と電流が同相の場合

  formula038 formula038 formula039 formula039 とすると、平均電力Pは(17)式となる。

formula040        (17)
formula040        (17)
第8図 VとIが同相の場合の電力波形第8図 VとIが同相の場合の電力波形

(2)電圧と電流が90°異なる場合

  formula041 formula041 formula042 formula042 とすると、平均電力Pは(18)式となる。

formula043        (18)
formula043        (18)
第9図 vとiが90度異なる場合の電力波形第9図 vとiが90度異なる場合の電力波形

(3)電圧と電流がα°異なる場合

  formula044 formula044 formula045 formula045 とすると、平均電力Pは(19)式となる。

formula046        (19)
formula046        (19)
第10図 vとiがα度異なる場合の電力波形第10図 vとiがα度異なる場合の電力波形

・交流回路の電圧vと電流iの関係は「 formula047 formula047 なる正弦波交流を流すに要するv」の見方で求めた。
・このような直流回路や交流回路の領域では、波形でみる優位性は少ないが、いろいろの事象の基礎になるので解説した。次回以降では高調波や電圧フリッカなどの様々な電気現象での電圧・電流波形について解説する。