〜終わり〜
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(1) 家電はん用品の高調波発生例
テレビなどの家電はん用品の高調波電流発生例を第1図に示す。ビックリするほど多くの高調波電流を含んでいることが分かる。特に3次、5次、7次などが大きい。電流波形は第1図(b)に示す。
(メモ) 1:全波整流コンデンサ平滑回路はテレビをはじめ多くの家電はん用品に用いられている。
(2) 整流器の高調波発生例
もう一つの大きな発生源である整流器の例を第2図(6相整流器)、第3図(12相整流器)に示す。
ここでは理論値を示している。家電はん用品ほどではないが、大きな高調波電流である。それぞれ第2図( b )に電流波形を、第2図( c )に高調波成分の次数と大きさを示す。
① 6相整流器の例
(メモ) 2:整流器の電源側の変圧器結線にはいろいろあるが、ここではΔ -Y結線で説明している。
② 12相整流器の例
(メモ) 3:整流器の電源側の変圧器結線は図のとおりとした。第2図(a)の6相回路から増設する場合、第3図(a)のようにすると12相回路になる。実務ではこのような事例が多い。
(メモ) 4:第2図(b)、第3図(b)の電流波形とも実際にはほかの次数が若干存在する。
(1) 高調波の大きさの表し方
高調波の大きさの表し方を第1表に示す。細かい式まで覚える必要はないが、意味合いを知って使いこなせると便利である。
第1表 高調波の大きさの表し方
① 高調波電圧の実効値
V3:第3次高調波電圧の実効値
・・・
Vn:第n次高調波電圧の実効値
V3:第3次高調波電圧の実効値
・・・
Vn:第n次高調波電圧の実効値
② 総合電圧ひずみ率
③ 高調波電圧含有率(ある次数の高調波実効値の基本波実効値に対する割合)
(2) 電圧階級毎の高調波電圧の分布状況
全電力会社の一般的な系統での実測結果を整理したものが第4図である。電力系統でみると第5次成分が圧倒的に多くなっているが、これは発生量のうち、第5高調波成分が電力系統に流れ込みやすくなっていることによる。
(メモ) 5:もう少し詳しく述べると、3次電流は変圧器3次(Δ回路)で吸収され、7次超過の電流も近傍の静電容量等に吸収され、電力系統側では第5次成分が多くなっている。
また、近年でも長期的な評価のため、一部ではこのような実測を継続している。
(3) 第5次高調波10%の波形とは
高調波波形に慣れるため、よく取り扱う第5次10%の波形を第5図に示す。
(メモ) 6:第5図の合成波だけをみて、「第5次成分が10%程度」といえるようになればシメタものである。この際ぜひ極めてほしいところである。
(4) 高調波障害事例
代表的なトラブル事例を第6図に示す。力率改善用コンデンサ(50kVA、リアクトルなし)を新規に購入し、使用した途端に当該力率改善用コンデンサに異音が発生した。幸い、基本波ベースの計算、第5次回路の計算を理解している人がおり、短時間で因果関係がはっきりできた。また、対策方法も、リアクトル付きのコンデンサにすれば問題ないことを比較的容易に確定できた。
このようにすぐさま明快になるケースは実際には少なくなっている。むしろ、「変圧器の励磁突入電流が起因」、「高調波でなく高周波が主な原因」、「発生源が2か所以上にあり、調査に多くの時間を要した」、等々複雑になっている。いずれにしても、具体例を知るのが決め手になっている。
(メモ)7:この辺りになるとトラブルを共有し、詳しい仲間ももつことが大事になる。
(5) 対策方針の骨子
対策方針の要点を第2表に示す。ここでは極々簡単に整理しているが、実際には電気協同研究会などを経て多くの時間を要して決着がついたものである。
第2表 対策方針の骨子
① 現状の高調波のオーダを長期にわたり超えないように皆で努力
特高系統:総合3%、配電系統:総合5%を高調波環境目標レベル
② 対策は長期的にみて技術・経済的に協調のとれた公平なもの
はん用機器:不特定多数であることから生産段階で対策(25%低減めど)
特定機器:個別要因が強いので新・増設などに個別実施(50%低減めど)
③ 影響を受ける機器の高調波耐量は環境目標レベル以上
④ その他、諸々の対策は高調波を極力抑える方向
例えば、高調波の影響を受けやすい力率改善用コンデンサの直列リアクトル
:リアクトルの大きさは6%とし、高調波を抑えていくようにする
:高調波耐量は従来の35%(第5次高調波電圧でみると3.5%相当)から
55%(第5次高調波電圧でみると約5.5%相当)向上
⑤ 電力会社は発生側と影響を受ける側の間にあり技術面で協力
⑥ 具体的な対策
:具体的な数値、方法などは指針による
(6) 具体的対策例
①LCフィルタ
対策として最も一般的なフィルタを設置する場合について、第7図に示す。
第7図はLCフィルタを設置し、高調波発生源からの高調波電流が電力系統に流れ込まないようにする方法である。
(メモ) 8:この方法はコストも安く高調波抑制対策としてよく用いられる方法である。弱点と して、電力系統側からLCフィルタに流れ込むこともあり得る。
② 能動フィルタ
第8図は対策として能動フィルタ(active filter)を設置し、発生源の高調波電流をきれいにフィルタ側に流れるようにしたものである。
(メモ) 9:一般には発生量のある割合を吸収するようにしている。高調波発生量を常に監視し、 それに応じて吸収する原理であり、ここのところがLCフィルタと大いに違う。
③ 力率改善用コンデンサの規格改正など
具体的な動きを第3表に示す。
(メモ) 10:地味な内容であるが高調波をうまく吸収し、高調波の問題そのものを軽減していこうとする意志がある。このような考えがいろいろな場面で大事になっている。
第3表 力率改善用コンデンサの規格改正の概要
・平成10(1998)年3月改正
① 「JIS C 4620 キュービクル式高圧受電設備」
直列リアクトル付きを原則(高調波電圧ひずみにの拡大防止)
② 「JIS C 4902 高圧及び特別高圧進相用コンデンサ及び付属機器」
高圧配電系統に直接接続する設備を高耐量仕様で標準化
・第5次高調波電流含有率55%以内(従来35%)
・最大許容電流が定格電流の130%以内
・平成12(2000)年7月改正
③ 「JIS C 4901 低圧進相コンデンサ」
受電変圧器の低圧側に設置する場合についても㈪と同様の扱い
第9図に全体的な整理をしている。
① 発生元としては「家電はん用品」と「整流器」に大別される。
② これらの高調波発生特性の概要を示す。
③ ②までは多くの高調波次数をもっているが、電力系統側でみると5次が最も多く、次いで7次である。
④ 波形的には第9図のテレビの例、整流器の例、電力系統の例(基本+5次)がポイント。
⑤ 対策の考え方は第2表の対策案の骨子を整理したものである。
⑥ 実務的にはこれほど簡単ではないが、全体の流れを理解するには有効と考える。
第1回の直流回路・交流回路に比較すると、大変複雑で難解だったと思います。一方で分かりやすい波形類を多用して説明しているので、全体像を多少なりとも理解してもらえたとの思いもあります。
実務面では苦労話も多いが、役に立つよう願っています。
次回は「電圧フリッカに関する波形」を予定しています。