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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電圧・電流波形のいろいろ(3) (電圧フリッカ) (株)高岳製作所 松田 高幸

現場実務において様々なトラブルに迅速かつ的確に対応するためには、実際に起こる電圧や電流などの波形を理解しておき、波形からトラブルの内容を絞り込むことが決め手になることが多い。本シリーズでは、現象別の特徴ある波形を解説する。今回は、電気炉の不規則な無効電力変動等により生じる電圧フリッカ現象と影響、対策方法について解説する。

 

1.電圧フリッカとは

 大まかには以下のように表すことができる。

 ① アーク炉負荷のような変動負荷がある場合、照明のちらつきが発生する。

 ② このような影響・現象を電圧フリッカという。第1図に直接式アーク加熱のイメージを示す。

 ③ ちらつきの尺度はΔV10(という定義)で表され、この値が0.45を超えると半数以上の人がちらつきを感じるので、負荷変動の発生源側で必要な対策をとる。

 ④ しかしながら、実務面では苦労が多い

 ⑤ 最近ではインバータ負荷による電圧変動、高調波、高周波など課題も多い

第1図 アーク炉(直接式アーク加熱)第1図 アーク炉(直接式アーク加熱)

2.電圧フリッカの波形例

 ① 第2図(a)、(b)に電圧フリッカ時の波形例を示す。第2図(a)は10Hz、10%含有時の波形を、(b)は20Hz、10%含有時の波形である。実際は、いろいろ混じり合った波形となる。

 ② 後述のように照明のちらつきからすると、10Hz成分がいちばん感じる(視感度係数を参照)といわれている。

 ③ アーク炉も10Hz成分をもつが、インバータ機器の内、溶接機やクレーン車にも10Hz成分が多く、影響が出ている。

 ④ トラブル事例を調査する際、波形ベースでつかんでおくと、いざというときに助かることがある

第2図 電圧フリッカ波形例第2図 電圧フリッカ波形例

3.電圧フリッカの評価方法

 電圧フリッカの大きさ(尺度)はΔV10というものを用いて表し,この大きさで評価されている。

 (1) ΔV10の意味合い

 ΔV10とはフリッカをちらつき感の大きさで表したもので、電圧動揺を生ずる10Hz正弦波変動の振幅の実効値として表現している。

 人間の目には10Hz程度がちらつきを一番強く感じ、それ以上でもそれ以下でも度合いは低くなるので、後述する視感度曲線を用いて、10Hzに換算した値を求めている。

 (2) ΔV10の式

 以下の式で表される。

formula001
formula001
第3図 電圧フリッカの評価方法第3図 電圧フリッカの評価方法

4.インバータを用いたフリッカ負荷の動き(シーム溶接機の例)

 ① 第4図はシーム溶接機の操作状況を示す。

 ② 変動速度などはヒートコントロール、通電時間、休止時間などによって変動する。

 ③ 1秒間に10回程度の変動を生ずる。

 ④ その他、経験している例ではコンテナクレーンやプレス機などでも変動がある。

 ⑤ 電圧フリッカを発生しやすい機器が増大中である。

第4図 シーム溶接機の負荷変動例第4図 シーム溶接機の負荷変動例

5.インバータを用いたフリッカ負荷の動き(コンテナクレーンの例)

 ① 第5図はコンテナクレーンの負荷変動例を示す

 ② 業務の内容によって電流特性が図のように異なる。1〜2分の間に多くの変動があるので、これもちらつきを感じやすいものになる。

 ③ クレーン使用時間とΔV10をみるとピッタリ相関がある

 ④ クレーンをいつ使用するか分からないので、原因特定に苦労することがある。

第5図 コンテナクレーンの例第5図 コンテナクレーンの例

6.トラブル事例(被害箇所の近傍に発生源が2か所)

 ① 原因究明に苦労したトラブル事例を紹介する。

 ② 第6図は、6kV配線線に2か所のフリッカ発生源があるときの調査例である。

 ③ この結果として、第7図に電圧変動と電力変動を示す。

 ④ この場合、A需要家は電圧が低下すると電力も低下するが、B需要家は電圧が低下しても電力をとっている。すなわち、B需要家が電圧変動発生源の主な需要家である

 このように影響の大きい箇所の選定が必要になりつつある。

第6図 トラブル事例(系統図)第6図 トラブル事例(系統図)
第7図 トラブル事例(電圧、電力の変動)第7図 トラブル事例(電圧、電力の変動)

7.対策の考え方・事例

 ① 対策方法はいろいろあるが、ここでは代表的なTCR(Thyristor Controlled Reactor)について図示する。

 ② 第8図にTCRの動作原理を示す。すなわち第9図に示すようにTCRによって、電源側の無効電力の合計値が零になることを示している。

 ③ 第10図は装置面から表している。

第8図 TCRの動作原理第8図 TCRの動作原理
第9図 TCRの無効電力補償の様子第9図 TCRの無効電力補償の様子
第10図 TCRの一般的な制御ブロック図(アーク炉 と逆位相を発生)第10図 TCRの一般的な制御ブロック図(アーク炉 と逆位相を発生)

 高調波あり、高周波あり、加えて電圧、有効電力、無効電力の実効値変動があったり、正にいろいろな波形に出合いました。実務面ではトラブルが増大している分野なので、少しでもお役に立てばと願っています。
 次回は原点に戻って、「電力系統事故時の電圧・電流波形」を解説します。