〜終わり〜
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静電容量C〔F〕のコンデンサの電極間にV〔V〕の電位差を与えると、内部に電気エネルギーが蓄えられ、その大きさは
になることが知られている。ところが、次に示すような理由で、CV 2〔J〕になるのではないかと考える方がいる。もっともらしい考え方であるが、正しくない部分が1か所ある。
考え方のどこに誤りがあるか
第1図のコンデンサ内部の電界の強さEは、


コンデンサの電荷Qはこの電界に逆らって、極板P1からP2に移動したのであるから、移動する途中に電界から受ける力(クーロン力)は、


となる。また、電荷
がこの
に逆らって
だけ移動したときに、外部から与えられるエネルギー
は力学の公式によって、


この(3)式に(2)式を代入すると、


更にQ=CVであるから(4)式に代入して、
W=CV 2
が得られる。
確かに、この結論では
ではなく、W=CV 2になってしまっている。
また、(1)式から(3)式までのコンデンサに関する基本式は、すべて正しい。とすれば、式を用いるうえで考え方の誤りがあるのである。
(なぜいけないのか)
まず、コンデンサの電界Eは、何によって生じているかといえば電荷Qによって生じているのであるから、Qが極板P1から極板P2に移動する間は、(1)式で求められる値ではないはずである。つまり、電界Eは電荷Q自身が極板P2に到達し終えたときに成立するものなのである(発生するものである)。
それでは電荷Qが移動する途中での電界はどう考えればよいのかという疑問が起こることになる。
基本的には(1)式から(3)式までの式を使って説明することには変わりはないが、これらの式を使う場合に、はじめから最終状態の電荷Qを考えてはいけない。
電界の大きさを一定として、電荷がいっぺんにQだけ移動すると考えてしまうと、電界の大きさの変化が大きすぎて、(2)式を用いることができないのである。だから、はじめから最終状態の電荷Qを考えずに、Qをごく小さな電荷qの集まり(n等分する)と考えて、このqが次々に極板P1から極板P2に移動すると考える必要がある。なぜなら、qがP1からP2に移動する際の電界の変化は無視することができて、その間は電界Eは一定と考えてよいから(2)式が使えることになる。
コンデンサの静電エネルギーの正しい求め方
このコンデンサの保有するエネルギーは、電荷Q〔C〕を全て電界に逆らって一方の極板P1からもう一方の極板P2に移動したときに外部から与えられるエネルギーに等しい。そこで、このエネルギーを求めるためには、電荷Qをいっぺんに移動させるのではなく、微小電荷qの集まりと考えてqを1個ずつP1からP2へ移動するときのそれぞれのエネルギー(仕事量)を求めてから全体のエネルギーの総和を求めることが正しい。
はじめ、P2には電荷がないから電界E0=0である。第2図のように1個目のqがP1からP2に移動するとき、外部から与えられるエネルギー〔仕事〕W1は、


となる。
第3図のように1個目のqがP2に達すると、電界E1が生ずる。
このとき、
次に第4図のように2個目の
が移動すると、外部から与えるエネルギー
は、


となる。この2個目のqがP2に達すると電界E2は、


となる。同様に3個目のqが移動すると、


となる。
以下、
から
が得られる。この考え方をn個目のqにまで順々にあてはめていくと、n個目のqが移動するとき、第5図のように外部から与えるエネルギーWnは、


となることが分かる。
結局、W1からWnまでqの移動に必要なエネルギーの総和Wは、




ここで、等差数列の和の公式を用いてまとめると、


ここで分母、分子にnを掛けると、


ここで nq=Qであるから、


ここで、n→∞とすれば
となるから、


となる。
ここで別の角度から式
を考えてみる。
静電容量C〔F〕をもつ平行板コンデンサに電位差V〔V〕を加え、しだいに高めていくと、これに蓄えられる電荷Q〔C〕は第6図に示すようにQ=CVの直線にしたがって増加する。このグラフの斜線を引いた部分の面積を求めてみると、


となって、平行板コンデンサの保有するエネルギーを示している。結局、電荷が0からQに達するまでになされた仕事Wは、第6図の斜線部分の三角形の面積に等しいのである。このエネルギーは誘電体内に蓄えられるのである。