〜終わり〜
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1.1 インバータの原理
第1図にインバータ回路の原理を示す。
(a)は回路、(b)は出力電圧である。
ここで直流電力を交流電力に変換する装置を逆変換装置又はインバータという。これに対し、交流電力を直流電力に変換する装置を順変換装置、又はコンバータという。
(参考1)
半導体素子:サイリスタ、トランジスタ、GTO、IGBTなど
変換方式 :電圧型、電流型、(一般には電圧型)
出力波形 :正弦波出力、方形波出力、PWM波出力など
1.2 直流電圧制御の原理
第2図に直流電圧制御の一例を示す。
(a)はDCチョッパ回路の例、(b)は出力電圧(低い場合)、(c)は出力電圧(高い場合)である。
(参考2)DCチョッパ回路の原理関係
・チョッパとは「切り刻む道具」の意味合い。
・ON、OFFの時間で出力電圧Voを調整する。
1.3 PWM制御の原理
第3図にPWM制御の原理に関する回路例を示す。
インバータ回路の出力は方形波なので、これを正弦波に近づくように工夫している。具体的にはコンパレータの出力を例えばトランジスタのベースとして使い、図のように平均すると正弦波に近くなる。
(参考3)
・PWM制御(Pulse Width Modulation control)
1.4 インバータ機器の構成
第4図にインバータ機器の構成例を示す。
(a)はインバータ機器の構成概要、(b)はインバータ機器の具体構成例(主回路部分)である。
(参考4)
・実回路では、コンバータ部、インバータ部のほかに駆動部、制御部、電源部、インターフェイス部などがある。
2.1 波形類の種類
第5図にインバータ機器に関する波形の種類を示す。
(1) 繰り返しパルス波形による高周波
繰り返しパルスがある場合、このパルスの周波数のN倍オーダ(数倍程度)の高周波が発生する(フーリエ級数で求められる高周波)。
インバータの場合は繰り返しパルス(スイッチング周波数f0)が20kHz程度なので、高周波は数十kHz程度になる。 (第5図(a)参照)
(2) 近傍のLやCに流れる過渡現象波形
この近傍のLやCに流れる過渡現象波形は、実情として数百kHz〜数MHz程度の高周波になる。 (第5図(b)参照)
(3) 合成波形
実際には上記の高周波のほかに高調波分がある。高調波分は、6相整流器であれば第5次、第7次、第11次、第13次など数百Hzになる。
(ただし、PWM制御の場合、単純な6相整流器の場合と違いかなり少ない)
以上から、合成波形は第5図(c)のような波形になる。
(参考5)
・高調波は、第2調波から第40調波程度までをいう。
・これ以上を高周波と称している。
2.2 インバータ機器の波形によるトラブル事例
第6図にインバータ機器を新増設した場合の、前後の波形例を示す。
このときはトラブルも発生しており、合わせて説明する。
(1) トラブルに至った経緯
① インバータ(モーター)を新設(既設設備に接続)
② インバータを充電すると多くの高調波、高周波を含有
③ 既設設備に接続しているCR回路の電流増大
④ CR回路の障害発生
(原因は当初推定した高調波のみでなく、高周波も起因していた)
(2) 電圧波形例、設備状況例
2.3 インバータ機器の負荷変動によるトラブル事例
第7図にインバータ機器の負荷変動によって、電圧変動や電圧フリッカが発生した事例を示す。
(1) 変動負荷例
変動負荷例として、ここではクレーン車と溶接機の例を示す。
(2) 負荷変動に起因する電圧変動例
第8図は電圧変動(実効値)と電力変動(有効電力値)の例を示している。図をよく見ると「電圧と電流の動きが逆になっている」ことがわかる。
すなわち、この場合の変動負荷は電圧変動の発生源になっている。
(詳細は、電圧・電流波形のいろいろ(3) (電圧フリッカ)を参照)
インバータ機器の進歩、普及拡大には目を見張るものがある。
特に、省エネ効果が大きい。インバータ素子も量産化されている。設備費、生産コスト、客先での経済効果も大きい(標準化が進んでいる)。
このように良いことずくめであるが、電気の品質面では留意事項も多い。高調波、高周波に加えて電圧フリッカ、瞬時電圧低下などのトラブル事例も散見される。
トラブル事例の共有化、技術者育成などを通して改善していく必要性が一層高まっている。
今回も幅広い面にわたって波形が出てきました。また、慣れない電気現象も多かったと思いますが、実務面ではしばしば体験するところであり、多少なりともお役に立つよう願っています。インバータ機器の省エネ効果も説明したいところですが、紙面の都合もあり、ここでは省略します。