このページにおける、サイト内の位置情報は以下です。


社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
インダクタンス物語(7)交流の発生と所要動力 元東京電機大学短期大学教授 間邊幸三郎

電磁誘導現象は電気のあるところであればどこにでも現れる現象である。このシリーズは電磁誘導現象とその扱い方について解説する。今回は、交流誘導起電力の発生とトルクについて解説する。

この講座をご覧いただくには、Adobe Flash Player が必要です。
Adobe Flash Player はこちらから無料でダウンロードできます。

1.運動エネルギーに関する関係式

 運動エネルギーで基本となる関係式を第1図に示す。

第1図 運動エネルギー(仕事・動力)に関する関係式
第1図 運動エネルギー(仕事・動力)に関する関係式

 直線運動の場合は、力をF[N]、速度をv[m/s]とすれば、パワー(動力)pは、

formula001
formula001

 回転運動の場合は、トルク(回転力)をτ[Nm]、回転角速度をω[rad/s]とすれば、パワーpは、

formula002
formula002

の関係にある。

2.磁界中で回転するコイル ―その1―

 第2図(a)のように、磁束密度B[T]の平等磁界中で、同図(b)のようなa[m]、b[m]を辺とした巻数Nの長方形コイルを回転させる(①)と、どんな現象が起こるだろうか。

 (1) 準備  コイルの面を上向きとしたコイル断面図である同図(c)に置いて、コイルの軸(矢印の方向)に対して右ねじの関係にある方向を正の方向と約束すれば、図のように、左側b導体b1では●(ドット)が、右側導体b2では×(クロス)が、それぞれ正の方向ということになる(②)。

第2図 磁界中でコイルを回転させる

 (2) このコイルを第3図のように、回転角速度ω[rad/s]で反時計方向に回転させて(①)、コイルの軸が上向きの位置から時間を起算すると、時刻t[s]におけるコイルの位置は②となり、このときの鎖交磁束 formula003 formula003 は、

formula004
formula004

  となるので、コイルでは、次式の起電力eがコイル端C1C2に誘導される(③)。

formula005
formula005

 ただし、 formula006 formula006 、   formula007 formula007

第3図 磁界中で回転するコイル ―その1―

 (3) ここで、コイル端C1C2にスリップリングを介して外部に抵抗を接続すると、この時の抵抗がコイルの内部抵抗を含めてR[Ω]であれば、コイルには次式の電流が流れる(④)。

formula008
formula008

 (4) この結果、コイルには、この電流と磁界によって電磁力fafbが作用する(⑤)。

formula009
formula009

 (5) この電磁力の内、b導体に作用する電磁力fb1はコイルを時計方向に回転させるように働く。このため、コイルには次式のトルク(回転力)が作用する。

formula010
formula010

 (6) 別解  (3)において、コイルには、起電力eと電流iによって電力pが発生する(⑥)。

formula011
formula011
formula012
formula012
formula013
formula013

 (7) この電力は回転動力が変換されたものであるから、そのトルクτは(6)式の関係から次式となる。

formula014
formula014

 (8) この場合、コイルに発生したトルクは⑦に示すように時間とともに変化するが、その平均値である平均トルクTは、次式で示される(⑧)。

formula015
formula015

 (9) Tの別解  (27)式は、平均値についても成立するので、次のようにしてTを求めることができる。

formula016
formula016

 (10) 駆動トルク  コイルを回転速度ωで反時計方向に回転させるためには、このトルクと同じ値の駆動トルクを外部から反時計方向に与えることが必要であり、駆動トルクTD(平均値)は、

formula017
formula017

 となる(⑧)。

 (11) 考察  この場合の発生電力pは、(12)式の関係から、

formula018  
formula018  

 であり、「pRで消費される電力に等しい」ことがわかる。つまり、コイルをある回転速度で回転させる(駆動する)ことは、駆動トルクTDと同じ値の反抗トルクTが必要であり、このTをコイルに抵抗を接続することによって流れた電流によって作りだしている、ということができる。

3.磁界中で回転するコイル ―その2―

 第3図において、コイル端に抵抗と自己インダクタンスが直列に接続された場合について考えてみよう。

第4図 磁界中で回転するコイル ―その2―

 (1) 第4図において、コイルを角速度ω[rad/s]で反時計方向に回転させると、コイルの誘導起電力eは①であり、ここで、 formula019 formula019 とおけば、eは次式となる。

formula020
formula020

 (2) 回路の抵抗がR[Ω]、インダクタンスがL[H]であれば、コイルを流れる電流は②で、次式となる。

formula021
formula021

    ただし、 formula022 formula022

  ここで、電流の実効値をIとすれば、

formula023
formula023

 (3) これによってコイルで発生する電力の瞬時値pは③となり、その平均値Pは④であり、これらを式で示せば次のようになる。

formula024
formula024

 pの平均値(平均電力)Pは、

formula025
formula025

  この結果から、Pは「Rで消費される熱エネルギーI2Rに等しい」ことがわかる。

 (4) この電流によってコイルに発生するトルクτは⑤、平均トルクTは⑥となり、Tは次式で示される。

formula026
formula026

 (5) トルクτは、電力pと同様に、次式のように、平均トルクτ1と変動(交番)トルクτ2に分解して考えることができる。ττ1τ2は波形で示すと⑦となる。

formula027
formula027
formula028
formula028

 (6) トルクの性質  この場合の平均トルクは、(51)式で示されるので、次式のように変形できる。この結果、Tωによって第5図のように変化することがわかる。

formula029
formula029

第5図 トルクTのωに対する変化
第5図 トルクTωに対する変化

4.まとめ

 (1)動力の計算式  直線運動 ・・・・・・第1図、(3)式。

 回転運動 ・・・・・・第1図、(6)式。

 (2)交流起電力の発生と回転動力との関係。

 (3)(2)とインダクタンスとの関わり。