送電線の電線は良導体であるが、電気抵抗を測ってみるとわずかではあるが抵抗値が存在する。導体のようなmΩ(ミリオーム)単位の低抵抗を測定する場合、リード線の抵抗や接触抵抗の影響を受けないように工夫された低抵抗測定器を用いる。これがケルビンダブルブリッジである。(写真1参照)
写真1 ダブルブリッジ本体
② このとき、cd 間の電位差は零であるから、c点とd点の電位は等しい。
③ ac 間の電圧降下PI1と、abd 間の電圧降下(RxI2+pI3 )は等しい。
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④ cf 間の電圧降下QI1 と def 間の電圧降下(qI3+RsI2 )は等しい。
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⑥ (3)式を、(1)式と(2)式に代入してそれぞれ I2 でくくると、
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⑦ (4)、(5)両式の辺の比を取り、P/Q を求める。
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⑧ (6)式から Rxを導き出す。
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ここで構造上、
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で求まる。
そこで、ダブルブリッジでは回路図にように(第1図および写真2参照)、未知抵抗Rxの接続は四端子構造にしてある。このようにすると、つぎに述べるような理由によりRxのまわりのリード線の抵抗と端子での接触抵抗による誤差を小さくすることができる。
写真2 クランプ装置と測定用導体
第1図の回路において、a−P1 間および b−P2 間のリード線抵抗と、端子での接触抵抗
は、それぞれ抵抗P,p に含まれることがわかる。ところで、ダブルブリッジは抵抗の比、 すなわち、P/Q
やp/q が測定に関係するのであって、P, Q, p,q
の個々の値はある程度自由 に選択できる。そのためP、p を比較的大きな抵抗値にしておけば、この中に含まれるリー
ド線の抵抗や、端子の接触抵抗はほとんど無視できてしまう。
また、b−C2 間のリード線抵抗は回路図に示すr の部分に含まれることになるが、ダブ
ルブリッジでは、比例辺が P/Q と p/q の二つあるようにしてあり、常に
P/Q = p/q になるように工夫 されている。したがって、㉀に示すRxの式からもわかるようにrは計算上消去されて、測
定値には関係しないから、r にリード線抵抗が入っても問題にしなくてよいことになる。
なお、C1-a 間のリード線抵抗は電源回路に入ってしまうので、誤差には全く関係しない。
また、直流電位差計を用いる方法の原理は電圧降下法による。つまり、未知抵抗に流れる電流と、電圧降下を直流電位差計で測定し、オームの法則により低抵抗を測定するものである。この方法は測定精度は良いが、多くの標準器や安定化電源を必要とし、接続、操作も複雑になる欠点をもつ。これに比べ、ダブルブリッジは接続、操作とも簡単であり、低抵抗測定の精度も良い。このため、棒状の電線の抵抗(写真2)や電気機械の巻線抵抗などに広く用いられる。