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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
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ダブルブリッジで、なぜ低抵抗が測れるか 東京電気技術高等専修学校 講師 福田 務

送電線の電線は良導体であるが、電気抵抗を測ってみるとわずかではあるが抵抗値が存在する。導体のようなmΩ(ミリオーム)単位の低抵抗を測定する場合、リード線の抵抗や接触抵抗の影響を受けないように工夫された低抵抗測定器を用いる。これがケルビンダブルブリッジである。

 送電線の電線は良導体であるが、電気抵抗を測ってみるとわずかではあるが抵抗値が存在する。導体のようなmΩ(ミリオーム)単位の低抵抗を測定する場合、リード線の抵抗や接触抵抗の影響を受けないように工夫された低抵抗測定器を用いる。これがケルビンダブルブリッジである。(写真1参照)

写真1 ダブルブリッジ本体

① 第1図のダブルブリッジの回路において、検流計Gの振れを零にする。
② このとき、cd 間の電位差は零であるから、c点とd点の電位は等しい。
③ ac 間の電圧降下PIと、abd 間の電圧降下(pI )は等しい。
         ------  (1)
④ cf 間の電圧降下QI と def 間の電圧降下(qI )は等しい。
       ------  (2)

⑤ また、a〜e の回路の は、
         ------  (3)
⑥ (3)式を、(1)式と(2)式に代入してそれぞれ I でくくると、
    ------  (4)
    ------  (5)
⑦ (4)、(5)両式の辺の比を取り、 を求める。
      より
      ------  (6)
⑧ (6)式から を導き出す。
       ---  (7)
  ここで構造上、 、すなわち、 、 となっているから、求める抵抗は、
   
 で求まる。


ダブルブリッジはどんなしくみで、低抵抗を測定しているのか

 
 一般に測定する未知抵抗の値が数〔Ω〕以下の抵抗測定の場合、普通は無視してよい接続端子の接触抵抗や、途中のリード線の抵抗が未知抵抗に対して大きな割合を占めることになる。これが誤差となって正確な測定ができない。
 そこで、ダブルブリッジでは回路図にように(第1図および写真2参照)、未知抵抗Rの接続は四端子構造にしてある。このようにすると、つぎに述べるような理由によりのまわりのリード線の抵抗と端子での接触抵抗による誤差を小さくすることができる。

写真2 クランプ装置と測定用導体


 第1図の回路において、a−P 間および b−P 間のリード線抵抗と、端子での接触抵抗 は、それぞれ抵抗, に含まれることがわかる。ところで、ダブルブリッジは抵抗の比、 すなわち、 が測定に関係するのであって、P, Q,  の個々の値はある程度自由 に選択できる。そのためP を比較的大きな抵抗値にしておけば、この中に含まれるリー ド線の抵抗や、端子の接触抵抗はほとんど無視できてしまう。
 また、b−C 間のリード線抵抗は回路図に示す の部分に含まれることになるが、ダブ ルブリッジでは、比例辺が の二つあるようにしてあり、常に になるように工夫 されている。したがって、㉀に示すRの式からもわかるようにrは計算上消去されて、測 定値には関係しないから、 にリード線抵抗が入っても問題にしなくてよいことになる。
 なお、C-a 間のリード線抵抗は電源回路に入ってしまうので、誤差には全く関係しない。


他の抵抗測定法との比較

 
 抵抗測定法としては、ほかにホイートストンブリッジを用いる方法や直流電位差計による方法がある。しかし、ホイートストンブリッジを用いる方法では、リード線の抵抗や接触抵抗の影響を回路的に除去する手段がない。数〔Ω〕以下の抵抗を測ろうとすると、これらが大きな誤差となり正確な測定値が得られない。
 また、直流電位差計を用いる方法の原理は電圧降下法による。つまり、未知抵抗に流れる電流と、電圧降下を直流電位差計で測定し、オームの法則により低抵抗を測定するものである。この方法は測定精度は良いが、多くの標準器や安定化電源を必要とし、接続、操作も複雑になる欠点をもつ。これに比べ、ダブルブリッジは接続、操作とも簡単であり、低抵抗測定の精度も良い。このため、棒状の電線の抵抗(写真2)や電気機械の巻線抵抗などに広く用いられる。