〜終わり〜
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(1) MOSFETの種類
MOSFETはMetal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor の略で、半導体基板上に生じた反転層をキャリヤのチャンネルとして用いる。
チャンネルがゲート開放時には存在しないエンハンスメント形とゲート開放時でも存在するデプレッション形がある。また、チャンネルの種類としてpチャンネルとnチャンネルがある。こうしてMOSFETは4種類に分類される。第1図にその種類と記号を示す。
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矢印の向きでpチャンネルとnチャンネルを、ドレーンとソース間の直線の形でエンハンスメントとデプレッションを表している。
第2図にnチャンネルMOSFETの構造と印加電圧の様子を示す。
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p形シリコン基板上に二つのn+ 領域を拡散法で作り、一方をソース、他方をドレーンとする。ここで「+」は不純物濃度が高いことを意味している。ソース・ドレーン間の基板上にはゲート酸化膜(SiO2)を挟んでゲート電極が作られる。
ソースと基板とは通常同電位で使用され、ゲート、ドレーンには正の電圧が印加される。
(2) MOSFETの基本動作
nチャンネルエンハンスメント形MOSFETを例として基本動作を説明する。第3図に静特性と四つの動作領域を示す。
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(a) 遮断領域 VGE < VT
第4図に遮断領域での状態を示す。
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ゲートに電圧を加えないVGE = 0またはしきい値電圧VTより低い状況では、ソース・ドレーン間にはチャンネルとなる反転層が存在しない。両者は空乏層で分離されている。したがって、ドレーン電圧を加えても電流は流れず遮断状態である。
(b) 線形領域 VGE > VT
ゲートに正の電圧を加え、その値がしきい値電圧VT を超えると、第5図のように基板上にn形の反転層が生じチャンネルを形成する。
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その結果、ドレーンに正の電圧を加えると、ソースからドレーンに電子流が生じドレーン電流が流れる。チャンネル抵抗分によって電圧降下が生じ、ドレーン側ほどゲートとチャンネル間の電圧差が減少するので反転層の厚さが薄くなる。ゲート電圧を高くするとチャンネルの厚みが増えて抵抗分が小さくなり、ドレーン電流が流れやすくなる。ドレーン電圧に比例してドレーン電流が増加する線形特性を示す。
(c) 飽和領域 VGE > VT、 VDE sat > VP
ドレーン電流による電圧降下が十分に大きくなり、ドレーンに近い点でゲート・チャンネル間の電位差がしきい値電圧VTに達すると、その時点でチャンネルが消失し、第6図のようにピンチオフ点ができる。
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いったんこの状態になると、それ以上ドレーン電圧を上げても、ピンチオフ点はわずかにソース側に動くだけで、ドレーン電流はそれ以上ほとんど増加せず定電流の飽和状態になる。
(d) 降伏領域 VDS > BV
ドレーンと基板の接合は逆バイアスされているので、ドレーン電圧を上げていくと遂にブレークダウンを起こす。しかし、バイポーラトランジスタの場合と異なり二次降伏による急激な耐圧劣化現象はない。
(3) 相互コンダクタンス(gm)
バイポーラトランジスタのβに相当するものが、MOSFETでは相互コンダクタンスgmである。ゲート電圧の変化に対するドレン電流の変化分ΔID / ΔVGEで定義される。
gmは第2図に示すチャンネル幅(W)とチャンネル長(L)の比(W/L)の関数であり、この値が大きいほど大きな相互コンダクタンスになる。MOSFETを設計するうえで重要な値の一つである。
(4) CMOSディジタル回路
CMOSディジタル回路はpチャンネル形とnチャンネル形の相補形(Complementary)MOSFETの組み合わせを基本構成としている。第7図にCMOSによるインバータ回路と動作を示す。
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CMOSインバータは抵抗やダイオードを含まず簡単な構成である。その動作は第7図(b)に示すようにQ1及びQ2のMOSFETを二つのスイッチにたとえて、それらのオン、オフで説明される。すなわち、入力 A = H のときはp-MOS Q1がオフでn- MOS Q2がオンとなり、出力 X = L となる。一方、入力 A = L のときは、Q1がオンで、Q2がオフとなり、出力 X = H となる。
このようにCMOSディジタル回路は入力電圧で動作し、スイッチングしないときの電流はほとんど流れない。消費電力が非常に少なく、大規模集積回路に適した回路である。
(5) 電力用MOSFET
電力用としては速度、利得、可制御電力などの点で優れているnチャンネルエンハンスメント形が多く用いられている。
電力用MOSFETでは定格電圧を大きくすることが要求される。このためにピンチオフ点とドレーン電極との間に存在するドレーンドリフト領域を大きくする必要がある。こうして開発された構造が第8図に示す垂直ドレーン形MOSFETであり、DMOSFET(Double Diffused MOSFET)と呼ばれている。
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パワーMOSFETの特徴として、
- 電圧制御素子なので、駆動電力が小さい
- キャリヤ蓄積効果がないのでスイッチング特性が良い
- 二次降伏現象がないので安全動作領域が広い
などがあげられる。
(1) IGBTの構造
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)はMOSFETとバイポーラトランジスタを複合化することにより両者の機能の特徴を活かしたトランジスタである。MOSFETと同様に絶縁ゲートによる電圧制御形のデバイスであり、高速動作が可能で、バイポーラデバイスの高耐圧・低オン抵抗という特徴を有している。
第9図にnチャンネルIGBTの構造と等価回路を示す。
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パワーMOSFETが第8図に示すようにn+ ‐n- 基板としているのに対して、IGBTはn+ 層を高濃度不純物のp+層に変えることでpnpトランジスタを形成している。
(2) 動作原理及び基本特性
等価回路に示すようにpnpトランジスタとベース電流を制御するnチャンネルMOSFETで構成されている。寄生素子のnpnトランジスタについてはベース‐エミッタ間の抵抗を非常に小さく設計し、pnpトランジスタと連動しておこるラッチアップ現象を防いでいる。
ゲート・エミッタ間電圧(VGE)がMOSゲートのしきい値電圧(VT )より低い場合には、ベースは開放状態でありIGBTは阻止特性を示す。この状態ではコレクタ電流が流れない。VGEがVT より高くなるとp層の表面にn形チャンネルが形成されて、n+ 領域とn- 領域が電気的に導通し、n- 領域に電子が流れこむ。この電子がpnpトランジスタのベース電流として作用し、pnpトランジスタが導通する。n+ 領域から電子が供給され、p+領域から正孔が注入されるので、n- 領域には過剰な電子と正孔が蓄積される。これは伝導度変調と呼ばれる現象で、電流導通時の抵抗を大きく減少させている。
IGBTのコレクタ電流‐電圧特性を第10図に示す。
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nチャンネルMOSFETの電圧降下が無視できる条件では十分なベース電流が供給されるので、IGBTはpnダイオードの順方向電圧電流の特性を示す。すなわち、低電流でも0.7〜0.8Vのpn接合の電圧降下が残っている。
MOSFETの電圧降下が無視できなくなるとベース電流の供給が制限されてコレクタ電流が飽和する。
コレクタ電流を遮断するには、ゲート・エミッタ間を短絡または逆バイアスする。これによってゲート電荷が放電しチャンネルが消滅し、ベース電流の供給がとまりIGBTのターンオフ遷移が始まる。まだn- 領域に多量の過剰電子及び正孔が蓄積電荷として存在しているので、コレクタ電流はすぐに遮断しない。電荷のライフタイムに依存する時定数で徐々に減少する。これはテール電流といわれるIGBT特有の現象である。
(3) IGBTの応用
IGBTはバイポーラトランジスタ並みの低オン電圧とMOSトランジスタの電圧制御機能及び高速スイッチング機能を有し、かつバイポーラトランジスタに比べ破壊耐量 が大きい。
このようにIGBTは優れた特徴をもっているため、エァコン・冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ・カメラ用ストロボの民生機器から、はん用インバータ・大型モータ制御用インバータ・ロボット・無停電電源装置・電鉄主モータ制御装置などの産業・大型プラント機器に至る広い分野でパワーエレクトロニクスを支える中心的な半導体デバイスとして使用されている。
- 西堀 賢司:著 メカトロニクスのための電子回路基礎、コロナ社発行
- パワーエレクトロニクスの基礎、電気学会発行
- 電気工学ハンドブック、電気学会発行