〜終わり〜
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低圧電路(回路)での漏れ電流(I0)と絶縁抵抗(R)と関係について、対地絶縁抵抗と漏れ電流(I0)回路の零相電流、等価インピーダンスをもとに、代表的な電気方式(単相交流2線式、単相交流3線式回路)別に解析すると、おおむね次のようになる。
(1) 単相交流2線式電路
単相交流2線式電路を図示すると第1図のようになる。
零相電流
したがって、
となる。
(1)式からI0は非接地側回路の対地絶縁抵抗R1と対地静電容量C1によって決まる。
(2) 単相交流3線式電路
単相交流3線式電路を図示すると第2図のようになる。
零相電流
になる。したがって、
になる。よって、
になる。
(2)式から非接地側回路の対地静電容量が平衡している場合(C1=C2)、I0は、
になる。よって、(3)式から非接地側回路の零相電流の差に相当する電流が零相電流I0として流れることが分かる。
以上の計算結果を集約すると第1表のようになる。
単相交流2線式電路で(1)式で示されるように対地静電容量が少ない場合は、漏れ電流は絶縁抵抗におおむね相関すると考えてよいと思う。
単相交流3線式回路で(2)式で示されるように二つの非接地側電線(電圧線)との間に漏れ電流は、方向が正反対であり、漏れ電流が大地で相殺されて、その差分がB種接地工事の接地線に還流する。これを相殺現象とも称している。これは対地静電容量に基づく漏れ電流の影響を少なくする面で有利な現象であるが、反面絶縁不良に基づく漏れ電流をも相殺することにもなる。三相交流4線式回路についても単相交流3線式回路に類似した現象がある。
1の(1)、(2)の各電気方式の等価回路から明らかなとおり、漏れ電流は非接地側電線(電圧線)の対地静電容量、多線式交流回路の各非接地側電線(電圧線)の絶縁低下による相殺現象などの影響について解析する必要がある。
対地静電容量に基づく漏れ電流が大きい場合には、合成漏れ電流への影響が大きくなることもあり、かつこの電流と絶縁抵抗に基づく漏れ電流との間に位相差もあり、単純な算術和にはならず絶縁抵抗の変化を漏れ電流で捉えることは難しくなる。
このように漏れ電流は厳密に解析すると各電気方式の種類毎に各相(線)の絶縁抵抗と対地静電容量に基づく電流の大きさとその割合に影響されるといえる。
以上の解析から絶縁抵抗(R)と漏れ電流回路の等価対地インピーダンス(Z0)は、後者が接地側電線の絶縁抵抗を補足できないなどの理由から等価な回路にはならない。しかし、漏れ電流計や漏電遮断器などのように漏れ電流(零相電流)を測定・保護対象とするものは広く普及し、長年にわたる実績から測定器や保護装置として実用上有効なものと考えられる。