電気設備技術基準の解釈では低圧の機器線路の絶縁性能は絶縁抵抗値で規定されているが、高圧、特別高圧の工作物は使用に耐える絶縁耐力を保持しているか的確な判断のために耐電圧値が規定され、高電圧試験が不可欠です。絶縁物の耐電圧は印加電圧の交流、直流、波形など、その種類によって異なります。高電圧試験として交流電圧、直流電圧、衝撃電圧試験がありこれらについて解説します。 なお、JESC-E7001(2010)により、JEC、JISなどにもとづく工場試験をしたものについては常規使用電圧を10分間印加して異常がなければ所定の絶縁耐力を有しているものとされています。
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電気設備技術基準の解釈では低圧の機器線路の絶縁性能は絶縁抵抗値で規定されていますが、高圧、特別高圧では耐電圧値で規定されています。
これは、絶縁抵抗は比較的低い電圧で測定されること、また、高絶縁抵抗が必ずしも高耐電圧ではないことによります。したがって、絶縁状態の的確な判断のためには高電圧試験が不可欠です。
高電圧試験の目的は大きく分けて2種類になります。
電気機器、ケーブルなどは使用中に電気的、熱的、機械的な原因あるいはこれらが複合して絶縁劣化は避けられません。高電圧試験の目的の一つは現在使用に耐える絶縁耐力を保持しているかを確認するもので、耐電圧試験がこれにあたります。
このため耐電圧試験の試験電圧は設計耐電圧よりも十分低く、かつ、使用中にしばしば発生する異常電圧よりは高めに設定されます。
実際にはこのような異常電圧の大きさは系統電圧、中性点接地方式で異なります。このため、技術基準に規定された線路、機器が保持すべき絶縁耐力についても系統電圧、中性点接地方式ごとに定められています。
電気設備技術基準に規定されている課電時間は10分間ですが、工場試験では以前から使用電圧の2倍の電圧で1分間の試験が行われていました。
近年「電路の絶縁耐力の確認方法 JESC-E7001 1998 (最新2010)」が制定され、JEC、JISなどによる工場試験をしたものについては常規使用電圧を10分間印加して異常がなければ所定の絶縁耐力を有しているものとされました。
もう一つの目的は製作した機器、ケーブルなどが設計どおりの絶縁特性をもって製作されているかを確認するもので、電力ケーブルや絶縁油などのサンプル破壊試験がこれにあたります。
絶縁物の耐電圧は印加電圧の交流、直流、波形など、その種類によって異なります。このため、基本的な高電圧試験として交流電圧、直流電圧、衝撃電圧試験があります。
我々が使用している電路や機器はほとんど交流電圧のもとで動作し、また発生する過電圧も過渡振動を伴う交流電圧が大部分です。したがって、交流高電圧試験は基本的な試験であり、電気設備技術基準でも基本的に交流耐電圧を規定しています。
第1図に代表的な交流高圧試験装置の回路図を示します。
図中の可変リアクトルは供試物の静電容量による充電電流を補償して試験に使う電源容量を節減するためのものです。これを調整して電源電流を最小にして試験を行います。
更に高電圧の試験にはカスケード結線変圧器が使用されますが、これは試験用変圧器を数段直列に接続したもので、後段の変圧器の励磁電力は前段の変圧器から供給されます。試験電圧の印加方法は耐電圧試験では、常印法といわれる方法で所定電圧の1/2以下を印加し、引き続きその時々の電圧が読み取れる程度の速度で所定電圧まで昇圧し所定時間印加した後、急速に電圧を降下させます。
絶縁破壊試験では一定の速度で昇圧し、破壊時の電圧を記録します。この目的で、置き針式電圧計がよく使用されます。
交流試験では試験電圧昇圧直後と降圧前に試験電流を測定して異常の有無を確認します。
交流高圧試験では電力ケーブルなど静電容量の大きな供試物の場合、所要電源容量が大きくなり、試験が困難なため一般に直流で試験します。
ちなみに最大使用電圧154kVのOFケーブルを技術基準の解釈に定められた
耐電圧試験を三相一括で行うとケーブルサイズにもよりますが、所要電源容量は
1km当たり約13500kVAに達します。直流試験によれば超高圧、数kmの電力ケーブルの試験でも試験のための電源容量は数kVAで足ります。
また、直流と交流では波高値の違いのほか、絶縁体内での電界分布が異なるため、技術基準では試験電圧を交流の場合の2倍(一部機器は1.6倍)と規定しています。 第2図に直流高圧試験装置の回路図の例を示します。
直流試験の特徴の一つは漏れ電流の時間特性が測定できることで、ふつう、これによる絶縁性能の判定が同時に行われます。
直流高圧試験では昇圧時に定格電流が小さい整流器が過負荷にならないように注意することが肝要で、出力電流に気を付けながら時間をかけて昇圧することが大切です。 154kV電力ケーブルの試験では規模にもよりますが所定電圧までの昇圧に1時間以上かかることもあります。
線路や機器が運転中に遭遇する最大の異常電圧は雷によるものです。
しかし、これに完全に耐える絶縁を施すことは不可能なので、公称電圧ごとに基準衝撃絶縁強度(BIL)を定め、主要機器の絶縁はこれを基準とし、避雷器の制限電圧をこれより低くして電力系統全体としての絶縁協調をはかっています。
雷撃に対する設計どおりの衝撃絶縁強度を確認することがこの試験の目的です。雷インパルス試験電圧には第3図Aに示す標準波形が定められています。図では説明のため、波頭部分を誇張して描いてあります。
第3図Bに標準雷インパルス電圧の実測写真を示します。
試験装置の原理は多数のコンデンサを並列に充電し、課電時に直列にして高電圧を印加するものです。第4図の装置は50kVコンデンサ36個を使用して
最大1800kVの雷インパルス電圧を発生するものです。
供試物に印加される電圧は装置の充電電圧より低くなります。このため、供試物を接続した状態で、試験電圧の1/2程度の電圧を印加して、この割合を確認した上で試験電圧が印加されるように装置を充電します。この割合を課電効率といい、実際には80%程度が多くなっています。