~終わり~
■ぜひアンケートにご協力下さい■
低圧電路の地絡保護装置の一種である絶縁監視装置は、「主任技術者制度の運用通達」で「低圧電路の絶縁状態の的確な監視が可能な装置」として示され、昭和59年ごろから導入されるようになった。その適用要件等は、当初「「主任技術者制度の運用について」の一部改正について」((資源エネルギー庁公益事業部課長通達(昭和59年6月1日))に示されていたが、平成12年4月1日に「「主任技術者制度の運用通達」の解釈指針」に移され、絶縁監視装置の設置要件、維持・運用基準に関する規制が大幅に緩和された。
絶縁監視装置は導入して20年以上を経過し、高圧自家用施設の低圧電路を常時絶縁監視することにより、電気保安レベルの向上に大きく寄与していることは周知のとおりである。また、絶縁監視装置を設置している事業場は設備容量が100kVA超過する場合、平成18年経済産業省告示第362号第4条の規定に基づいて、主任技術者の外部委託又は兼任事業場の点検頻度が原則として毎月1回のところを隔月1回に延伸できることも大きなメリットである。
(1) 絶縁監視装置のシステム構成
絶縁監視装置のシステム構成の概要を第1図に示す。システムを構成する各装置の役割は次のとおりである。
検出装置
検出装置は漏れ電流の検出により絶縁劣化の有無を検知し、警報信号を発信する装置である。これにはI0方式とIg r方式とがあり、I0方式とは零相変流器ZCTにより非接地側電線(電圧線)からの漏れ電流を検出するものをいう。Ig r方式とは監視用の低電圧低周波交流電源の電圧を大地と電線間に重畳させ、監視電源の電圧に対する漏れ電流を変流器により検出するものをいう。検出装置は次に掲げる信号搬送装置と一体化しているものも多い。
信号搬送装置
検出装置により発せられた警報信号を受信装置に搬送する装置である。絶縁監視装置が導入された当初は、信号線を使用する有線方式であったが、現在は工事費等の関係から搬送波を配電・分岐回路に重畳させて信号を搬送する方式に変わり、更に高度情報化の著しい進展に伴いLAN等が構築されている場合は、これを利用することや携帯電話を利用して直接、監視センター等の連絡先に信号を送る方式が普及している。
受信装置
搬送された警報信号を受信する装置である。発信・通報装置と一体化され、「発信器」や「通報器」としていることも多い。
発信・通報装置
搬送された警報信号を「「主任技術者制度の運用通達」解釈指針」により需要家又は保安管理業務の委託連絡先(主任技術者)に絶縁劣化の有無を通報する装置である。設備容量300kVA超過の場合は、警報信号を受信した際に電話回線、携帯電話等を利用し自動的に主任技術者に連絡し、かつ記録する装置であること(通称、自動通報方式という)。設備容量300kVA以下の場合は、連絡責任者が常駐する場所に通報し、連絡責任者から主任技術者に電話等によって連絡することに代えることができる(通称、電話連絡方式という)。また、警報信号の発信は、「「主任技術者制度の運用通達」解釈指針」により漏れ電流が50mA以上になったときで発することとされている。
(2) 検出方式のI0方式とIg r方式の利害得失
絶縁監視装置にはI0方式とIg r方式とがあるが、単相交流2線式電路、単相交流3線式電路を例にとり、両者の利害得失について紹介する。単相交流2線式電路、単相交流3線式電路に絶縁監視装置I0方式とIg r方式を設置した場合を対照して両者の関係を示すと第1表のようになる。I0方式では単相交流2線式電路の場合、商用電源による非接地側電線(電圧線)の漏れ電流は、大地へ流れてB種接地工事の接地線に還流する。一方、単相交流3線式電路の場合、商用電源による二つの非接地側電線(電圧線)の漏れ電流は大地で相殺し、見掛け上合成漏れ電流I0は少なく流れることがある。なお、中性線の絶縁不良は電気保安上影響は少ないとは思われるが、監視(検出)対象外になっている。
これに対してIg r方式では、B種接地工事の接地線に低電圧e(数〔V〕程度)、低周波数f0(10数〔Hz〕程度)の交流電圧を印加することにより、対象電路の対地インピーダンスZ0(R(対地絶縁抵抗) + (静電容量))を通して、還流する電流の有効分Ig r(対地絶縁抵抗Rに起因して流れる成分に相当分)を検出して監視する仕組みのものである。
したがって、理論的にはIg r方式は単相交流3線式電路の場合であっても漏れ電流による相殺現象もなく、かつ中性線の絶縁不良も監視(検出)対象に入っており、通電状態で絶縁抵抗成分Rを補足することが可能であるといえる。よって、I0方式は価格が低廉であり、構造も比較的単純なので小容量設備の電路に適しており、Ig r方式はバンク容量が比較的大きい設備の電路に適当と思われる。