変圧器単器容量は受電回線によって決定されるが、プロテクタ遮断器やテイクオフ装置から変圧器の単器容量は、現行では一般的に2,500kVA以下であり、これを超える単器容量が必要な場合は、複数のスポットネットワーク受電を行う。
また、変圧器単器容量の決定に際しては、ネットワーク変圧器の過負荷特性を 100%負荷連続運転後、130%負荷で8時間の過負荷運転を行うとして、次式で計算を行う。
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ネットワークプロテクタは№5に述べる三つの特性を満足するとともにその過電流引外し装置は、変圧器、電線のI-t 特性より下側にあることが必要である。また、高圧配電線フィーダのCBとの協調も必要である。具体的には以下のような理由による。
① 二次側及び幹線保護装置の遮断容量が大きくなる。
ネットワーク母線が短く、バスダクトなどでネットワーク変圧器群を並列するため短絡容量が大きくなり、そのため低圧幹線以降の負荷設備の短絡電流強度・保護協調に留意する必要がある。
② ネットワーク母線には高信頼度が要求される。
従来方式の二次側母線は必要によって分割できるため、事故の場合は区分して受電することが可能であるが、スポットネットワーク方式では全停となることから、事故の起きにくい、更に事故の影響を受けにくい構造とする必要がある。
③ プロテクタ遮断器を中心としたインタロック回路を確立する必要がある。
ネットワーク系統の運用は需要家のネットワーク母線まで影響する。需要家側としてはプロテクタ遮断器の開閉が中心となることから、誤操作防止インタロック機構を備えなければならない。
また、需要家内受電設備の開閉器の開閉状態が系統運用及び作業安全に大きく影響を及ぼすため、操作指令責任を明確にする必要がある。
低圧バンキング方式と同様、電灯動力共用三相4線式とするが、低圧バンキング方式の場合より一般に大きなブロックを形成するため、Y結線方式とする。
ネットワーク用の変圧器は短絡電流抑制及び変圧器間の負荷分担を均等にするため、インピーダンスと過負荷耐量の大きいものを選定する。また、変圧器間の横流が生じないよう、変圧器タップは同一とするとともに、高圧回線間の電圧に不ぞろいが生じないように考慮する必要がある。 更に受電設備の増設や増容量が困難であるため、増設する場合は、20~30kV級のケーブルと受電変圧器の新設または取替えが必要となることから、設備計画は最終需要を見込んで行う必要がある。
スポットネットワーク方式の保護装置としては、高圧側の停電に対するほかの高圧回線からの逆流を防止するためにネットワークプロテクタが使用される。
ネットワークプロテクタはネットワーク変圧器の低圧側にあって、自動再閉路特性及び開閉制御の機能を、最も簡単な構造の下に満足させるようにした一種の遮断装置で、遮断器部と継電器部とからなっており、次の三つの機能をもっている。
ネットワークに供給する全フィーダが変電所で遮断されている状態で、いずれかのフィーダが投入する。これを無電圧投入特性という。
ネットワーク側が活きている状態において、プロテクタが開かれている変圧器が一次側から充電されてきた場合には、変圧器の二次側の電圧とネットワーク側の電圧との関係が、プロテクタが閉じたときに、電流が変圧器からネットワーク側へ流れ込む状態にあるときに限って閉路する。これを過電圧投入特性という。
ネットワークに供給するフィーダが変電所で遮断されると、ネットワーク側から変圧器側へ逆電流が流れる。これを遮断する機能を逆電力遮断特性という。
ネットワークプロテクタ継電器のこれら動作特性は微妙で、整定誤りや、特性そのものによって不必要動作が発生する。これら不必要動作の代表例をあげれば次のとおりである。
受電系統の1回線にネットワークで受電しない大きな負荷があったり、受電回線の線路こう長に著しい差があったりすると、受電電圧の高い系統から低い系統へ、ネットワーク変圧器を通じて逆電力供給となり、ネットワークプロテクタ継電器の不必要動作が発生する。
スポットネットワーク負荷として大きな電動機負荷があった場合など、その回生電力によってスポットネットワーク負荷に供給しても、まだあまりがある場合は線路へ逆電力供給となり、ネットワークプロテクタ継電器の不必要動作が発生する。 回生電力はエレベータの制動時、誘導電動機、無負荷始動時の始動電流消滅時などに発生する。これら回生電力による不必要動作防止策としては、
などが考えられるが、継電器の時限を延長することは、本来の機能を消滅することになり望ましくない。
第2図のようにスポットネットワーク需要家A、Bの電源側で断線事故が発生した場合、A需要家が逆電力遮断をしたにもかかわらず、B需要家は動作時限が長いため、その間にA需要家は過電圧投入する。このことがB需要家が逆電力遮断を行うまで続くこととなる。
第3図(c)の逆電力遮断特性から、ネットワーク負荷として大きな進み電流を取った場合、不必要動作となる可能性があるので、ネットワークの負荷の力率には十分注意しなければならない。
~終わり~
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