定格容量が異なる2台の単相変圧器をV接続したものを異容量V‐V結線方式といい、同一バンクから単相(電灯)負荷と三相(動力)負荷に電力を供給できる特徴がある。2台の単相変圧器のうち、単相(電灯)負荷と三相(動力)負荷に電力を供給できる単相変圧器を「共用変圧器」、三相(動力)負荷だけに電力を供給する単相変圧器を「専用変圧器」(非共用変圧器)と称している。本講では単相変圧器による異容量 V‐V 結線方式の構成と特徴について解説する。

定格容量が異なる2台の単相変圧器を第2図のように接続したものを異容量V‐V結線方式といい、同一バンクから単相(電灯)負荷
P1[kVA]と三相(動力)負荷
P3[kVA]とに電力を供給できる特徴をもっている。第2図で変圧器
Ta は単相(電灯)負荷と三相(動力)負荷とに電力を供給できるので「共用変圧器」、変圧器
Tb は三相(動力)負荷だけに電力を供給するので「専用変圧器」(非共用変圧器)とも称している。
異容量 V‐V 結線方式で、単相負荷
P1[kVA]、力率cos
θ1、三相負荷
P3[kVA]、力率cos
θ3の場合の許容負荷容量を計算する。
三相交流回路の相回転 a‐b‐c とし、第2図のように共用変圧器
Taに流れる電流
Iaoは、第3図の電圧、電流べクトル図で { 150°- (
θ3-
θ1) } を頂角とする三角形に余弦定理を適用し、次のように表される。
両辺に線間電圧
Vを乗じて容量の関係式を導き出すと、
ここで
P1=
VI1、
P3=


、
Ta=
VIao、であるから、
また、
Tb=
VIc、
P3=


であるから、
また、異容量 V‐V 結線方式で、単相負荷
P1が第2図のように a 相- b 相間に入っているときの接続法を「進み接続」、 b 相- c 相間に入っているときの接続法を「遅れ接続」という。これらの関係を集約して第1表に示す。
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第1表 異容量V−V結線における単相負荷と三相負荷の力率が異なる場合の変圧器定格容量と負荷設備容量との関係 |
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第1表の計算例として
P1= 10kVA、cos
θ1= 1、
P3= 30kVA、cos
θ3= 0.866(遅れ) の場合、変圧器の定格容量は進み接続の場合は、
Ta= 23.9kVA、
Tb= 17.3kVA、遅れ接続の場合は、
Ta= 17.3kVA、
Tb= 27.3kVAとなり、進み接続にすると遅れ接続にするよりも共用変圧器の定格容量が13%程度低減できる。単相負荷
P1の力率が三相負荷
P3より高い場合には進み接続、この反対の場合には、遅れ接続にする方が有利である。
次に
Ta、
Tbを既知数、
P1、
P3を未知数とし、(1)、(2)式を連立方程式として解くと、
ただし、この場合
P1、
P3の力率は同一 cos
θ1= cos
θ3とし、与えられた条件から
Ta>
Tbとする。
(3)、(4)式から上記とは逆に共用変圧器の定格容量
Ta、専用変圧器の定格容量
Tbとから「異容量 V‐V 結線方式における許容三相・単相負荷容量(電流)計算例」を第2表に示す。なお、第2表では三相負荷
P3は許容限度まで担うものとして計算されているので、三相負荷
P3が許容限度より少ない場合には、その分に応じて単相負荷を増加することができる。また、三相負荷と単相負荷の力率が異なる場合は、その度合に応じて第2表の電流値よりも増加できる。
一般に三相負荷と単相負荷に電力を供給するには三相変圧器と単相変圧器を使用するが、その場合に比べて異容量 V‐V 結線方式には、次のようなメリットがある。
- 単相変圧器による異容量 V‐V 結線方式は、特に三相(動力)負荷と単相(電灯)負荷との力率が相違する場合または不等率が大きい場合に変圧器の総定格容量を低くできる効果があり、重量・容積面でも有利になる。
- 従前、小規模自家用需要家は変圧器の総定格容量によって電力料金の基本料金が決まる制度になっていたので、前述の効果からそのメリットを享受できた。現在は実量値契約に変更され、この面では意味は薄らいだが、少なくとも無負荷損の低減には寄与する。
- 柱上に設ける場合、電柱を中心にして単相変圧器を左右にバランスして配置でき、安定して設置できる。
- 将来増容量する際にもう1個単相変圧器を入れることによって、三相用、単相用とも対応できる。
なお、この結線方式は三相交流電圧が不平衡になるおそれがあるので留意する必要がある。