~終わり~
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架空送電線では絶縁を施さない裸電線を使用しており、その絶縁は空気に頼っている。空気の絶縁耐力には限界があり、気温20℃、気圧1,013.25hPaの標準状態において、波高値で約30kV/cm、実効値で21.1kV/cm の電位の傾きに達すると空気は絶縁力を失い、電線表面から放電がはじまる。これをコロナ放電と呼び、次の性質がある。
① 薄光及び音を伴い電線、がいし、各種の金具などに発生する。
② 細い電線、素線数の多いより線ほど発生しやすい。
③ 晴天のときよりも雨、雪、霧などのときのほうが発生しやすい。
コロナが発生しはじめるような電位の傾き(コロナ臨界電位の傾き)は次の実験式によって求められる。
ここで、δは相対空気密度であり、気圧p〔hPa〕と気温t〔℃〕により次式から求められる。
δの値は1,013.25hPa、20℃のとき1となる。rは電線半径〔cm〕である。
実際の送電線では電線の表面状態、天候などの影響を考慮に入れた次式(単導体方式の場合)が使用されている。
ただし、
m0:電線表面の状態に関係した係数であり、表面の精粗、素線数によって第1表の値をとる(表面係数と呼ばれる)。
m1:天候に関係する係数であり、雨天のときの空気の絶縁力の低下度を表し、晴天のとき1.0、雨、雪、霧などの雨天のとき0.8 とする(天候係数と呼ばれる)。
① E0は相対空気密度δの2/3乗に比例するので、山地などの標高の高い地域を通る送電線では、気圧pが低下し、δが減少するので、標高の低い地域よりもE0の値が低くなり、コロナが発生しやすい。
② 夏に気温が上昇すると相対空気密度δは小さくなるので、コロナは発生しやすくなる。
③ 天候係数は雨天のとき小さい値をとるから、雨天時にはコロナが発生しやすい。
④ 線間距離Dが変化してもD/rの対数に比例してE0が変化するので、その影響は小さく、E0は電線半径rに比例して変化するので、細い電線ほどコロナが発生しやすい。
⑤ 素線数の多いより線ほど電線表面の凹凸が多いので表面係数は小さく、コロナが発生しやすい。
( a ) コロナ損
送電線にコロナが発生すると、有効電力損失が生じ、送電効率を低下させる要因となる。
コロナ臨界電圧以上の電圧に対するコロナ損計算式としては、次式で与えられるアメリカのピーク氏の実験式が有名である。
ここで、
P:電線1条の1km当たりの損失電力〔kW〕
E:対地電圧実効値〔kV〕
d :電線直径〔cm〕
D:線間距離〔cm〕
f :電源周波数〔Hz〕
E0:(1)式で与えられるコロナ臨界電圧
( b ) コロナによる高調波電流の発生
コロナが発生すると、近接する通信線に誘導障害を与えたり、送電線の電圧波形をひずませることがある。
第1図にコロナ電流icの発生状況を示す。このicをフーリエ級数で分解すれば、基本波のほかに第3、第5、・・・・の奇数次高調波が現れてくる。図では基本波と第3高調波だけを示している。
( c ) コロナ雑音
送電線にコロナが発生すると、送電線近傍にあるラジオ受信機や搬送波通信設備に雑音障害を与えることがある。
第2図に示すように、コロナ雑音に含まれる周波数の範囲は15kHz~380MHz程度にわたる広いものであり、周波数にほぼ反比例して雑音電界の強さが減少する特性をもっている。したがって、一般に問題となるのは10MHz程度までであり、特にAMラジオ放送帯(0.5~1.5MHz)が影響を受け、周波数帯域の高いテレビやFM放送には影響は少ない。
( d ) コロナ振動
電線表面の電界の強さと付着水分によって発生する。第3図にコロナ振動の原理を示す。
コロナ振動の特徴は、
① 気象条件や架線状態に著しく左右される。
② 振動の周波数は1~3Hz、全振幅は9~10cm程度である。
( a ) 送電線側でとられる対策
コロナ臨界電圧を上げるために、以下の対策がとられている。
① 外径の大きい鋼心アルミより線(ACSR)などを用いる。
② 電線を多導体化する。
多導体方式の例を第4図に示す。また、第2表に単導体方式と多導体方式とのコロナ臨界電圧の比較を示す。
③ がいし装置の金具はできるだけ突起物をなくし丸味を持たせた構造とし、シールドリングなどを用いたコロナシールドを行う。
④ がいし連の重量加減を行って、その区間の電線-がいし連系の固有振動数をコロナ放電による振動数である1~3Hzから遠ざける。
( b ) コロナ雑音受信機側でとられる対策
① 放送出力を増強する。
② 共同アンテナとし、S/N比の高いところで受信した信号を分配する。
③ 受信アンテナに指向性をもたせる。