昨今では、停電するのに困難な場合や停電により生産などに著しく影響する場合に、しばしば遭遇致します。このような状況に対処する点検手法として、無停電で実施する主な事例を紹介します。
(1)無停電方式の作業手順
無停電方式による点検の一例を、第1図に示します。
(2)過熱診断(温度測定)
(a)過熱診断に使用する測定器
「放射温度計」により測定を行います。
(b)測定作業時の留意事項
- 作業前に実施者全員で、周囲の作業環境について確認すること。
- 作業責任者は、作業者の行動を常に監視し、安全確保に十分留意すること。
- 設備・設置環境を踏まえ、慎重に行うこと。
- 基本的な測定部位は、高圧機器類などの接続部・接触部を測定すること。
- 測定距離は、1.0m~1.5m程度とし、放射率の設定は、「0.95」または「DARK」として測定する こと。
- 測定前には,受電室内温度または周囲温度(外気温)を測定すること。
- 母線、機器などが接近していて、測定値部位の特定が容易でないときは、安全な範囲で他方向か らも測定し、可能な限り測定値・部位を特定すること。
- 判定で要注意が出た場合、他方向から測定し、測定値・部位を特定させ、必要に応じ放射率を補 正して、再度測定すること。
(c)判定基準の一例
- 低圧絶縁電線、配線用遮断器、高圧絶縁電線は、60℃未満(要注意60℃以上)。
- 断路器、遮断器、開閉器、電力ヒューズ、計器用変成器、高圧進相コンデンサ、直列リアクトル は、55℃未満(要注意55℃以上)。
- 油入変圧器、乾式変圧器は、70℃未満(要注意70℃以上)。
- 判定時の留意事項として、周囲温度、負荷使用状況などを考慮し、総合的に判定するようにしま す。
(3)絶縁診断(部分放電測定)
(a)絶縁診断に使用する測定器
「超音波式部分放電探知器」または「温湿度機能付きノイズレベル計」を使用する。
(b)測定作業時の留意事項
- 作業前に実施者全員で、周囲の作業環境について確認すること。
- 作業責任者は、作業者の行動を常に監視し、安全確保に十分留意すること。
- 設備・設置環境を踏まえて、慎重に行うこと。
- 基本的な測定部位は、高圧機器類などの接続部・接触部を測定すること(第2図)。
- 測定距離は、1.0m~2.0m程度とすること。
- 測定前には、受電設備内の雑音の最低値を「周囲雑音」として測定すること。
- 母線、機器などが接近していて、測定値部位の特定が容易でないときは、安全な範囲で他方向か らも測定し、放電発生部位を特定させること。
- 判定要注意が出た場合、他方向から測定し、放電発生部位を特定させること。
(c)判定基準の一例
- 測定値(50dB未満)は良とすること。
- 測定値(50~70dB未満)は要観察とする。特定するため測定条件を変え、再測定、調査を実施す ること。
- 測定値(70dB以上)は要細密点検とする。速やかに、全停電により臨時点検を実施すること(点検、 測定、増締め、清掃などを実施し、判定する)。
(4)保護継電器の単体試験
(a)地絡継電器(PAS含む)
GR、DGR用切換端子で専用の試験装置を使用して動作特性試験を実施すること。
(b)過電流継電器
OCR用切換端子で専用の試験装置を使用して動作特性試験を実施すること。