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電力ケーブルの接続は特殊技能である。以前は職業訓練法で「ケーブル接続工」という職種が規定されていた。
実際に3〜6kV級でもベルトケーブル(油浸紙絶縁、鉛被ケーブル)全盛の時代にはその接続には、加熱した状態での伸縮性のない油浸紙絶縁を空気が混入しないように所定の厚さに巻く「紙巻」や半溶融状態の特殊はんだを使用して完全な防湿と強度を確保するため、ケーブル鉛被と接続体鉛管とを接続肉盛りする「鉛工」という特殊技能等を必要とし、一般の電工には手の出ないものであった。
その後CVケーブルに変わるとともに、見掛け上の取り扱いの容易さから一般の電工が安易に手掛けることが見受けられるようになった。
このことが最近のケーブル事故原因の一つになっている。JEAC 8011-2014「高圧受電設備規程」では以下のように十分な知識と経験を有する者が施工することを規定している(第1120節-5)。
「高圧引込ケーブルの端末処理は、熟練した作業者により正確な工法で、かつ、次により施工すること」とし、更に次のように付け加えられている。
- ケーブルの端末処理をする作業者は、使用するケーブル、端末処理材料および端末処理の技術について十分な知識と経験を有する者であること。
- 電気主任技術者またはこれに代わる者が、立ち会い、結果を記録すること。
まして中間接続は端末処理よりはるかに高度の技能を必要とする。このため同規程の付録「東京電力サービスエリア内」版には次のように規定されている(注:他地区でも類似の規定があるはずである)。
ケーブル工事、終端処理工事、接続工事等の高度の技術を必要とする工事は、次の者が施工する。
- (一社)日本電気協会 関東支部の認めた高圧ケーブル工事技能認定者。
- 東京電力の地中線工事者として登録されている者。
- 電線メーカー並びに電線付属品メーカーの技術者など上記(a. b.)と同等以上の技能を有すると認められる者。
上記のように専門技術者に施工を任せることが最も重要であり、質問のようなトラブルが6kV線路にのみ集中している理由も容易に類推できる。
ケーブル接続による絶縁抵抗の低下の原因とその対策をあげれば次のとおりである。
参考に第1、2図に6.6kV中間接続部(差込み式、テープ巻き式)の構造図を示す。
電力ケーブルの接続で絶縁抵抗が低下する原因は、ほとんどすべてがケーブルの絶縁体の外層に施されている半導電層の処理不完全である。接続工程に入る前に、割線ケーブル、両側ケーブルの絶縁抵抗を測定、記録しておくことが大切で、その後の工程によるこの値の変動から異常を知り、適切な対処が可能になる。
外部半導電層には絶縁体と熱融着させてあるボンド形と、接続作業時に比較的容易にはく離できるフリーストッピング形があるが、特に前者の半導電層の除去には格段の注意を要する。普通、鋭利なナイフで除去した後、板ガラスの破片で仕上げ削りを行い、更に粒度を3段階程度に順次小さくしたサンドペーパーで入念に仕上げている。
大サイズ、高電圧のケーブルでは特殊なはぎ取り用工具も使用される。
絶縁体切り口の処理は導体を接続した後で行い、この段階で鉛筆削りを行う。ただし、差込形で接続体の形式によっては鉛筆削りを行わないものもある。この作業終了後にケーブル接続部全体を揮発油で十分に清掃する。
この段階でどちらかの接続体で全線の絶縁抵抗を測定する。前項で測定した各ケーブルの絶縁抵抗が並列になるのであるが、絶縁抵抗の特性から完全に計算どおりにはならず、大略確認できれば良い。
これは重要な工程で、この段階で異常があれば対応が可能である。この後は所定の絶縁形成を行う。-
接続終了直後の絶縁抵抗不良は、この半導電層の処理不完全では余程ひどい場合以外メガーリングには現れることはない。実際にはこれよりも半導電層をそのまま残したり、またはテープ巻き接続に使用する半導電性テープと、絶縁テープを間違えて使用した場合が原因になっている。両者のテープは外見上類似なものもある。
6.6kVCVケーブル半導電層の体積抵抗率は3×104Ω・cm程度であり、 心線と遮へい間に半導電層がそのまま残っていて、電気的につながっていれば、ケーブルサイズにより異なるが、絶縁抵抗は寸法上から10〜30kΩ程度になるであろう。
これは中間接続の片側の場合についてで、同様の接続体が2個あれば、この値は1/4になる。
半導電層処理不完全の場合で、その微小片が補強絶縁層の中に残ったとすると、接続後のメガーリングには現れないが、ポリエチレンの体積抵抗率は1×1016Ω・cm程度であることから、絶縁体の中に導体の微小片が混入したのと同様で、部分放電(ボータイトリー)の発生を招き、絶縁劣化の促進により寿命を著しく低下させる。
以上のように電力ケーブルの接続、特に中間接続は極めて高度の電界分布制御処理を行うものであり、十分な技能を有する技術者によって施工されなければならない。