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判断基準では、「⑥ 電気を使用する設備(以下「電気使用設備」という。)の稼動について、管理標準を設定し、調整することにより、工場における電気の利用を平準化して最大電流を低減すること」と規定されている。
各施設の省エネルギー検討に先立ち、当該施設の電力消費実態を知る必要がある。
(1)電力使用形態の把握と平準化
一般的にエネルギー管理指定工場(事業所)レベルの規模では中央監視装置やBEMS(Building Energy Management System)によって電力消費実態がレポートされる。一方、小規模受電事業所の場合は、日報データ記録機能付きのデマンド監視装置が有効な設備である。
これらの装置及びシステムによって年間の電力消費形態を把握し、管理改善を検討する。日負荷の管理にはデマンド監視など即時対応の必要なものや平日休日の負荷調査,週間や月間観察など中長期にわたるものがある。これらの検討と改善が判断基準の「電気の利用を平準化」への活動になる。その結果として、契約電力量などの経済効果に加えて、受電設備容量の適正化や負荷設備の運用改善などの効果が期待できる。
(2)電力原単位の改善
エネルギー管理で重要な指標に原単位がある。電力原単位は、あるものの単位生産量に対してどの位電力量を使用したかを示すもので、(1)式のように定義されている。
電力原単位=使用電力量〔kWh〕÷生産または建物面積、その他のエネルギー
使用量と密接な関係をもつ値 (1)
エネルギー管理指定工場は定期報告書でその実績と増減を年次報告しなければならない。原単位の低減傾向が省エネルギー活動の評価とみなされている。
「① 変圧器及び無停電電源装置は、適正な需要率を維持するように管理標準を設定し、稼動台数の調整及び負荷の適正配分を行うこと」とあるように、各変圧器の需要率及び負荷パターンを把握することがポイントになる。
(1)変圧器の電力損失量の算出
変圧器の電力損失Wtは無負荷損と負荷損により次式で計算される。
ここで、Wi:無負荷損〔kW〕
Wc:全負荷時の負荷損〔kW〕
Pは変圧器の定格容量に対する負荷の割合であり、更に所定の時間帯で荷重平均した等価平均変圧器負荷率Peを次式のように定義する。
ここで、M:変圧器の定格容量〔kVA〕
S(t):負荷〔kVA〕
T:等価平均する時間〔h〕
Δt =T/N:期間TをN等分した時の時間間隔〔h〕
1年間の等価平均変圧器負荷率Peによって、変圧器の年間損失電力量Ploss〔kWh〕は(2)式を拡張して、
になる。定数の8,760は年間の時間(24h/日×365日/年)である。
(2)変圧器容量の適正化と高効率変圧器の導入
現在設置している機器の更新時期に対する考えについてのデータが日本電機工業会「受変電設備の保全に関するアンケート調査」報告書にあり、第1図に変圧器の部分を取り出して示す。
約50%の割合で30年程度を更新時期と考えている様子がうかがえる。
最近は変圧器の損失が大幅に改善されてきている。特に低損失磁性材料の開発によって無負荷損が大きく軽減された結果、低負荷での効率が向上している。第2図に負荷(=皮相電力/定格容量)と効率の関係をグラフ化した。
ここで、三相動力用変圧器500kVAを例にして更新時期にある30年前の変圧器を更新した場合の変圧器損失の削減程度を試算する。
変圧器の負荷条件として、第3図の日負荷パターンを想定する。平日と休日で需要率は80%と20%で、等価変圧器負荷率はPe=0.542及び0.129である。
平日日数:245日/年,休日日数:120日/年として、年間の等価平均変圧器負荷率を(3)式によって求めると、
になる。
変圧器の負荷損・無負荷損をメーカのカタログデータを参照して第1表に示す。
各変圧器の損失量を(4)式で計算し、変圧器更新効果を第2表に示す。
超高効率変圧器への更新による損失削減量は16.0MWh/年となり、電力料金単価を20円/kWhとすると、年間321千円の節約となる。
更に無負荷損が改善されたアモルファス変圧器への更新では24.4MWh/年の損失削減となる。損失改善程度を負荷量基準にしてΔW/Sで評価すると、超高効率変圧器で1.1%の改善であり、アモルファス変圧器では1.6%の改善となる。
(3)変圧器負荷の統合
竣工時から経年し負荷設備の改修などによって、変圧器の負荷は変化する。同一電気室に設置されている変圧器の需要率を調査すると、負荷の適正配分によって余剰の変圧器を削減できる場合がある。
動力用変圧器500kVA(需要率60%)、300kVA(需要率30%)各1台の稼動を考える。500kVA変圧器に負荷を統合し、需要率が低い300kVA変圧器を解列した場合の損失改善量を計算する。変圧器は低損失型で無負荷損及び負荷損は第3表による。
また、第3図の平日,休日の負荷パターンを500、300kVAの各変圧器に割り当てる。年間で負荷パターンが同じと単純化すると、おのおのの等価平均変圧器負荷率はPe=0.406及び0.194であり、負荷統合でPe=0.517になる。
以上の想定の下で、(4)式によって年間の損失電力量を計算し第4表に結果を示す。
負荷統合によって年間の改善量は 3,496kWh/年 (70千円/年)となり、損失は約13%(=3,496kWh/27,053 kWh)縮小される。
電源の質的要件として、判断基準では配電線路に関する事項と合わせて記されている。該当部分だけを取り出すと「②……、配電電圧の適正化等について管理基準を設定し、……」とある。
負荷設備は定格電圧で使用することが効率や寿命の点で最適となる様に設計・製作されている。したがって、変圧器の送り出し電圧は、配線などによる電圧降下を考慮して、各負荷端電圧が定格電圧近くになる様に管理する。
しかし、各事業所での配電系,負荷の状況によって電圧降下量は変化する。日常の点検で負荷端での電圧を把握しておき、定期点検時にタップ変更によって適正な負荷電圧が得られるように調整する体制が必要である。
第4図に構内配電系統の電圧プロファイル例を示す。
三相配電用6kV変圧器の高圧側タップは通常受電電圧または定格電圧に近い一次電圧タップ(6,600V)に接続する。その結果、二次側に三相交流3線式の場合210Vの電圧が誘導される。配電用ケーブルによる電圧降下を5%程度見込むと、負荷設備の端子には定格電圧200V程度が供給される。
負荷が重い場合は、高圧(一次)側タップを150V下げて二次側電圧を5V程度上昇させる。これによって負荷端電圧の適正化を図る。
受電端力率管理に関しては、基本料金に直接組み込まれているので認識が高い。判断基準でも基準を設けて改善を要請している。
「③ 受電端における力率については、95パーセント以上とすることを基準として、別表第4に掲げる設備(同表に掲げる容量以下のものを除く。)又は変電設備における力率を進相コンデンサの設置等により向上させること」
すなわち、受電点の力率と負荷機器の力率の向上を要請している。前者は電力会社の配電線路の抵抗損失対応であり、後者は事業所構内の配電線路の抵抗損失対応である。
ここでは前者が対象になるが、ほかで多く述べられているので省略する。
受変電設備は変圧器で代表されるように、更新は高額投資となるために、単に省エネ目的だけでの更新は経済的にペイしない。設備拡張や老朽化などの更新時期に適正容量の検討とともに省エネ課題も検討することになる。そのために常日ごろから運転状況を把握し対応をまとめておき、適切な更新に備えておくことが重要と考える。
参 考 文 献
(1) 「省エネ法」法令集、資源エネルギー庁省エネルギー対策課監修、(財)省エネルギーセンター発行
(2) 日本電機工業会「受変電設備の保全に関するアンケート調査」報告書(1995)