第1図に示すように複数の変圧器を並列に接続して使用することを変圧器の並行運転といいます。一例として2台の変圧器を並行運転するための条件を示すと次の通りです。
    

 ① 2台の変圧器の一次(E1,E1'),二次(E2,E2')の定格電圧がそれぞれ等しいこと。
       すなわち、
               E1=E1'、E2=E2'
       2台の変圧器の定格電圧が異なりますと(E≠E')と両電圧の差に相当する電圧(E−E')を二次換算等価インピーダンスの和(Z 
      +Z')で割った電流(横流)I が両変圧器の巻線に、負荷電流に無関係に流れることになりますので注意することが必要です。
      
         ② 極性が等しいこと。
      
         ③ 2台の変圧器は同一定格のものを使用するのが一般的ですが、定格容量が異なる場合には2台の変圧器の%抵抗降下及び%リアクタンス降下がそれぞれ等しいこと。
       すなわち、2台の変圧器の定格容量(P,P')が異なる場合に、各変圧器の定格容量に比例して負荷を分担させるためには、2台の変圧器の二次換算等価抵抗(R,R')と二次換算等価リアクタンス(X,X')の比がそれぞれ等しく、かつ、その比が二つの変圧器の定格容量に反比例していることが必要です。
       2台の変圧器の二次定格電流(I2,I2')とすれば 
         %抵抗降下      [%]  ・・・・・・(1)
 [%]  ・・・・・・(1)
         %リアクタンス降下  [%]  ・・・・・・(2)
 [%]  ・・・・・・(2)
      したがって、P=EI、P'=E'I'とすれば、
         %抵抗降下      ・・・・・・(3)
  ・・・・・・(3)
         %リアクタンス降下  ・・・・・・(4)
  ・・・・・・(4)
      となり、
      ここで、E=E'とすれば、  ・・・・・・(5)
  ・・・・・・(5)
       なお、この関係が保たれていない場合には、どちらかの変圧器が過負荷になるおそれがありますので、あらかじめ各変圧器の分担電流を計算し、各変圧器の定格電流の範囲内で使用するように管理することが必要です。 
      
      
         ④ 三相回路の並行運転では相回転、位相が等しいこと。
       なお、3台以上の変圧器により並行運転する場合にも同様になります。
複数台の変圧器の並行運転、単相変圧器によりΔ−Δ結線運転する際に、負荷が定格負荷に対し大幅に減少するような時に行う効率的な台数制御法について説明します。
(1) 並行運転の台数制御
 同一定格の2台の変圧器を並行運転する場合、負荷が大幅に減少したときには1台で運転した方が有利になりますが、その分界点を求めますと、
       1台の変圧器の鉄損Pi、1台の変圧器の銅損 PC とするとき、変圧器2台運転の場合、1台運転の場合の損失(PlPl')をそれぞれ計算しますと、
         2台の場合の損失  ・・・・・・(6)
  ・・・・・・(6)
         1台の場合の損失  ・・・・・・(7)
  ・・・・・・(7)
      ただし、変圧器2台で並行運転している場合に、(変圧器1台が分担する負荷容量)/(変圧器1台の定格容量)=α とします。変圧器1台で運転する方が損失が少なく済むα の範囲を求めてみますと、
          ・・・・・・ 
      (8)
  ・・・・・・ 
      (8)
       よって α が 未満になったときには1台で運転の方が有利となります。
未満になったときには1台で運転の方が有利となります。
      ここで、鉄損に対する銅損の割合を損失比(k=Pc/Pi)といいます。 
      
      損失比kは、おおむね巻鉄心の場合は4〜6、積層鉄心の場合は3〜4程度ですので、一例としてk=4とすれば、α は35.3%になります。すなわち、負荷容量が定格負荷(変圧器2台の定格容量の合計)の35.3%未満のときは、変圧器1台で運転した方が有利となります。
(2)Δ−Δ結線をV−V結線にして運転する場合
 
 
 第2図に示すような同一定格の単相変圧器3台によるΔ−Δ結線運転の場合に負荷が大幅に低下したときには、単相変圧器2台によるV−V結線に変えて運転する方が有利になりますが、その分界点を求めてみます。
         1台の変圧器の鉄損 Pi 
         1台の変圧器の鉄損 PC 
        とするとき、Δ−Δ結線運転の場合、V−V結線運転1台運転の場合の損失(Pl,Pl') 
        をそれぞれ計算しますと、
        Δ−Δ結線運転時の損失
           ・・・・・(9)
     ・・・・・(9)
        V−V結線運転時の損失
          ・・・・・ 
        (10)
  ・・・・・ 
        (10)
         ただし、定格負荷に対する負荷容量の割合α として、V−V結線で運転する方が損失が少なくて済むα の範囲を求めてみますと、
            [%]  ・・・・・・(11)
[%]  ・・・・・・(11)
         よって、α が 未満になったときにはV−V結線で運転の方が有利となります。一例として損失比k=4とすれば、α は28.8%になります。すなわち、負荷容量が定格負荷(変圧器3台の定格容量の合計)の28.8%未満のときは、変圧器2台によるV−V結線で運転した方が有利となります。
未満になったときにはV−V結線で運転の方が有利となります。一例として損失比k=4とすれば、α は28.8%になります。すなわち、負荷容量が定格負荷(変圧器3台の定格容量の合計)の28.8%未満のときは、変圧器2台によるV−V結線で運転した方が有利となります。
         なお、安全面・省エネ面から並行運転およびΔ−Δ結線運転時に変圧器の台数を減らして運転する場合には、開放する変圧器は一次及び二次の両側で切るようにすることが大切です。また、開閉頻度が多い場合には、開閉器の開閉性能についても留意することが必要です。 
      




 
    

