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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
インバータ機器(2)省エネ効果と特性改善  高岳製作所 監査役 松田高幸

インバータ機器は高性能・省エネ効果の面から幅広く採用されている。今回は汎用インバータ機器の構成と使われ方、可変周波数化による省エネルギー原理、効率運転技術等について解説する。
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01 基礎技術の動き

(1) はん用インバータの動き

  • はん用インバータは三相かご形誘導電動機と電源の間に挿入して簡単に交流可変速システムを構成できるので、高性能化、低価格化が進み、売上高や生産高や生産台数の急増が継続している。
  • はん用インバータはパワートランジスタモジュールの普及や制御用デバイスの発達などを背景に1980年代初頭に登場して以来、活発な技術開発が続けられている。
  • 最近ではセンサレスベクトル制御による電動機駆動特性の向上、IGBTに代表される高速スイッチング素子による高速スイッチング周波数動作と低騒音化、大幅な小型化などが進んでいる。
  • 地球温暖化防止やエネルギー節約面からも省エネ技術の関心が高まっている。
  • 現状では高性能化、高機能化が進み一部を除いてはん用インバータが殆どを占めている。

(2) はん用インバータのCPU

  1. 概要
    • 第1表は普及が著しいはん用インバータ用CPUを示している。
    • 低価格、小型化などのため、ワンチップマイクロコンピュータが用いられている。
    • 機能などからA・B・Cの3タイプがある。
    • 適用範囲も増大している。
    • ベクトル制御などの新しい技術も進んでいる。
    • その他の説明は以下のとおりである。
    • はん用インバータで最もポピュラーなV/f制御を行うAタイプでみると、16ビットに統一されている。
    • Bタイプはハードウェア上Aタイプと同じである。V/f制御で問題となる低速度でのトルク不足を改善した速度センサレスベクトル制御機能を備えたものになっている。
    • Cタイプは高性能、高精度ベクトル制御インバータを指向している。このため16→32ビットにし、クロック周波数、メモリ、ピン数も多くしている。CPUも多くはRISCチップとしている。
  2. はん用インバータのCPU性能などの比較(第1表)

(3) インバータ機器の構成と役割

  1. 概要
    • 整流回路部:電源とインバータ間の電力変動(高調波抑制)
    • インバータ部:直流電圧をVVVFに変換(低騒音、低損失)
    • 駆動部:制御部からの信号を駆動信号に変換 (安全、誤動作防止、絶縁)
    • 制御部:制御アルゴリズムの演算、シーケンス、保護
    • 電源部:インバータ用制御電源(絶縁、高調波)
    • インタフェース部:外部入出力信号との中継(誤動作防止、ノイズ抑制)
    • 構造体:部品などの実装(安全、冷却、規格、絶縁)
  2. 回路構成の概要(第1図)


02 省エネルギー効果

(1) 省エネの考え方(電動機の例)

  1. 概要
    • インバータ機器の応用は最近ではエネルギー危機、地球環境面からも省エネとして着目されている。
    • ここでは電動機に的を絞っているが、電圧、周波数など様々な特性に対し
      柔軟、かつ高速制御ができるので、あらゆる面で省エネが進んでいる。
    • 可変速機器についての省エネ技術の考え方の例を以下に示す。
  2. 可変速機器についての省エネ技術の考え方
    • 一定速度で運転している機械速度を変えることによる省エネ
    • 可変速駆動システムを効率のよいインバータドライブに置換することによる省エネ
    • 機械的エネルギーを減速時に電源に回生することによる省エネ
    • 供給電圧を最適化して電動機の効率を改善することによる省エネ

(2) 可変速度による省エネ

  1. 概要
    • 機器の動力はトルクと回転数に比例→トルクまたは回転数を下げ省エネを実現
    • 特にファンやポンプは回転数が低下すると、トルクが2乗の割合で低下するので、省エネ効果が高くなる。
  2. 特性などの事例(第2図)

(3) 可変速駆動システム置換による省エネ

  1. 概要
    • 可変速システムとしては渦電流継手付き電動機あるいは巻線形電動機の二次 抵抗制御が採用されていた。
    • この巻線形電動機のトルク回転数の関係を第3図に示している。
    • 二次抵抗を可変すると比例推移によってトルク特性が変わる(例えば、Nを下 げるためR2が大きいと損失大)。
    • インバータ化すると損失が少ない。
  2. 特性などの事例(第3図)

(4) 機械エネルギーの電源回生(対策前と対策後の比較)

対策前の回路例を第4図に、対策後の回路例を第5図に示す。
  • 対策前は制動ユニットと制動抵抗を付加して熱として消費している。
  • 対策後は電動中と回生中でパワーフローが逆になる(回生中は整流器側がインバータ動作になる----このためIGBTを使用)。


03 その他の技術

(1) 電動機特性と効率化

  1. 電動機の特性をみつつ、効率を高める方法・事例
    ファン、ポンプは流量に応じた可変速運転が省エネ効果が大きい。
    更に速度や負荷の大きさに応じ常に電動機の最大効率で運転する制御機能の搭載やモータそのものの効率化とインバータとの併用などによって省エネ効果は一層高まる。
  2. 高効率運転の事例(第6図)
    電動機の滑り-トルク特性において、負荷が軽くなったとき供給電圧を下げて滑りをS2→S1にすることによって効率を下げないで運転できる。

(2) 低速時大トルク化

  1. 低速時に大トルクを出す方法・事例
    インバータ交流モータの可変速を行う制御としてV/f制御とベクトル制御が知られている。
  2. 低速時大トルク化の事例・考え方(第7図)
  • V/f制御の必要性(一方で低速でのトルク減少や制御応答性が高くとれない制約がある)
  • トルクはφ1とi1のベクトル積(低速ではφが低下傾向 ------(φ=∫(v-Ri)dt))
  • 対策としてベクトル制御の活用
    現代制御理論による速度推定などによって、例えばトルク特性などを高速応答化する方法(特性例を図に示す)