インバータ機器は高性能・省エネ効果の面から幅広く採用されている。今回は電力変換装置の高調波発生メカニズムと伝播、電力系統全般への影響、高調波抑制対策の検討経緯と対策の策定内容、考え方を解説する。
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(1) 発生メカニズム
㈰ 家電はん用品の電流波形例(全波整流コンデンサ平滑回路の事例)
- 回路の概要と電流波形例を第1図に示す。
- 家電はん用品の製品としてはテレビなどが代表的である。
㈪ (全波整流コンデンサ平滑回路の)高調波成分
- テレビの場合の高調波成分例を第2図に示す。
- 基本波(100%)に対し、第3次(86%)、第5次(66%)、第7次(44%)
と驚くほど高調波を含んでいる。
㈫ 整流器から発生する電流の高調波成分
- 6相整流器の高調波成分を示す(計算値)。
5次:20%、 7次:14%、 11次:9%、13次:7.6%
- 12相整流器の高調波成分を示す(計算値)。
11次:9%、13次:7.6%、23次:4.3%、25次:4%
㈬ 電力系統の高調波
- 66kV以上の系統では5次が大部分を占める。次いで7次、11次の傾向
である。6.6kV配電系統では傾向は同じであるが、3次が加わる。
- トータル的(総合電圧ひずみ率)にみても、2〜3%程度以内が多くを占める。
- 顕著な例として第5次波形(10%含有時の電圧波形)を第3図に示す。
- 一部の家電はん用品や整流器から多くの高調波電流が発生して電力系統に伝搬するが、その過程で減衰し(例えば、66kV系統などの一般的な)、電力系統では前述のように5次、7次(一部の系統では3次、11次もある)を含む高調波電圧・電流になっている。
- 参考
電力系統への伝搬の様子(発生側では多くの高調波次数が存在するが、66kVなどの電力系統では5次や7次を中心とする限られた波形になることが多い理由)は次のように説明されている。
- 6.6kV配電系統までは存在する3次は、配電用変圧器のΔ(テ゛ルタ)回路などに吸収され、66kVなどの特高系統では少なくなる。
- 100、200Vなどの低圧回路に存在する高い次数の高調波電流は、近傍の回路(静電容量など)に流れ込み、特高系統への伝搬は少なくなっている。
- このように発生側では多くの高調波電流があるが、6.6kV配電系統や66
kV特高系統では前述のような高調波電圧が存在することになる。
- しかし、やっかいなことに、このような伝搬は簡単ではなく、条件によっては一部で大きくなり、高調波障害の原因にもなり得る(詳細後述)。
(2) 抑制対策の検討経緯・対策
㈰ 電力系統の高調波問題の難しさ
- 不特定多数の高調波発生源が電力系統全体に広く分布している。
- 電力系統を介して高調波電圧・電流が複雑に存在する。
- 長期にわたって技術面、経済面で協調のとれた公平な対策が必要である。
㈪ 高調波の発生・伝搬のメカニズム
- 高調波発生源としては家電・はん用品、特定需要家機器に大別できる。
- 高調波発生源近傍は多くの高調波次数が存在するが、結果的に特別高圧系統では前述のように第5次が大きく、次いで7次の傾向にある。
㈫ 高調波障害と対応の状況
- 高調波障害の大半は力率改善用コンデンサの直列リアクトルである(昭和50年代前半は多くの被害があったが、しだいに絞られてきた)。
- 障害の内容は直列リアクトルの場合、過熱や焼損が多い。
- 障害の件数はある電力会社でみると、一時期は年に数十件を超えていたが、最近では30〜40%程度に減少している模様である。
- この場合にも監視・測定技術の進歩、解析技術の進歩から全体としては円滑な対応がなされている。
㈬ 高調波対策の検討経緯
昭和50年代中ごろからの検討経緯(全国大の研究・委員会)は以下のとおりである。
-
新時代に即応した電力流通技術問題研究委員会(昭和57年〜2年間)
- 系統高調波問題検討ワーキンググループ(昭和61年1月〜半年)
- 電気利用基盤強化懇談会「高調波問題専門委員会」(昭和61年7月〜1年間)
- 電気共同研究会「高調波対策専門委員会」(昭和62年11月〜2年間)
- 日本電気協会「高調波専門委員会」(はん用品と特定に分け推進)(平成4〜5
年)
- 高調波抑制対策ガイドライン(はん用品と特定に分けて通達)(平成6年10月)
- 高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-1995)
(平成7年10月、日本電気協会 電気技術基準調査委員会)
(はん用品については現JIS C 61000-3-2)
㈭ 対策の骨子
- 現状の高調波のオータ゛ーが長期にわたり超えないように皆で努力する。(特高系
統:総合3%、配電系統:総合5%を高調波環境目標レベル)
- 対策は長期的にみて技術・経済的に協調のとれた公平なものとする。
はん用機器は不特定多数であることから、生産段階で対策実施する。
特定機器は個別要因が強いので、新設・増設時などに個別検討実施する。
- 影響を受ける機器の高調波耐量は環境目標レベル以上とする。
- その他、諸々の対策は高調波を極力抑える方向にする(6%の直列リアクトル
など)。
- 電力会社は発生側と影響を受ける側の間にあり、技術面で支援・協力する。
(1) 高周波ノイズの発生メカニズム
- 周期パルス波形の例、インバータサージ波形
インバータは電圧または電流を方形波のパルスに変換しており、そのパルスに含まれる高周波ノイズが発生する(第4図)。
(2) 高周波ノイズ伝搬
- 伝搬ノイズの種類は以下の4通りが考えられる。
伝導ノイズ、静電・電磁誘導ノイズ、放射ノイズ、グランド動揺ノイズ
- 第5図にこれらのイメージを示す。
(3) 高周波ノイズ対策の考え方
- 対策の考え方を第6図に示す。
- 主な項目・考え方は以下のとおりである。
- 主回路、制御回路は配線ダクトを分離する(同一ダクトに収納する場合は金属板で遮へい、分離)。
- シールド線は1点アースにする(主回路電圧によって第三種、特別第三種接地工事など)。
- 金属電線管、シールドケーブルなどを使用する。
(4) 高周波ノイズ対策の例(1)
(5) 高周波ノイズ対策の例(2)
- 第8図に各種接地方式の例を示す(設備規模、業種等によって違いあり)。