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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電源の電圧変動で機器特性はどう変化するか 安藤電気技術事務所 安藤 治

電気機器の銘板に記載されている定格電圧に対して供給電圧の変動はどの程度まで許容され、機器の特性はどの様に変化するか、各種の機器について解説する。

機器に許容される電圧変動の範囲

 電気事業法施行規則第44条に、電力会社が電気を供給する変動幅について、第1表に示すように、標準電圧に対し維持すべき電圧が明示されています。

 したがって、負荷設備は、この電圧変動の範囲で支障なく運用できるように製作され第2表に代表例を示す。


誘導電動機の特性の変化

 電動機の種類はいろいろありますがもっとも多く一般的に使用されているのが誘導電動機です。誘導電動機の供給電圧が変化した場合の特徴は、周波数が変らない限り回転数がほとんど変化せず負荷が一定の場合は、電圧に逆比例して電流が変化し、オ−ムの法則と違うところであります。
 電動機の出力を、電圧を、電流を、力率をcosθ、効率をηとすると、出力は

 =√3VIcosθη

の式で表され、出力が一定ならば、電圧が低下すると電流が増大することがわかります。
 また、回転力(トルク)は電圧の2乗に比例して変化するので注意を要します。これらの関係を第3表に示すので参考にして頂きたい。


インバ−タ制御機器

 回転速度を制御したり、機器出力を調整するような場合に使用され、身近なものとして、空調機、冷蔵庫、コンプレサ、工作機、等に幅広く使用されています。このような負荷の場合、出力は変わらないので、電動機と同じように電圧に逆比例して電流が流れます。またCVCF,UPS,整流器を使用した機器、さらにインバタ−制御の照明器具も同様に、電圧に逆比例して電流が流れ、入出力はほたんど変化しない。


電熱負荷

 電熱線を使用した電熱負荷は、オ−ムの法則により、電圧に比例した電流が流れ、電力は電圧と電流の積なので、電力消費は電圧の2乗に比例することになります。


 白熱電球は真空電球とガス入り電球では多少相違するが一般用ガス入電球の場合の電圧特性は次の通りで、カ−ブで示したものを第1図に示す。

[ガス入り電球の電圧特性]
光束:電圧の3.4乗に比例
効率:電圧の1.8乗に比例
電力:電圧の1.5乗に比例
電流:電圧の1.5乗に比例
寿命:電圧の13乗に逆比例


放電灯の電圧特性

 けい光ランプの電圧特性は、供給電圧が高くなるとランプ電流は略電圧に比例し増大します。そうしてランプ管端の黒化を促進し寿命を短縮します。逆に電圧が低くなると始動困難となり、これまた寿命短縮の要因となります。光束とランプ電流、電力は、略同カ−ブ線上にあって、第2図に示すようになります。
 同図に水銀灯の光束と効率の特性カ−ブも示すが電圧変動に対する影響が顕著に表れ、電圧が低いと光束の低下が激しくなり、点灯不能の障害が発生しやすくなります。
 なお、最近多く採用される機会が増加しているインバ−タ式けい光灯は、前述のように電圧に関係なく消費電力はほとんど変化しません。


変圧器と二次電圧許容範囲

 変圧器で問題となるのは電圧が上昇すると磁気飽和が進み励磁電流が増大することです。これに対応するため、一次側に電圧調整タップが設けられているので、電源側の供給電圧に合わせてタップ電圧を調整する必要があり、具体的には変圧器の二次側の定格電圧に合うようにセットすることになります。JIS規格では前述のように±5%の範囲で支障なく使用できるようになっています。


コンデンサの供給電圧

 コンデンサのJIS規格によると定格電圧の±10%の範囲で運用するものとし、最高使用電圧は高圧並びに低圧進相コンデンサは第4表に示す値まで許容されています。

 

なお、高圧受電設備規程によると高圧コンデンサには高調波障害の防止並びに突入電流抑制の見地より、直列リアクトルの取付が勧告事項となっていますが、既設の品に直列リアクトルを取付けるのは厳禁です。理由は回路のリアクタンスが相殺するため減少し、その結果、電流が増加してコンデンサに印加される端子電圧が高くなり過負荷状況となる可能性が大きいからです。


電圧を下げると省エネになるという話は本当ですか

 これまで説明した内容で、大略おわかりと思いますが、電圧を下げて電力が低減するのは電熱と照明灯ぐらいしかありません。「電圧の2乗で消費電力が減少する」というような言い方をする業者は眉唾物です。どこどこの会社に施工実績があると、有名企業を並べ立てるような業者も要注意です。
 負荷の消費電力量を低減しないかぎり省エネはできません。仮に電力は低減しても能力が不足したり寿命が短くなつたり、中には消費電力は低下したが運転使用時間が増加したので全然、省エネにならないという事例や能力不足で処理ができなくなり困りましたという事例もあります。
 売る立場と使う立場は違う、うまい話には裏がある、人の話を鵜呑みにせず、自分で考え、調査し良否の判断をすることが大切です。
 企業の場合はク−リングオフは利きません。リ−スは例え問題があっても解約は難しい。ここで説明した事項を参考にし、問題が生じた場合はさらに検討をされることを期待します。