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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電気設備技術基準・解釈の解説〔その4〕過電流や地絡時の自動遮断器の性能と施設 総務担当理事 竹野 正二

本講〔その4〕では、過電流保護や地絡保護における自動遮断器と避雷器に係る条文について紹介する。

1.自動遮断器の施設原則

 電気設備技術基準〔以下、「電技省令」という。〕には、第14条に過電流遮断器の、第15条に地絡遮断器の施設に関する規定があり、次のように規定している。これらの規定は基本原則を定めたものである。使用場所における配線や機器の焼損防止と感電防止に関しては電技省令第63条から第66条に規定されている。

 

 電技省令第14条(過電流から電線及び電気機械器具の保護対策)

 電路の必要な箇所には、過電流による過熱焼損から電線及び電気機械器具を保護し、かつ、火災の発生を防止できるよう、過電流遮断器を施設しなければならない。

 

 電技省令第15条(電気設備の接地の方法)

 電路には、地絡が生じた場合に、電線若しくは電気機械器具の損傷、感電又は火災のおそれがないよう、地絡遮断器の施設その他の適切な措置を講じなければならない。ただし、電気機械器具を乾燥した場所に施設する等地絡による危険のおそれがない場合は、この限りでない。

2.低圧回路の過電流に対する保護対策

 電技省令第14条に基づき、電技解釈第33条において、過電流遮断器として用いられるヒューズと配線用遮断器の性能について規定されている。これらのもののうち、電気用品安全法の対象になっている定格電流1A以上200A以下のヒューズ及び定格電流100A以下の配線用遮断器の性能は同法の規定によることとされている。

(1) 過電流遮断器の短絡容量

 電技解釈第33条第1項には、低圧電路に施設する過電流遮断器について、これを施設する箇所を通過する短絡電流を遮断する能力を有することが規定されている。ただし、短絡電流が10,000Aを超える場合は配線用遮断器の短絡容量を限流ヒューズに持たせることが、同項ただし書きに認められている。

 

 ○ 電技解釈第37条第4項ただし書

 ただし、当該箇所を通過する最大短絡電流が10,000Aを超える場合において、過電流遮断器として10,000A以上の短絡電流を遮断する能力を有する配線用遮断器を施設し、当該箇所より電源側の電路に当該配線用遮断器の短絡電流を遮断する能力を超え当該最大短絡電流以下の短絡電流を当該配線用遮断器より早く、又は同時に遮断する能力を有する過電流遮断器を施設するときは、この限りでない。 

(2) ヒューズ

 電技解釈第33条第2項には、低圧配線に用いられるヒューズの性能について規定している。これには包装ヒューズ(筒型ヒューズ、プラグヒューズ等)と非包装ヒューズ(つめ付きヒューズ等)がある。タイムラグヒューズなど特殊なヒューズは規定の対象外であり、JIS C 8352「配線用ヒューズ通則」で決められた性能を規定している。性能としては耐えなければならない電流(定格電流の1.1倍)とヒューズの定格ごとに定格電流の1.6倍と2倍の電流を流したときの溶断時間が33-1表に規定されている。日本工業規格(JIS)にはA種とB種の規格があるが、そのいずれのものも使用できるように規定されている。

 33-1表

定格電流の区分 時  間
定格電流の1.6倍の
電流を通じた場合
定格電流の2倍の
電流を通じた場合
30A以下 60分 2分
30Aを超え60A以下 60分 4分
60Aを超え100A以下 120分 6分
100Aを超え200A以下 120分 8分
200Aを超え400A以下 180分 10分
400Aを超え600A以下 240分 12分
600A超過 240分 20分

(3) 配線用遮断器

 電技解釈第33条第3項には、低圧配線の保護に用いられる配線用遮断器の性能について規定している。ヒューズと同様、性能としては耐えなければならない電流(定格電流の1倍)と配線用遮断器の定格ごとに定格電流の1.25倍と2倍の電流を流したときの溶断時間が33-2表に規定されている。この性能は、JIS C 8370「配線用遮断器」で決められた性能である。

33-2表

定格電流の区分 時  間
定格電流の1.25倍の
電流を通じた場合
定格電流の2倍の
電流を通じた場合
30A以下 60分 2分
30Aを超え50A以下 60分 4分
50Aを超え100A以下 120分 6分
100Aを超え225A以下 120分 8分
225Aを超え400A以下 120分 10分
400Aを超え600A以下 120分 12分
600Aを超え800A以下 120分 14分
800Aを超え1,000A以下 120分 16分
1,000Aを超え1,200A以下 120分 18分
1,200Aを超え1,600A以下 120分 20分
1,600Aを超え2,000A以下 120分 22分
2,000A超過 120分 24分

(4)低圧回路の短絡電流に対する保護

 電技解釈第33条第4項には、低圧電路に施設する過負荷保護装置と短絡保護装置を組み合わせた装置を規定している。

 低圧回路では、分電盤において次のような組合せがあるが、二つの過電流遮断器間の協調が重要である。

 ① 限流ヒューズと配線用遮断器の協調

 1 配線用遮断器の遮断容量より小さい点でAとBのクロスポイントがあること。

 2 ヒューズの溶断特性がCの場合は、配線用遮断器の過負荷電流領域でヒューズが溶断するので注意を要する。

 ② 配線用遮断器と配線用遮断器の協調

 1 被バックアップ配線用遮断器Aの全遮断特性とバックアップ配線用遮断器Bの全遮断特性とのクロスポイントは、Aの定格遮断容量以下であること。

 2 一般に配線用遮断器は短絡電流の流入後、3~7ms以内に開極し、20ms以内に遮断完了する。したがって、Bが動作を開始しても、開極が完了するまでにAも開極を始め、2点遮断の形で短絡電流を遮断することになる。

(4)高圧又は特別高圧電路の過電流遮断器の施設

 高圧又は特別高圧の電路に施設する過電流遮断器については、電技解釈第38条第3項と第4項に次のように規定されている。

 1 電路に短絡を生じたときに作動するものにあっては、これを施設する箇所を通過する短絡電流を遮断する能力を有すること。

 2 その作動に伴いその開閉状態を表示する装置を有すること。ただし、その開閉状態を容易に確認できるものは、この限りでない。

 

(5)高圧電路に施設するヒューズの性能

 ① 高圧の包装ヒューズは、次の各号のいずれかのものであること。(電技解釈第38条第1項)

 1 定格電流の1.3倍の電流に耐え、かつ、2倍の電流で120分以内に溶断するもの

 2 次に適合する高圧限流ヒューズ

 イ 構造は、日本工業規格 JIS C 4604(1988)「高圧限流ヒューズ」の「6 構造」に適合すること。

 ロ 完成品は、日本工業規格 JIS C 4604(1988)「高圧限流ヒューズ」の「7 試験方法」の試験方法により試験したとき、「5 性能」に適合すること。

 ② 非包装ヒューズは、定格電流の1.25倍の電流に耐え、かつ、2倍の電流で2分以内に溶断するものであること。(電技解釈第38条第2項)

 

3.低圧回路の地絡に対する保護

 1 使用電圧が60Vを超える低圧の機械器具

 低圧の機械器具の地絡遮断器は、電技解釈第36条第1項において、60Vを超えるものについて義務付けられているが、ただし書きにおいて多くの例外が認められている。

 ① 機械器具を発電所又は変電所、開閉所若しくはこれらに準ずる場所に施設する場合

 ② 機械器具を乾燥した場所に施設する場合

 ③ 機械器具の対地電圧が150V以下の機械器具を水気のある場所以外の場所に施設する場合

 ④ 機械器具に施された接地工事の接地抵抗値が3Ω以下の場合

 ⑤ 電気用品安全法の適用を受ける2重絶縁構造の機械器具を施設する場合

 ⑥ 当該電路の系統電源側に絶縁変圧器(機械器具側の線間電圧が300V以下のものに限る。)を施設し、かつ、当該絶縁変圧器の機械器具側の電路を非接地とする場合

 ⑦ 機械器具がゴム、合成樹脂その他の絶縁物で被覆したものである場合

 ⑧ 機械器具が誘導電動機の2次側電路に接続されるものである場合

 ⑨ 試験用変圧器、電気柵用電源など絶縁できないことがやむを得ないものを施設する場合

 ⑩ 機械器具内に電気用品安全法の適用を受ける漏電遮断器を取り付け、かつ、電源引出部が損傷を受けるおそれがないように施設する場合

 ⑪ 機械器具を太陽電池モジュールに接続する直流電路に施設し、かつ、次に適合する場合

 イ 直流電路は、非接地であること。

 ロ 直流電路に接続する逆変換装置の交流側に絶縁変圧器を施設すること

 ハ 直流電路の対地電圧は、450V以下であること。

 2 使用電圧が300Vを超える低圧電路

 高圧又は特別高圧の電路と変圧器によって結合される、使用電圧が300Vを超える低圧の電路には、地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置が義務付けられているが、当該低圧電路が次の各号のいずれかのものである場合は省略できる。(電技解釈第36条第2項)

 ① 発電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所にある電路

 ② 電気炉、電気ボイラー又は電解槽であって、大地から絶縁することが技術上困難なものに電気を供給する専用の電路

 

4.高圧又は特別高圧の電路

 高圧又は特別高圧の電路には、これらの電路のどの地点においても地絡を生じたとき

 自動的に電路を遮断する装置を施設することになっている。これを図に示すと次のよう

 になる。

図図

 

5.地絡遮断装置を施設しなくても良い設備

 電技解釈第36条第5項には、地絡が発生した場合に電源を遮断することにより、支障を及ぼすおそれのある施設に対しては、警報する装置を施設することにより、地絡遮断装置の省略を次のように認めている。

 解釈第36条第5項

 低圧又は高圧の電路であって、非常用照明装置、非常用昇降機、誘導灯、鉄道用信号装置その他その停止が公共の安全の確保に支障を生ずるおそれのある機械器具に電気を供給するものには、電路に地絡を生じたときにこれを技術員駐在所に警報する装置を施設する場合は、前3項に規定する装置を施設することを要しない。