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(1)電線路の定義
電線路の定義は、電技省令第1条第八号に次のように定義している。この定義で「これを支持し、又は保蔵する工作物」とは、支持物、腕木、がいし、支線、支柱等電線を支持するものであり、ケーブルなどを保蔵する地中箱、接続箱、暗きょなどを指しており、これらのものに対して施設方法が定められている。
八「電線路」とは、発電所、変電所、開閉所及びこれらに類する場所並びに電気使用場所相互間の電線(電車線を除く。)並びにこれを支持し、又は保蔵する工作物をいう。
(2)電線路の種類
電線路の種類としては、用途別に分類すると送電線、配電線のようになるが、電技解釈では施設の形態に応じて次のような種類を定めて規制をしている。このほかに特殊なものとして地上に施設する電線路、橋に施設する電線路、電線路専用橋等に施設する電線路、がけに施設する電線路及び屋内に施設する電線路が規定されている(第147条~第151条)。
① 架空電線路
② 屋側電線路
③ 屋上電線路
④ 地中電線路
⑤ トンネル内電線路
⑥ 水上電線路
⑦ 水底電線路
(1)架空電線路の規制項目
電線路のうちで最も一般的なものは、架空電線路と地中電線路である。架空電線路は道路上や建造物に接近して施設されるので、次の事項について規制が行われている。
① 電波障害・誘導障害・電磁誘導の防止(省令第42条、解釈第51、52条)
② 支持物の規制(種類、強度、風圧荷重、基礎の強度、径間、補強)
③ 電線の規制(種類、強度、地表上の高さ)
④ 他物との接近交差(保安工事、離隔距離)
⑤ 市街地等への施設(省令第40条、解釈第88条)
⑥ 供給支障の防止(省令第48条、解釈第88条)
これらの規制のうち、重要なものについて紹介する。
(2)電波障害・誘導障害・電磁誘導の防止
(a) 電波障害の防止
電波障害は電線のコロナやがいしの不良によってテレビなどの無線設備の機能に障害を与えるもので、電技省令第42条第1項に防止をすることが規定されており、具体的には電技解釈第51条に低圧・高圧の架空電線の場合は、電波の許容限度が36.5dBと規定されている。
(b) 誘導障害の防止
誘導障害についても電技省令第42条第1項に防止をすることが規定されており、具体的には電技解釈第52条に架空電線と架空弱電線路が平行して施設される場合は原則として2m以上の離隔をとることが規定され、それでも障害がある場合は、架空電線を「ねんが」するなどの方法をとることが掲げられている。
特別高圧架空電線路の場合は、電技解釈第52条において架空電話線に常時静電誘導作用による障害防止対策として電話線の誘導電流の限度を規定しており、また特別高圧架空電線路からの電界の強さは地表上1mの地点で30V/cm を超えないことなどの規定がある。
(3)支持物の規制
支持物の材料、構造は、支持する電線等の引張荷重、風速40m/s の風圧荷重その他の外部環境の影響を考慮して倒壊しないようにするほか、連鎖倒壊がないように施設することが電技省令第32条に規定されている。そのほか支持物には、木柱、コンクリート柱、鉄柱、鉄塔によることが決められており、それぞれの規格が規定されている。支持物の基礎の強度、安全率2以上とするほか、木柱、コンクリート柱などには根入れの深さを柱の全長の6分の1以上とするなどが規定されている。
(4)電線の規制
(a) 架空電線の種類
低圧架空電線には絶縁電線及びケーブルを、高圧架空電線には高圧絶縁電線、特別高圧絶縁電線又はケーブルを使用することとされており、低圧接地側電線や谷越えなど特殊な場所に施設する高圧架空電線以外は、裸電線を使用することは禁止されている。特別高圧架空電線にはこのような規定がないので、裸電線が使用できる(電技解釈第64条)。
(b) 強度・太さ・安全率
電線が細いと切断され、垂れ下がると感電するおそれがあるのでその最低の強さ・太さが、市街地とそれ以外に分けて、第1表に示すように規定されている(電技解釈第65、70、95条)。電線が建造物など他の工作物と接近・交差する場合などは表の値よりも太い電線を使用する必要がある。
(c) 架空電線等の高さ
架空電線の地表上の高さについては、架空電力保安通信線、架空電車線とともに、接触又は誘導作用による感電のおそれがなく、かつ、交通に支障のおそれがないように施設することが電技省令第25条第1項に規定されており、具体的な高さは電技解釈第68条及び第87条に規定されている(第2表)。
(d) 構内300V以下の架空電線の特例(解釈第82条第2項)
工場内の配電線については特例があり、一構内だけに施設する300V以下、径間30m以下の架空電線が、建造物の上に施設される場合、道路(幅5mを超えるもの)、架空弱電線等と交差する場合及びこれらのものと当該300V以下架空電線の高さの距離以内に接近する場合以外の場合に限り、次のような特例がある。
① 電線の高さ 道路(幅5m以下)の横断は4m以上、その他の場合3m以上
① 造営物の上部造営材との離隔距離は、上方で1m、側方・下方で60cm
(5)他物との接近交差(保安工事、離隔距離)
電技省令第29条に架空電線と他の工作物とが接近・交さする場合の原則的な規定があり,具体的にはその解釈で、架空電線が建造物、道路、鉄道、軌道、索道、電車線、架空弱電流電線等、アンテナ、その他の工作物と接近又は交さする場合に、架空電線がこれらのものと接触したり、架空電線の電線の切断や支持物の倒壊により他のものに障害を与えないように離隔距離や電線の太さなどを規定している(電技解釈第70条~第77条)。
そのほか、架空電線が他の工作物と接近又は交さする場合に、一般の架空電線より強化しなければならない工事方法を「保安工事」として定義している。保安工事としては低圧架空電線路に対しては低圧保安工事、高圧架空電線路に対しては高圧保安工事が定められている(解釈第70条)。
特別高圧架空電線路に関しては、接近や交さの状態により、また電圧により、それぞれ強化すべき施設方法に差があるので、第1種から第3種までの特別高圧保安工事(第95条)が定められている。各保安工事がどのような場合に要求されるかを概略述べると、次のようになる。ここで「第1次接近状態」は、接近する他の工作物に上方・側方において、水平距離で支持物の高さ以内に接近する状態を、「第2次接近状態」は接近する他の工作物に上方・側方において、水平距離で3m未満に接近する状態を指している。
第1種特別高圧保安工事は、使用電圧が35kVを超え300kV 未満(建造物と接近するときは170kV)の特別高圧架空電線が建造物、道路、弱電流電線その他の工作物と第2次接近状態に施設される場合に要求される保安工事である。
第2種特別高圧保安工事は、35kV以下の特別高圧架空電線が建造物その他の工作物と第2次接近状態に施設される場合、又は特別高圧架空電線が道路その他の工作物と交さする場合に要求される保安工事である。
第3種特別高圧保安工事は、特別高圧架空電線が建造物その他の工作物と第1次接近状態に施設される場合の保安工事である。離隔距離の例として、低圧と高圧の架空電線と建造物、架空弱電流電線等とアンテナとの離隔距離について第4表に示す。
地中電線は架空電線に比べて、公衆に与える影響は少ないので、関連する電技省令の条文数も少ない。その主なものは次のとおりである。
○電技省令第21条第2項
地中電線には感電のおそれがないよう、使用電圧に応じた絶縁性能を有するケーブルを使用しなければならない。
○電技省令第23条第2項
地中電線路に施設する地中箱には、取扱者以外の者が容易に立ち入ることができないように施設しなければならない。
○電技省令第47条第1項
地中電線路は車両その他の重量物による圧力に耐え、かつ、地中電線路を埋設している旨の表示により掘削工事からの影響を受けないように施設しなければならない。
○電技省令第47条第2項
地中電線路のうち、その内部で作業が可能なものには、防火措置を講じなければならない。
上記の電技省令を受けて、電技解釈第120条では次のように規定している。
電技解釈第120条(地中電線路の施設)
第1項 地中電線路は、電線にケーブルを使用し、かつ、管路式、暗きょ式は直接埋設式により施設すること。
第2項 地中電線路を管路式により施設する場合は、管にはこれに加わる車両その他の重量物の圧力に耐えるものを使用すること。
第3項 暗きょ式地中電線路(条文省略)
第4項 直接埋設式地中電線路(条文省略)
第6項 埋設表示(条文省略)
第7項 耐燃措置(条文省略)
電技解釈第120条第1項の地中電線路の例は第1図に示すようになる。
電技解釈第120条第2項の管路式による地中電線路の施設については、高圧受電設備規程の引込み線の施設に具体的に示されている。
120 - 3 高圧地中引込線の施設
3.地中引込線を管路式により施設する場合は、管にはこれに加わる車両その他の重量物の圧力に耐えるものを使用すること(電技解釈第120条)。
4.前項のうち需要場所に施設する場合において、管径が200㎜以下であって、120 - 3表に示す管又はこれらと同等以上の性能を有する管を使用し、埋設深さを地表面(舗装がある場合は舗装下面)から0.3m以上として施設する場合は、車両その他の重量物の圧力に耐えるものとする(第2図、第5表)。
〔注〕 具体的な施工方法はJIS C 3653(電力用ケーブルの地中埋設の施工方法)を参照のこと。