長所 | ① | 電圧・電流の可変制御が容易で応答性に優れる |
② | 機械的動作ないので保守が容易 | |
③ | 小形・軽量 | |
④ | 低損失で効率が高い |
短所 | ① | 過負荷に弱い |
② | 異常電圧、過負荷などに対する保護対策が必要 | |
③ | スイッチング動作にともなうサージ電圧が入力側、出力側へ伝搬する |
半導体電力変換装置は半導体のスイッチング動作によって可変電圧を得るものですが、このスイッチング動作によって多くの高調波が発生します。このため、次のような対策を施しています。
高調波対策 | ① | 整流相数を増加(多相化) |
② | 線路フィルタを挿入 | |
③ | インバータの場合はPWM制御方式を採用 |
直流電動機は整流子とブラシの保守が必要であり大形で高価になる反面、広範囲でかつ精密な速度制御ができるという特長があります。
直流電動機の電機子回路の電圧をV、電機子回路の抵抗をRa、電機子電流をI a、主磁束をΦとすると、電動機の回転速度N は、次式に示すようになります。
・・・・・(1)
ただし、K:電圧定数
この式が示すようにΦ、V、Raを変化させれば直流電動機の回転速度を変化させることができます。
半導体電力変換装置による直流電動機の速度制御方式には、電機子回路の電圧Vまたは主磁束Φを変化させる方式があります。電機子回路の電圧を可変して速度制御する方式は、電機子電圧制御方式と呼ばれます。また界磁電流を可変して速度制御する方式は、界磁電流制御方式と呼ばれています。一般には電機子電圧制御方式を採用する場合が多く、界磁電流制御方式は補助的に使われています。
(1)電機子電圧制御方式
(a) 静止レオナード方式
静止レオナード方式は、第1図に示すように交流電源を直流電源に変換するサイリスタ順変換器を設け、この順変換器の位相制御によって電機子回路の電圧を調整するものです。この方式は、半導体電力変換素子にサイリスタを用いているためサイリスタレオナード方式とも呼ばれ、サイリスタの点弧角を制御することによって無段階で可変速制御することが可能です。この方式は非可逆運転方式といわれ、順変換装置1台を用いて一方向だけの速度を制御するものであり、抄紙機や線材圧延機などに用いられます。
現在ではサイリスタの高耐圧、大容量化および直並列接続技術が確立され、数10MW級の大形半導体電力変換装置が製作できるようなってきています。この種の半導体電力変換装置における制御方式は、マイコンを用いたディジタル制御回路が標準的です。
静止レオナード方式は第3図に示す直流発電機を用いたワード・レオナード方式に比べ、次のような長所があります。
長所 | ① | 速応性にすぐれ、無慣性制御可能 |
② | 順方向揖失が少なく効率がよい | |
③ | 静止器であるため騒音が少ない | |
④ | 取扱・保守が容易で長寿命 | |
⑤ | 設備費が少ない | |
⑥ | すえ付け面積が小さい |
短所 | ① | 回転部のエネルギー蓄積作用がないので、負荷または電源の瞬時変動がそのまま電源側または負荷側に伝わる |
② | サイリスタの位相制御による波形ひずみが大きく力率が低下する | |
③ | 電圧脈動が大きく電動機の整流悪化、温度上昇の増大をまねく |
(b) 直流チョッパ方式
直流チョッパ方式は、第4図に示すように直流電源の場合に用いられる速度制御方式です。この方式は、一次側と二次側の間に設けられた半導体のスイッチング動作によって可変直流電圧を得るものです。スイッチング素子には、主としてGTOサイリスタを用い、
GTOのオン/オフ時間の比率を可変することで、連続的な電圧調整が可能です。
チョッパの出力波形が第5図に示すようなとき、このチョッパの通流率を次式に示すように定義します。
通流率=
・・・・・(2)
直流チョッパ方式は、電動機を停止させるときにGTOのスイッチング制御によって電動機を発電機として動作させる回生制動も可能であり電気自動車や電気鉄道に用いられます。
直流チョッパ方式は、電機子回路に挿入した可変抵抗器によって速度制御する抵抗制御方式に比べて電動機運転時/回生制動時とも、可変抵抗器による電力損失がなく、大幅な電力節減を図ることができます。しかしながら、スイッチング動作によって大電流をオン・オフすることになります。このため入力電流がパルス状になり、それゆえサージ電圧が発生し、脈動電流が電源に流れます。この対策として電源とチョッパとの間にフィルタを挿入します。
(2)界磁電流制御方式
界磁電流制御方式は、界磁電流をサイリスタ順変換器で調整して可変速制御するもので、通常、静止レオナード方式と組み合わせ、速度制御範囲拡大を目的に補助的に利用されています。