同期発電機に負荷が接続され電機子巻線に電流が流れて電機子に磁束が生じ、この磁束が界磁磁束(主磁束)に影響を与えることを電機子反作用という。電機子反作用は、同期機だけでなく直流発電機または直流電動機にも同様に生じる。直流機の電機子反作用は負荷電流が流れることによって主磁束に影響を与える現象であり、その影響は負荷電流の増大にともなって大きくなる。しかしながら同期機の場合、電機子に流れる電流が交流であるため、電流の大きさだけでなく、電流の位相、すなわち電機子起電力との位相差によって直流機とは異なる電機子反作用現象が生じる。これら電機子反作用の説明とあわせて同期電動機のV曲線についても解説する。
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一般に同期機は、第1図に示すように固定子側を電機子巻線、回転子側を界磁巻線とした構造の回転界磁形が多く用いられている。このような構造をとる同期機の回転子が界磁磁束を発生しながら回転すると、固定子に巻かれた電機子巻線は、磁束が時間的に変化する磁束を受けて電機子巻線に誘導起電力が発生する。
このとき同期発電機に負荷が接続されると、負荷電流が電機子巻線に流れるとともに電機子巻線には、負荷電流によって磁束が発生する。この電機子磁束が界磁磁束と鎖交すると界磁磁束に影響を与える電機子反作用が生じる。
同期機の電機子反作用は、負荷の力率によって異なる現象を表す。
(a)負荷電流の力率が1の場合
第2図は、電機子および回転子の断面を横に直線状に広げたものである。
この図に示すように負荷電流が誘起電圧と同相の場合、次のような現象が生じる。
・磁極(回転子)における回転方向側の磁束は主磁束と逆方向になる |
|
→ 界磁磁束を弱める |
・反対側の磁極は主磁束と同方向になる |
|
→ 界磁磁束を強める |
このような現象を交さ磁化作用という。
(b)負荷電流の力率が遅れの場合
第3図は、誘導起電力に対して電機子電流の位相が90°遅れた状態、すなわち遅れ力率0の場合を示している。このとき次のような現象が生じる。
・電機子巻線に生じる電機子磁束の方向と、回転子の界磁磁束が逆向きになる |
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→ 界磁磁束を弱める |
この現象を減磁作用という。減磁作用が起こると発電機の端子電圧が低下する。
(c)負荷電流の力率が進みの場合
第4図は、誘導起電力に対して電機子電流の位相が90°進んだ状態、すなわち進み力率0の場合を示している。
このとき次のような現象が生じる。
・電機子巻線に発生する磁束と、回転子が発生する界磁磁束の方向が一致する |
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→ 界磁磁束を強める |
この現象を増磁作用という。増磁作用が起こると電機子巻線に対する主磁束が強められるため誘導起電力は高くなる。
このような電機子反作用によって同期機には種々の現象が発生する。以下、補足解説する。
近年の電力系統は超高圧・長距離送電線や高電圧ケーブル系統の拡大によって、線路充電容量が増加する傾向があるほか、需要家の力率改善コンデンサの普及によって夜間などの軽負荷時には発電機から系統側に対して進相電流が流れる。この場合は、上述した増磁作用によって発電機の端子電圧が上昇する。
たとえば発電機が無励磁であっても界磁回路の残留磁気によって発生した起電力が進相負荷に流れることで増磁作用が起こり、起電力が増大し、さらに進相電流が増加することを繰り返して端子電圧が上昇することがある。これを自己励磁現象という。
自己励磁現象が生じると発電機の絶縁破壊を起こすことがあるので注意が必要である。
同期発電機に電機子反作用が起こると前述したように誘導起電力が変化する。そこで電機子反作用による影響を等価的にリアクタンスの変化におきかえて考える。これを電機子反作用リアクタンスという。すなわち電機子反作用リアクタンスは、電機子反作用による電圧降下分(電圧変化分)を等価的にリアクタンス成分としておきかえたものと考えてよい。
また、電機子反作用リアクタンスと電機子漏れリアクタンスの和を同期リアクタンスxsという。さらに同期リアクタンスxsと電機子巻線抵抗raのベクトル和を同期インピーダンスZsという。
このような考え方を用いて同期発電機一相分の等価回路を描くと第5図に示すようになる。
ただし、タービン発電機のような円筒機では一般に電機子抵抗に比べて同期リアクタンスの方がはるかに大きいため、電機子抵抗を無視して簡易的に考えることもある。
第5図の等価回路を参照しながら同期発電機に電流Iが流れたときのベクトル図を描くと第6図に示すようになる。
この図から、電機子誘導起電力Eは、次式のように求まる。
ただし、θ:力率角、xS:同期リアクタンス〔Ω〕、ra:電機子抵抗〔Ω〕
このベクトル図におけるδは、負荷角と呼ばれ、負荷の増減にともなって変化する。
電動機の界磁電流を変化させるとその電機子電流は第7図に示すように変化する。この特性曲線はその形状からV曲線とも呼ばれる。同期電動機では界磁電流を減少させると同期電動機は遅れ力率になり、界磁電流を増加させると進み力率になる。すなわち同期電動機は、界磁電流を変えることによって任意の力率を得ることができる。この性質を利用して力率調整を行うために用意された同期電動機を同期調相機という。同期調相機はロータリーコンデンサともいわれる。
ところで発電機の場合は、界磁電流を減少させると進み力率になり、界磁電流を増加させると遅れ力率になったが、電動機の場合、電機子電流の方向が逆になるため電機子反作用の増磁作用と減磁作用は第1表に示すように逆になる。
すなわち同期電動機の場合、
- 力率が1で運転している場合、磁極の回転方向側の磁束が強まり、反対側の磁束は弱まる
- 進み力率で運転すると減磁作用が起こる
- 遅れ力率で運転すると増磁作用が起こる