〜終わり〜
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
同期電動機の構造を第1図に示す。固定子の電機子巻線に三相交流電流を流して回転磁界を作り、回転子の磁極を固定子の回転磁界が引っ張って回転子を回転させる。誘導電動機の構造は第2図のように固定子は同じであるが、回転子(詳細は第4章で説明)は鉄心の表面に溝を作り、裸導体または絶縁導体を配置し、両端を直接短絡(絶縁導体の場合はY結線の端子に調整抵抗を接続)するものである。第2図は巻線形と呼ばれるもので、120度づつずらして配置したa、b、c相の巻線が中央の同一点から出発し、最後は各相のスリップリングに接続され、これを通して短絡する。
誘導電動機の回転の原理は、回転子導体には右回りの回転磁界によってフレミングの右手の法則で裏から表に向かう起電力が発生して導体に電流が流れるので、この電流と回転磁界の間に、フレミングの左手の法則に基づく電磁力が発生し、回転子の導体は右方向=回転磁界の方向に引っ張られ、同期電動機のように右方向に回転する。ただし、回転子が回転すると導体を直角に通過する回転磁界の回数が減少するので、発生する起電力は回転子の回転速度の上昇で回転磁界と回転子の速度差に比例して減少し、同期速度では0となる。このことから回転速度は同期速度以下になる。このように固定子が作る回転磁界が同期電動機は磁極を引っ張り、一定の同期速度で回転する装置で、誘導電動機では回転子巻線に発生する電圧によって導体に電流を流して、回転子を電磁力で引っ張って同期速度以下で回転する装置である。
次に誘導電動機の原理、等価回路、各種特性などについて解説する。
アラゴの円板とは第3図(a)に示すように、軸のある導体の円板(銅、アルミ)の表面に沿って永久磁石を回転させて、円板を磁石の回転方向に回転させるものである。鉄板であれば磁界ができるので磁石に引っ張られるが、銅やアルミ板がなぜ同じように引っ張られるのかを具体的に解説する。真上から見た水平面を第3図(b)に示す。図から磁石が反時計方向に回転すると、円板上を磁束が移動して、磁束が円板を切ることになるので、円板にはフレミングの右手の法則に基づき第1段階では中心から外に向かう誘導起電力が発生し、導体に同方向に電流が流れる。この電流が流れると、第2段階としてフレミングの左手の法則で電流と磁石の磁束の間に円板を右に引っ張る電磁力が発生し、円板は磁石に引っ張られて磁石の移動方向=反時計方向に回転することになる。ただし、誘導起電力は円板上を磁束が移動して磁束が円板を切る場合に発生するので、円板の速度は磁石の速度より遅くなる。
誘導電動機の等価回路は変圧器と類似の等価回路である。なぜこうなるのかを解説する。第2図の構造図から、各相の巻数は固定子N1、回転子(絶縁電線使用)N2とする。
固定子巻線に回転子巻線を開放して三相電圧を印加すると、固定子巻線には励磁電流が流れて各相に磁束が発生し、合成磁束は別講座の電験問題「発電機と電動機の原理(4)」で解説したように回転磁界となるので、この回転磁界が固定子巻線と回転子巻線を共に切り、固定子巻線に逆起電力E1、回転子巻線には逆起電力E2が発生する。E1は電験問題「発電機と電動機の原理(1)」で解説したように、周波数f〔Hz〕、最大磁束φm〔Wb〕、係数をk1とすると、
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E2は回転子が固定されている場合は固定子と同様で、
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となるので、第4図のように鉄心の間に空間を持った変圧器に類似した構成になる。
等価回路は固定子巻線と回転子巻線の抵抗、リアクタンスをr1、x1、r2、x2とし、更に固定子側の励磁電流の回路と鉄損を表す励磁アドミタンスY0=g0+jb0を入れると、変圧器と同様、第5図となる。
次に誘導電動機の回転子が回転して、回転速度nになると第6図のように回転子巻線を切る磁束の速度は回転磁界の速度ns(同期速度)との速度差ns—nとなる。
ここで、速度差を表す滑りsは(3)式で定義されている。
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回転子巻線に発生する周波数f2は回転子巻線を切る磁束の速度、すなわち前述の速度差に比例して(4)式となる。
f : f2 = ns : ns−n
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この結果、逆起電力e 2は周波数がf2に変化するので(2)式は(5)式となる。
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回転子巻線の抵抗は一定、リアクタンスは周波数に比例しr2、sx2となる。
回転子巻線側だけの等価回路にすると第7図(a)となり、この回路を更に見直して、
e2=sE2、r2、sx2をsで割り算するとE2、r2/s、x2となるので、等価回路を第7図(b)とすることができる。
第5図と第7図(b)を統合すると全体の等価回路は第8図(a)になる。
前述のことから、誘導電動機の固定子巻線を一次巻線、回転子巻線を二次巻線ともいう。
更に等価回路を一次側、二次側に統一するには変圧器と同様、巻数比a=N1/N2を用いて、一次側換算の回路は二次側Z2をa2倍して第8図(b)となる。二次側換算の回路は一次側Z1を(1/ a2)倍、Y0をa2倍する。
これまでは二次回路の末端を開放して解説したが、運転に入ると、4.で解説するように末端は短絡されるので、等価回路の二次側を短絡して利用する。
ここまでは二次側を開放した状況で等価回路を解説してきたが、開放状態では変圧器の無負荷と同様、回転子巻線に起電力が発生しても電流は流すことができないので、電動機として回転することはできない。
電流を流すために三相誘導電動機の二次側は短絡しなければならない。短絡するには、大型機の場合は第9図のように回転子巻線はY結線として片側は一点に集中接続し、もう一方の端子は三相のスリップリングを通して引き出し、調整抵抗を接続する巻線形である。小型機の場合は第10図のように巻線に裸導体を使用して、両端をそのまま短絡するかご形である。
このことから、運転中の等価回路は第7図、第8図で開放されている二次側を短絡する回路となる。