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電動機は様々な機械装置に使われている。主なものとして、物体を上下、左右などに移動させる巻上機やクレーン、エレベータ、エスカレータ、水の揚水などのポンプ、空気の圧縮や送風する圧縮機、送風機、紙やケーブルなどを巻き取る巻取機、鉄道の電車などがある。
電動機応用ではこれらの機械装置が消費するエネルギー、出力、トルクや速度特性と制御並びにこれらの機械に適合する電動機について学ぶことが重要である。今回は各種の機械装置の機械エネルギーの仕事量の計算方法についてポイントを解説する。
エネルギーとは物体が物理的な仕事をすることのできる能力である。機械エネルギーには基本的に位置のエネルギー、運動のエネルギーがある。物体を動かすためには力を加えて、上記エネルギーを外部から加える必要がある。これが仕事となる。機械エネルギーの基本となる力学について主要事項を解説する。
(1)力の単位
1kgの物体を加速度1m/s2で動かす力で単位はニュートン〔N〕である。
〔N〕=〔kg・m/s2〕
運動の法則から力F〔N〕と質量m〔kg〕、加速度α〔m/s2〕の関係
F=mα 〔N〕 ( 1 )
(2)加速度の単位
加速度とは物体が速度の大きさや方向を変化しながら運動する場合、その変化の割合を示す量で1秒間の速度の変化を表す。よって最初の速度v0、t秒後の速度をv1とすると、加速度α=(v1-v0)/tとなり、単位は(m/s)/sから〔m/s2〕である。
次に加速度と速度、移動距離の関係は、物体に( 1 )式の加速度αをもつ力Fがt秒間加わると物体の移動速度は増加する。この関係は最初の速度をv0、t秒後の速度をv1とすれば、
v1=v0+αt ( 2 )
移動距離Sは物体の平均速度(v1+v0)/2で、時間はt秒から、
(3)仕事の単位
(a) 仕事量
第1図のように物体に力Fが作用すると、その物体はある距離移動する。これを力による仕事という。仕事量Kは力の大きさF〔N〕と力の方向に動いた距離S〔m〕の積で表す。
K=FS〔N・m〕 ( 4 )
単位は〔N・m〕で1N・m=1Jである。ここで〔J〕は電力エネルギーとも共通の単位=エネルギーの単位である。
(b) 動力(1秒間の仕事量)
上記でかかった時間をt秒〔s〕とすると動力Pは、
P=K/t=FS/t=Fv ( 5 )
単位はN・m/s=J/s=W(ワット)である。
(4)回転体の単位
(a) トルク
第2図の円心Oで半径r〔m〕の円盤(回転体)の円周に力F〔N〕が働くと円盤は右方向に回転する。この回転運動を起こす力量=(力F×半径r)を力のモーメントという。同時に回転させる力=回転力をトルクTという。
T=Fr〔N・m〕 ( 6 )
(b) 回転体の仕事量と動力
仕事量と動力は水平移動の場合は第1図及び( 4 )、( 5 )式であるが、回転運動の場合、第2図から回転体の半径rで力F、回転速度(秒速s)nとすると、
1秒間に移動する距離=速度v〔m/s〕=2πrn から、
・動力P =Fv=F×2πrn=Fr×2πn
Frは力のモーメント=トルクT、角速度ω=2πn から、
K=2πnT=ωT〔W〕 ( 7 )
・仕事の量K=FS=Pt=ωTt〔J〕
(参考)角速度
角速度ωとは回転する物体の円周速度を弧度(rad)(1radとは第3図の円周の長さSが
半径rに等しいときの中心角(約57度)で表すもので、第3図のようにA点からB点まで運動する時間をt秒とし、このときの中心角をθラジアンとすると、
角速度ω=θ/ t〔rad/s〕
円周速度vとの関係は、半径rとすると、
v=rθ/ t=rω
回転速度(回転数)との関係は回転速度を1秒間の回転数nとすると、1秒間に回転する円周の長さは1回転が2πrなので、n回転すれば2πrnとなる。角速度ωは1秒間の角速度であるから、両者の関係は、
ω=2πrn/r=2πn
(5)物体が持つエネルギー
エネルギーとは物体が物理的な仕事をすることのできる能力である。機械エネルギーには高所にある物体や運動している物体がもっているエネルギーがある。力学では高所のエネルギーを位置のエネルギー、運動しているエネルギーを運動のエネルギーという。仕事では物体を上下するには位置のエネルギー、左右の移動や回転には運動エネルギーを物体に与えることが必要になる。各エネルギーの基本は以下のとおりである。
(a) 位置のエネルギー
地球上ではどんな物体でも地面の方向への力(重力)を受けており、大きさはその物体に比例する。この比例定数を重力加速度gという。位置のエネルギーの場合は( 1 )式の加速度αを重力加速度gに変えて、第4図( a )のように地上からの高さh〔m〕、質量m〔kg〕、重力加速度g=9.8〔m/s2〕とすると、F=mg、S=hから( 8 )式となる。
K=FS=mgh=9.8mh〔J〕 ( 8 )
このように高さに比例するエネルギーになる。
(b) 運動のエネルギー
第4図( b )のように質量m〔kg〕の物体に力F〔N〕を作用させてt秒後に速度v〔m/s〕で運動させた場合、速度の変化を表す加速度α=v/tとなるので、Fは( 1 )式からF=mα=mv/tになる。t秒後の速度はvとなるので平均速度はv/2となり、t秒間に物体が移動する距離はS=(v/2)×t=(vt/2)となる。この仕事量=物体がもっているエネルギーKは( 2 )式から、
K=FS=(m×v/t)×(vt/2)=mv2/2〔J〕 ( 9 )
次に初期速度v0で運動している質量m〔kg〕の物体に力を与えてt秒後速度がv1になったときの消費エネルギーKは、各速度の運動エネルギーの差で( 10 )式となる。
K=m(v12―v02)/2〔J〕 ( 10 )
このように運動のエネルギーは物体のもっている速度の2乗に比例する。
(c) 両者の関係
地上にある物体がもつ位置と運動のエネルギーの関係は、第5図のように物体m〔kg〕は地上h〔m〕で停止している場合は位置のエネルギーmgh〔J〕だけである。途中h1まで落下すると位置のエネルギーはmgh1まで低下するが、物体は重力加速度gにより加速され速度vに達するので運動エネルギーmv2/2をもつことになる。物体が有するエネルギーは消費されていないので両者を併せると一定の値になる。このことから両者の関係は( 11 )式となり、速度vは( 12 )式となる。
mgh=mgh1+mv2/2 = 一定 ( 11 )
v= ( 12 )
地上に落下するときはh1=0となるので、( 12 )式から速度vは( 13 )式となる。
(d) 回転体の運動のエネルギー(回転エネルギー)
第6図から回転エネルギーKは質量m=G(回転体の全質量)〔kg〕、速度v〔m/s〕は回転体の毎分の回転数N〔min-1〕、半径R〔m〕とすると、v=2πNR/60から( 9 )式に導入すると( 14 )式となる。
K= 〔J〕 ( 14 )
ここで、GR2〔kg・m2〕を慣性モーメントという。
Rに変えて直径D〔m〕を用いると( 14 )式は( 15 )式になる。
K= 〔J〕 ( 15 )
ここでGD2〔kg・m2〕をはずみ車効果という。
両者の関係はGD2=4GR2である。
次に回転体の回転数をN1からN2に上昇させるために必要なエネルギーΔKは両回転数がもつエネルギーの差なので( 16 )式となる。
ΔK = 〔J〕 ( 16 )
回転数の上昇にかかる時間をt〔s〕とすると、平均出力P〔W〕は( 16 )式 / tから( 17 )式となる。tが短時間なら出力は大にしなければならない。
P= 〔W〕 ( 17 )
(6)摩擦力
第1図の物体は空間にあるが、第7図のようにこの物体を別の水平状の物体の上に置く
と、二つの物体は接触しているので物体を動かそうとすると接触面に摩擦力が発生する。物体が静止している場合の最大値を最大静止摩擦力といい、装置の始動時に生じる抵抗力である。力Fと静止摩擦力Sは比例関係にあり、S=μFで、μを静止摩擦係数という。一方、滑っていく物体に働く摩擦力は滑り摩擦力といい、関係式は同じであるが、係数は滑り摩擦係数μsと呼び、値は静止摩擦係数より小さい。電車運転時などで車輪とレールの間など接触する物体間に発生する抵抗力で損失となる。