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一次方程式は、一つまたは複数の変数の関係を表す方程式で、いずれの項も変数の一次式の和または差で表される。定数が一定の線形電気回路の電圧と電流の関係(オームの法則、キルヒホッフの法則)、力と加速度の関係(ニュートンの運動方程式)など電気に関するさまざまな関係を表すのに使う。また、二つの定数や一次式の積を和や差の形に変換するのが展開、逆に和や差の式を一次式や定数の積の形に変換するのが因数分解である。これらは、電験の計算問題を解く場合のよく使う最も基礎となる知識である。電気回路での使用例を用いて解説する。
方程式は、代数を用いて等式を組み立てたものである。ここで、代数というのは、数の代わりということである。3とか5とか数を決めてしまうと、ほかの数の場合には利用できなくなるので、それでは一般的な性質を調べるのに困るから数量を決めないために、XとかYなどの文字を数の代わりに用いる。
代数はそれだけでなく、答のわからない場合に、その答となるべき数(未知数ともいう)をEとかIとかなどの文字で書いて方程式を作り、その式から問題を解くことができる。方程式というのは未知数のある等式のことである。
等式というのは、7X-3=3X+5のように等号(=)で結ばれた式をいう。
一次方程式とは、未知数「元」が1つのものをいう。さらによく使われる一次方程式には、一元一次方程式と、二元一次方程式とある。
一元一次方程式は 6X+15=2X+35のように未知数(X)が1つであるが
二元一次方程式は のように未知数(X、Y)が2つある。
このように複数個の方程式を組み合わせたものを連立方程式という。
上記の二元方程式ではXを求めようとすればYが邪魔になり、Yを求めようとすればXが邪魔になる。そこで、Xを求めるためにはYをなくさなければならない。なくすことを「消去する」という。
電気の問題を解く場合、まず問題文を読んで方程式を作り上げることが特に大切になる。
(1)第1図に示す電気回路で、スイッチSを開いたとき、端子電圧abは100Vあり、スイッチSを閉じて10Aを流したら、95Vになったという。この回路において、端子電圧が92Vになっているとすれば、負荷に流れている電流は何〔A〕になっているか。
〔考え方〕 端子電圧abをV〔V〕として、負荷に流れる電流をi〔A〕とすると、次式が成り立つ。
V=E-ri
この式において、Sを開いた時、すなわちi=0のときのV=100Vと、i=10AのときのV=95Vの条件から、Eおよびrの値を求める。次に、端子電圧が92Vになったときのiの値を求める。
〔解き方〕 スイッチSを開いて、i=0のときはV=100Vである。
またスイッチを閉じて、i=10Aを流したとき、V=95Vとなるから、
95=100-r×10 となり、 10r=100-95=5 ∴
次にV=92Vのときのiの値を求める。E=100V、r=0.5Ωが得られたから、
92=100-0.5i となり、 0.5i=100-92=8 ∴
となる。
(2)第2図の回路において、スイッチSが開いているときの抵抗Rの両端の電圧は6Vであった。Sを閉じると、抵抗Rの両端の電圧は4Vになった。このとき、電源電圧Eと抵抗Rの値を求めよ。
〔考え方〕 連立方程式を作る
この問題の考え方の基本は、スイッチSが開いているとき、スイッチが閉じているとき、それぞれの場合の方程式を立てる。
スイッチSが開いているときの回路は、第2図のように抵抗の直列回路になる。流れる電流に注目すると、 〔V〕なので、電流は 〔A〕となる。
またこの電流は を流れる電流でもあるから、 ・・・① がなりたつ。
一方、スイッチが閉じているときの回路は、第3図のようになるが、これも3Ωに流れる電流に注目して方程式をたてる。この場合、3Ωの電流は 〔A〕であり、この電流は と2Ωの電流の和になるから次式が成り立つ。
〔解き方〕
①、②の2個の連立方程式を文字を消去しやすいように変形し、③、④のように整理する。
・・・③ ・・・④
③、④式から を消去すると、 18+6R=12+10R
10R-6R=18-12 ∴ この値を③式に代入すると、
となり が求められる。
積(掛け算)の形の式を、和(足し算)と差(引き算)の形の式にすることを式の展開という。式の展開の重要な公式をあげると、次のようになる。
○ 共通因数a(x+y+z)=ax+ay+az
○ 和と差の平方(a+b)2=a2+2ab+b2 (a-b)2=a2-2ab+b2
○ 和と差の積(a+b)(a-b)=a2-b2
○ 一次式の積(x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab
(ax+b)(cx+d)=acx2+(ad+bc)x+bd
因数分解とは、式の展開の逆の操作をすることである。
例えば、a2+2ab+b2がわかっており、これを(a+b)2にすることを因数分解するという。したがって、因数分解をマスターするためには、上記に示した式の展開と公式を、左辺から右辺へ、また右辺から左辺へ、順逆よく学習しておく必要がある。方程式を解くときに経験したように、答を出すまでには、式を変化させるわけであるが、式の変化の上手下手が早く答を出せるかどうかに影響するので、上手に行なえるように訓練しよう。
因数分解の手順は、次のように行う。
① 共通因数がある場合は早く、かっこでくくり出す。
② 因数分解の公式が適用できるかどうかを調べる。
③ 公式がすぐ適用できない場合は、少し工夫して式を変形し、整理し因数分解できる形にする。
このような手順で因数分解するわけであるが、多少の直感と熟練を必要とする。
(1)第4図のように、2個の抵抗R1、R2がある。この抵抗を直列に接続したときの合成抵抗は50Ω、並列に接続したときの合成抵抗は12Ωである。2個の抵抗の抵抗値はいくらか。
〔考え方〕
2個の抵抗をR1、R2とすると、次の二式が成り立つ。
直列接続 R1+R2=50・・・①
並列接続 ・・・②
これより式を変形して、因数分解によりR1、R2を求めればよい。
〔解き方〕
①式のR1を右辺に移す R2=50-R1・・・③
②式に①式および③式を代入する
50R1-R12=12×50 移行して整理すると、
R12-50R1+600=0・・・④
① 式の左辺を X2+(a+b)X+ab=(X+a)(X+b) の公式を使って因数分解すると、 a=-30、b=-20 の組み合わせのとき満足するから④式は、
(R1-30)(R1-20)=0・・・⑤ と因数分解できる。
② 式によりR1-30=0またはR1-20=0 が得られるので,
R1=30Ω または R1=20Ωとなる。
したがって③式より、以下の答が得られる
または
(2)4個の抵抗を第5図のように接続し、電圧100Vを加えておきスイッチSを開閉しても流れる電流は30Aであったという。R1、R2の抵抗値を求めよ。
〔考え方〕
電源電圧100Vと全電流30Aから、回路の合成抵抗の値が求まるから、スイッチSを開いたとき、閉じたときそれぞれの場合の合成抵抗を求めて式を立てる。
得られた二式から、因数分解できる式に変形し、答を導く。
〔解き方〕
オームの法則により、回路の合成抵抗値R0は R0=
Sを開いたときの合成抵抗は、 となるから、
10(12+R1+R2)=3(8+R1)(4+R2) さらに式を整理すると、
3R1R2+2R1+14R2-24=0・・・①
さらにSを閉じたときの合成抵抗は、 となるから、
両辺に を掛けると
この式を整理すると、
3R1R2-2R1-2R2=0・・・②
①、②式からR1、R2を求めればよい。例えば②式より、
R2(3R1-2)=2R1 ∴ と表し、これを①に代入する。
さらに両辺に(3R1-2)を掛けると、
6R12+2R1(3R1-2)+28R1-24(3R1-2)=0
これを整理すると、
12R12-48R1+48=0
したがって R12-4R1+4=0 を因数分解すると、
(R1-2)2=0 が得られるから、 抵抗値R1=2Ω
R1=2を 式に代入すると、
抵抗値 となる。