~終わり~
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変圧機に発生する損失は第1図に示すように、無負荷損としてヒシテリシス損と過(うず)電流損を合成した鉄損、負荷損として銅損と漂遊負荷損を合成した損失がある。
無負荷損は変圧器の二次側を開放した状態で、一次側に定格電圧を印加した時に発生する損失で、変圧器に負荷がかかっても変わらず負荷に関係なくほとんど一定である。参考に無負荷損の内訳としてヒステリシス損は渦電流損の4倍くらい大きいこと、そして無負荷損は電圧の2乗に比例します。
負荷損は銅損すなわち一次巻線、二次巻線に発生するrI2の抵抗損と漂遊負荷損すなわち漏れ磁束によって鉄心や周辺の金属に発生するうず電流による損失の合成になりますが、漂遊負荷損は極めて小さいので負荷損=銅損として扱われます。
このように法規の試験問題では無負荷損=鉄損、負荷損=銅損として使用されています。
変圧器の効率とは入力と出力の比率を表すもので、実際に入力と出力を測定して(1)式で求める実測効率と一定の規約に従って決めた(2)式の規約効率がある。標準的には規約効率が用いられる。
次に、規約効率η、変圧器定格容量P[kVA]、鉄損pi[kW]、全負荷銅損pcn[kW]、負荷の力率cosθ、負荷K[KVA]と変圧器定格容量P[KVA]の比=負荷比a= とすると
出力=Kcosθ=aPcosθ [kW]
負荷比aの銅損pcaは負荷電流の2乗に比例するのでpca=a2pcn [kW]
(2)式に導入し、分母、分子をaで割り算すると(3)式になる。
最大効率は、(3)式の右側からPcosθは一定で、鉄損部分はaに反比例し、銅損部分はaに比例するので、 が最小値となるのは のとき、すなわち から鉄損と銅損が等しくなる負荷比が最大効率になる。
この負荷比aは(4)式、最大効率ηmは(5)式となる。
変圧器にかかる負荷は時間とともに変化するので、1日中の総合効率を全日効率ηdという。一般的には(6)式ですが、具体的には以下のようになり(7),(8),(9)式が重要です。
ここで、
1日の出力電力量は変圧器定格容量P[kVA]、負荷の力率cosθ、負荷比a、時間T[h]とす
ると1日の出力電力量Wは(7)式となる。
1日の出力電力量W=∑aPcosθT [kWh] (7)
1日の損失量pは、鉄損piは24時間一定、銅損は負荷比aの2乗に比例して変化するのでそれぞれの合計となる。すなわち
1日の鉄損量=24pi [kWh]
1日の銅損量=∑a2pcnT [kWh]
から(8)式となる。
1日の損失量p=24pi +∑a2pcnT [kWh] (8)
ηdは(7),(8)式を(6)式に導入すると(9)式となる。
過去の問題は以下のとおりで、ポイントを解説する。
(1)変圧器の損失の計算
定格容量100[kVA]、定格二次電圧200「V」の単相変圧器がある。定格二次電圧において二次電流500[A]のとき全損失が1640[W]、二次電流が300[A]のとき全損失が1000[W]である。次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) この変圧器の全負荷銅損の値として正しいのは次のうちどれか
(1) 640 (2) 730 (3) 820 (4) 910 (5) 1000
(b) この変圧器の 鉄損の値として正しいのは次のうちどれか
(1) 240 (2) 320 (3) 480 (4) 640 (5) 800
(a)の解答
鉄損pi[W]、全負荷銅損pcn[W]、変圧器定格電流In[A]とすると
から、二次電流500Aは定格電流と同じであるので
損失p5=pi+pcn=1640 (a)
二次電流300Aのときの損失p3は負荷比a=300/500=0.6から
損失p3=pi+a2pcn= pi+(0.6)2pcn = pi+0.36pcn =1000 (b)
両損失から(a)式―(b)式を求めると
(pi+pcn)-( pi+0.36pcn)=0.64 pcn =1640-1000=640
pcn =640/0.64=1000 W
回答 (5)
(b)の解答
鉄損pi[W]は上記(a)式から
pi=1640- pcn =1640-1000=640 W
回答 (4)
損失は鉄損+銅損で、銅損は全負荷銅損を基準に負荷比の2乗に比例する:が重要である。
(2)変圧器の最大効率の計算
定格容量100[kVA]の変圧器の鉄損500[W]で、定格出力の80[%](力率は1)のときの銅損640[W]であるとする。次の(a)及び(b)に答えよ。
(a)この変圧器の全負荷銅損の値として正しいのは次のうちどれか
(1) 640 (2) 720 (3) 880 (4) 1000 (5) 1120
(b)この変圧器の力率0.9のときの最大効率の値として最も近いのは次のうちどれか
(1) 98.1 (2) 98.3 (3) 98.5 (4) 98.7 (5) 98.9
(a)の解答
力率1で定格出力の80[%]であるので負荷比aは0.8になる。銅損pcと全負荷銅損pcnの関係はpc= a2pcnから
640=(0.8)2×pcn pcn =640/(0.8)2=1000 W
回答 (4)
(b)の解答
最大効率ηmのときの負荷比aは(4)式からpi=500、pcn =1000から
最大効率ηmは(5)式を用いて、cosθ=0.9 P=100×1000から
回答 最も近いものとして98.5 (3)
最大効率は鉄損=銅損となる負荷比を求め、計算に当たっては力率を忘れないこと。
(3)変圧器の全日効率の計算
定格容量100[kVA]、鉄損900[W]及び全負荷銅損1.2[kW]の変圧器がある。この変圧器を1日のうち無負荷で10時間、定格電流の50[%](力率1.0)で6時間、定格電流(力率0.85)で8時間使用するときに、次の(a)及び(b)に答えよ。
(a)この変圧器の1日の全損失電力量[kWh]の値として、正しいのは次のうちどれか。
(1) 80 (2) 66 (3) 55 (4) 46 (5) 33
(b)このときの全日効率[%]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
(1) 60.5 (2) 75.2 (3) 80.5 (4) 96.7 (5) 99.3
(a)の解答
変圧器の1日の全損失電力量p[kWh]の計算は(8)式を用いて
p=24pi +∑a2pcnT
=24×0.9+1.2×(0.52×6+12×8)=21.6+11.4=33.0 kWh
回答 (5)
(b)の解答
1日の出力電力量Wは(7)式から
W=∑aPcosθT=100×(0.5×6+0.85×8)=980 kWh
全日効率ηdはWとpを(6)式に導入して
回答 (4)
(6)から(9)式を用いて鉄損は一定であるが、銅損、出力は変化した出力を用いて計算することが重要である。
(4)図面を用いた変圧器の全日効率の計算
配電線路に接続された,定格容量20[kVA],定格二次電流200[A],定格電圧時の鉄損150[W],定格負荷時の銅損270[W]の単相変圧器がある。
この変圧器の二次側の日負荷曲線が図のような場合について,次の(a)及び(b)に答えよ。
ただし,負荷の力率は100[%]とする。
(a)変圧器の1日の損失電力量[kWh]の値として,最も近いのは次のうち どれか。
(1) 3.68 (2) 3.91 (3) 5.43 (4) 7.00 (5) 7.50
(b)変圧器の全日効率[%]の値として,最も近いのは次のうちどれか。
(1) 96.8 (2) 97.0 (3) 97.7 (4) 98.4 (5) 99.0
(a)の解答
問題図を使って負荷の値を確認し、変化は6時間毎であるので変圧器の1日の全損失電力量p[kWh]は(8)式から
p=24pi +∑a2pcnT=24×0.15+0.27×6×[(4/20)2+(12/20)2+(16/20)2+(6/20)2]
=3.6+1.83=5.43 kWh
回答 (3)
(b)の解答
変圧器の1日の出力電力量Wは(7)式から
W=∑aPcosθT=6×(4+12+16+6)=228 kWh
全日効率ηdはWとpを(6)式に導入して
回答 (3)
図面を活用して出力の変化と時間を確認して(6)から(9)式を用いて計算することが短時間の解答には重要です。
以上