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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
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実践的な複素数計算法(1)-インピーダンスとアドミタンスの使い分け 東京電気技術高等専修学校講師  福田 務

 交流回路の計算では、オームの法則をインピーダンスを用いて表す方法と、その逆数であるアドミタンスを用いて表す方法がある。大ざっぱに言えば、R, L, Cの直列回路はインピーダンス、並列回路はアドミタンスで定式化したほうが式が簡単になるが、これが決まりというわけではなく、ケースに応じて使い分けるほうがよい。ここでは、 具体事例を用い、解法選択の違いにより、問題が難しくなったり、簡単になったりすることを学習する。

1 分母、分子に分数を含ませない工夫

 [例題1]第1図の回路におけるインピーダンス formula004 formula004 を求めよ。

 [解答例①]インピーダンスを直接求める

formula005
formula005

 この式は途中であるが、分母、分子共に分数を含んでいて、あとの計算に相当労力を使うことになるので、つぎのように処理したほうが良い。

 [解答例②]インピーダンスを直接求める

  formula006 formula006  の変換を使うと、 formula007 formula007 よりずっとやさしくなる。 

formula008
formula008

 [解答例③]アドミタンスからインピーダンスを求める

formula009
formula009

 したがって   formula010 formula010

2 同じ電圧源を使用するとき、回路のインピーダンスが同じならば、回路に流れる電流は振幅、位相ともに等しい。

 [例題2]第2図の回路AとBとで電圧源は同じであり、電圧eは角周波数

  5rad/sの正弦波交流である。回路Aの電流iと回路Bの電流iが等しいとき抵抗r1およびr2の値はいくらか。

 題意より角周波数ω=2πfであるから、R,L直列回路のインピーダンスは

  formula011 formula011 であるから   formula012 formula012

 したがって回路Aのアドミタンスは

formula013
formula013

 また、回路Bのアドミタンスは

formula014
formula014

 題意より  formula015 formula015  であるから、この二式の実数部どうし、虚数部どうしは等しいことになる。 したがって

formula016             (1)
formula016             (1)
formula017               (2)
formula017               (2)

 (2)式の逆数をとると

     formula018 formula018  したがって  formula019 formula019

 これを(1)式に代入して

formula020
formula020

 したがって  formula021 formula021

3 アドミタンスをわける

 ここで、アドミタンスをコンダクタンスとサセプタンスにわけた場合の問題解法にどんな利点が生じるかについて調べてみる。

 いま、第3図のような誘導性回路について、アドミタンスを求めてみると

formula022
formula022

 この実数部をg、虚数部をbと置くと

    formula023 formula023  となる。このとき、gをコンダクタンス、bをサセプタンスと呼ぶ。

 また、第4図のような容量性回路の場合には、

formula024
formula024

となる。つまり、誘導性回路ではサセプタンスは負となり、容量性回路では正となることがわかる。いま、これらをベクトルであらわしてみると、第5図のように formula025 formula025 formula026 formula026  また formula027 formula027 formula028 formula028 formula029 formula029  であることもわかる。

 以上の内容をふまえて、つぎの問題に応用してみよう

 [例題3]第6図のように、50Hz100Vの電源に単相誘導負荷を接続したとき流れる電流は10Aで、力率は85%であった。この負荷にコンデンサCを接続して、力率を100%にしたい。コンデンサの静電容量をいくらにすればよいか。

 [解答の方針]

 この誘導負荷を見て、抵抗をR、誘導負荷をωLなどとおくことは考えなくてもよい。誘導負荷のアドミタンスが  formula030 formula030 で表わされることを利用して解くことができる。

 [解答]題意により  formula031 formula031  であることがわかる。

 また力率が85%であることからcosθ=0.85   したがって

  formula032 formula032       formula033 formula033

      formula034 formula034

 これにより、誘導負荷のアドミタンスは   formula035 formula035 となる

 したがってコンデンサを並列に接続した場合の合成アドミタンスは

formula036  
formula036  

 力率が100%になるためには、虚数部  formula037 formula037  が0になればよい。

  formula038 formula038  より  formula039 formula039  π=3.14 f=50を代入して

 Cの値は、ほぼ0.17×10-3[F]=170[μF]となることがわかる。

 [別解]

 この問題をアドミタンスを使わないで、別の立場から解いてみるとどうなるだろう。

 力率85%の誘導負荷を流れる電流をIとすると、このIは有効電流と無効電流のベクトル和であることがわかる。つまり、遅れ電流があることになる。どれだけの遅れ電流かというと、つまり無効分の大きさは

  formula040 formula040  となる

 ところが、コンデンサは進み電流を流すから、この5Aに相当する分だけコンデンサに電流を流させれば、お互い打ち消しあって無効分は0になってしまうわけである。そこでコンデンサに流す電流Ic=5として、静電容量Cを求めればよいことになる。

   formula041 formula041    つまり  formula042 formula042

 この関係を満たすC

formula043
formula043

 すなわち 170μFの値の容量をもつコンデンサを設置すればよいことになり、結論は一致する。



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