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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
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実践的な複素数計算法(2)- 交流ブリッジの平衡条件計算 東京電気技術高等専修学校講師  福田 務

交流ブリッジは、一般に可変コンデンサCや可変抵抗Rを調整してブリッジの平衡条件を満足させることにより、コイルのインダクタンスLやその抵抗Rを測定しようとするものなので、複素数を用いて計算する代表的な回路の一つである。ここでは、その手順を解説する。

1 交流ブリッジ解法の手順

 まず、交流ブリッジが平衡した条件のもとにおいて

① 各辺のインピーダンスを複素数で表わす。

② 対辺同士の積を等しいとおき、両辺が formula001 formula001 の形になるようにする。

③ 両辺の実数部、虚数部同士が等しいとおく、あるいは等式成立の条件により、測定する未知数を導く。

 例題でこの手順を示してみよう。

 [例題1]1図のようなマクスウェルの交流ブリッジにおいて、可変コンデンサCならびに可変抵抗Rを測定しようとしたところ、各素子が以下の値のとき、このブリッジは平衡状態になった。CRの値はそれぞれいくらか。

    R1=15Ω R2=300Ω R3=120Ω L=45μH

 [解答]ab間のインピーダンスを formula002 formula002 同様にbc間、dc間、ad間のインピーダンスをそれぞれ formula003 formula003 とすると

  formula004 formula004   formula005 formula005   formula006 formula006    formula007 formula007  

 ブリッジが平衡するための条件は  formula008 formula008  であるから

  formula009 formula009 formula010 formula010

 右辺の分母を払うと

formula011
formula011

 よって formula012 formula012

 ここで、両辺で実数どうし、虚数どうしは等しいので

       formula013 formula013 より   R=6Ω

  formula014 formula014    formula015 formula015

 よってC=0.025μF

 [解説] 交流ブリッジの平衡条件が成立した時の解法は、上に述べた①、②、③の順序を正確に実行することによって、解答に到達することができる。

 しかし、実数部と虚数部を含んだ式を導く過程では、数学的処理が重要になる。

 ①、②ができても、③の段階で数学的処理にとまどうと堂々巡りしてしまうことがある。時間的な制約のある電験問題などでは、特に数式処理に習塾しておいてほしい。

 このような事例を過去の電験問題から拾ってみることにする。

 [例題2]2図は破線で囲んだ未知のコイルのインダクタンスLx[H]と抵抗 Rx[Ω]を測定するために使用する交流ブリッジの等価回路である。このブリッジが平衡した場合のインダクタンスLx[H]と抵抗Rx[Ω]の値として、正しいものを組み合わせたのは次のうちのどれか。

 ただし、交流ブリッジが平衡したときの抵抗器の値はRp[Ω]Rq[Ω]、標準コイルのインダクタンスと抵抗の値はそれぞれLs[H]Rs[Ω]とする。

 (1) formula016 formula016    formula017 formula017   (2) formula018 formula018    formula019 formula019

 (3) formula020 formula020    formula021 formula021   (4) formula022 formula022    formula023 formula023

 (5) formula024 formula024    formula025 formula025

 [解答]交流ブリッジの平衡条件は、対辺のインピーダンスの積が等しいから

 2図の回路にこの条件をあてはめると

formula026
formula026

 したがって   formula027 formula027

 等式が成立するためには

     formula028 formula028    したがって  formula029 formula029

 また  formula030 formula030   したがって  formula031 formula031  でなければならない。

 正解は(4)となる。

 この例題では等式の展開が容易であったが、次の例題ではやや複雑になるので上手に展開して解答を導いてほしい。

 [例題3]3図の交流ブリッジが平衡した場合、Cおよびrの値はそれぞれいくらか。正しい値を組み合わせたものを次のうちから選べ。

 (1) formula032 formula032    formula033 formula033    (2) formula034 formula034    formula035 formula035

 (3) formula036 formula036    formula037 formula037    (4) formula038 formula038    formula039 formula039

 (5) formula040 formula040    formula041 formula041

 [解答]当然のことながら、交流ブリッジのそれぞれの辺のインピーダンスを求め、対辺の積を等しいとおくと

 等式  formula042 formula042  が成立する。

 (注意)ここでこの式を展開するため括弧をはずして計算しようとすると、 formula043 formula043 が分数の分母に表れたりして処理が困難になる。この場合、右辺の分母 ( formula044 formula044 )を両辺に掛けると展開しやすくなる。

 以下   formula045 formula045

       formula046 formula046

     この等式において、実数部どうし、虚数部どうしが等しいから

         formula047 formula047   よって  formula048 formula048

        formula049 formula049    よって  formula050 formula050  

 正解は(2)となる

 実力試しとして、ブリッジの平衡条件式を立てたあとの展開式を正しく導けるかどうか、もう1題。例題をあげますので試してごらんなさい。

 [例題4]4図の交流ブリッジ回路において、コイルのインダクタンスLxと抵抗Rxを測定したい。可変抵抗R1R2を調整して平衡を得たときLxRxはどのような計算式でその値を求めることができるか。

 [解答] 4図において、ブリッジが平衡したとき次の等式がなりたつ。

formula051
formula051

 上式の両辺を formula052 formula052 で割ると 

  formula053 formula053  ここで右辺を展開すると  formula054 formula054  

  formula055 formula055

  formula056 formula056   

  formula057 formula057

 この右辺をまとめると結局

  formula058 formula058  となり、実数どうし、虚数どうしは等しいので  formula059 formula059     formula060 formula060