労働安全衛生規則(以下、規則という)には高圧、低圧の活線作業では絶縁用保護具(以下、保護具という)を着用すること(第341、346条)、及び周囲の充電部で作業者が接触または接近による感電のおそれのあるものには絶縁用防具を設置するよう規定されている。本講では、保護具について、日常の管理、絶縁性能と試験について解説する。
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労働安全衛生規則(以下、規則という)には高圧、低圧の活線作業では絶縁用保護具(以下、保護具という)を着用すること(第341、346条)、及び周囲の充電部で作業者が接触または接近による感電のおそれのあるものには絶縁用防具を設置するよう規定されている。
また、高圧、低圧の活線接近作業でも第1図の範囲内に接近することによって感電のおそれのある場合には、その充電電路に絶縁用防具(以下、防具という)を設置するか、作業者が保護具を着用しなければならないことが規定されている(第342、347条)。
第1図では立った場合を示しているが、座った姿勢の場合も頭上、体側、足下とも同様寸法である。
第1図は規定値であるが、実際にはおおむね1m以内の接近には着用すべきである。
防具を着脱する作業のときは接近作業よりもかえって危険なことが多く、同様に保護具を着用しなければならない。
以上から保護具とは作業者が身に付けることによって、感電災害を防止するもので、電気安全帽、電気用ゴム手袋、絶縁用ゴム長靴、電気用ゴム袖などが代表的なものである。
これに対して防具とは、充電電路またはその至近箇所に取り付けて作業者が接触あるいは接近によって感電災害を受けることを防ぐもので、電線に付ける絶縁防護管、碍子(がいし)カバー、隔離板、ゴムシートなどがある。
保護具は作業者の生命を守る大切なものであり、常に所要の性能を保持していなければならない。このためには日常の点検及び保管に充分な注意が必要である。
保護具にはゴム製品が多く、温度・湿度などの影響を受けやすく、長期間使用しないでいたゴム手袋の内外面が癒着していることもまま見受けられる。
ゴム類では特に水気、汚れを長く付けていると劣化が促進されるため、使用後は充分清拭し、タルクなどを塗布して涼しい乾燥した場所に保管する。
操作の利便上、屋外キュービクル内に保管する例もみられるが、キュービクル内の気温上昇から劣化が促進されるので避けるべきである。
また、使用時の確認は保護具を使用する作業の安全上いちばん大切なことで、亀裂の有無など欠陥のないことを着用前に
作業者自身で必ず点検しなければならない。
特にゴム手袋は、それ自体は機械的に弱く、作業時に加わるいろいろな力に耐えるため、必ず上に皮手袋を重ねて着用しなければならない。
これを怠ると切断した電線端の突き出した素線が刺さる怪我もまれにあり、極めて危険である。
更に保護具の性能を十分に生かすためにも定められた正式な方法で着用することは大切なことで、着用していながら災害に遭うということになりかねない。
保護具は厚生労働大臣または都道府県労働基準局長が指定する検定代行機関が指定する検定代行機関が行う検定に合格したものでなければ使用してはならないため、新規購入時などには検定合格品であることの表示を確認する必要がある。
これらには見やすい箇所に、① 製造者名、② 製造年月、③ 使用の対象となる電路の電圧、が表示されている。
規則には保護具の耐電圧性能として第1表の値の電圧に1分間耐えることが定められている。
第2図に代表的な保護具の試験方法を示す。
できるだけ全部分を試験するため、コロナ放電や沿面放電を起こさない程度の寸法を水面上に出すほかは、なるべく深く水中に試験物を浸して、内部にも水を入れて交流電圧で試験する。
第1表の値は製造規格上の性能であるが、保護具は常に有効な絶縁性能を保持していなければならない。しかし、使用中の絶縁性能劣化のおそれは避けられない。
このため、交流300Vを超える低高圧、特別高圧の保護具は6ヵ月以内ごとに絶縁性能の自主試験をして、その試験で異常が発見されたものは直ちに補修するか、取り替えなければならない。
この場合の試験方法は第2図と同様であるが、試験電圧は第1表の値の1/2でよいとされている。この検査結果は3年間保存しなければならないが、使用する保護具が多い場合には台帳を備えて管理する。
直流750V、交流300V以下で使用する低圧用保護具については耐電圧の値については定められていないが、使用する充電電路の電圧に応じた絶縁効力をもつものでなければ使用してはならないと定められている。