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磁界(磁石と磁石の間)の中に銅線などの導体を置いたとき、第1図のように導体が移動すると導体に誘導起電力が発生する。これを電磁誘導現象という。ここで、磁界の方向、導体の移動する方向、導体に発生する起電力の方向の関係は第2図で示すように、右手の親指、人差し指、中指をそれぞれ直角方向に設定すると、親指の方向=導体の移動する方向、人差し指の方向=磁界の方向として、導体に発生する誘導起電力の方向=中指の方向で表すことができ、これをフレミングの右手の法則という。
1本の導体に発生する起電力eの大きさは磁束をΦ〔Wb〕、時間をt〔s〕とすると、ファラデーの電気誘導の法則からeは磁束Φの1s当たりの変化量で表され、
第1図の磁界は一様で、磁束密度B〔T〕(〔Wb/m2〕)、胴体の長さl〔m〕、導体の移動方向が磁界と直角で速度がv〔m/s〕とすると、導体が1s 間に移動する距離vtはv×1=v〔m〕、導体が磁束と交差する面積はlv〔m2〕、よって、1s 間の磁束の変化数はBlv、よって、
以上から発電機の起電力の方向はフレミングの右手の法則から中指の方向、大きさはファラデーの電気誘導の法則から として求めることができる。
直流発電機を対象に がどのように公式として表現されるのか説明する。
発電機の構造は第3図のように磁束を通し安い材料(軟鋼板など)を使った回転体の表面に絶縁された導体(電機子巻線)を配置する回転子、周囲には固定された磁石(磁界を作る界磁巻線と磁束を流す界磁鉄心)である固定子がある。発生する起電力の方向は導体の位置が左側と右側は逆になるので、そのまま引き出すと交流になってしまう。このため、導体の引出し口に整流子を置いて、ブラシを通して左側がプラス、右側がマイナス一定になるようにして直流を引き出す。
では、なぜ整流子が必要なのかについて簡単に説明する。
第3図のように磁極の中をa,bの2本の導体が一つの巻線として回転すると、 の起電力が各導体に発生する。Bは直流機の場合、第4図のように、ブラシの前後での反転を除き、N、S極はほぼ一定に作られているので、回転子導体に発生する起電力eはBに比例して第5図(a)のようにプラスとマイナスの交流が発生することになる。このまま電気を引き出すと交流になる。このため、導体を左側、右側で分離して起電力を引き出す装置としての整流子がある。この結果、引き出される起電力は第5図(b)のようにプラス方向の波形の集団となる。
次に と発電機の起電力の関係を解説する。第3図で、
a.回転子の速度v〔m/s〕は直径D〔m〕、1秒間の回転数をn回〔rps〕とすると、
v=円周×回転数=πDn〔m/s〕
b.磁束密度(平均)B〔T〕は1極当たりの磁束をΦ〔Wb〕、極数をp、導体の長さをl〔m〕とすると、
B=全磁束/回転子の表面積=1極当たりの磁束×極数/回転子の表面積
c.1導体当たりの起電力(平均)e[V]は、
d.発電機の起電力(平均)E〔V〕は、
発電機の全導体数をZ、並列回路数をa(電機子巻線の巻線方法で重ね巻は極数pと同じ、波巻は極数に関係なく2)とすると、直列に接続される導体数は
全導体数Z/並列回路数a=Z/a
よって、
(4)式は重要で、特に を覚えておくことが大切である。
三相同期発電機の構造の概要を第6図に示す。
三相交流は第8図のようにa相、b相、c相の三つの相があり、a相を基準にb相が120°、c相が240°遅れの正弦波交流で構成されている。したがって、三相同期発電機では第6図のように電気を発生させる電気子巻線は相ごとに角度を120°ずらしてa相a—a’、b相b—b’,c相c−c’のように相別に構成される。この配置を磁界の磁束蜜度の波形との関係で示すと第7図のようになる。
次に交流起電力の大きさについてa相など1相で説明する。なお、交流であるから、誘導起電力はそのまま引き出せるので整流子は不要である。
起電力 の瞬時値は磁界を作る回転子の磁束密度の変化が第7図のように最大磁束密度をBmとする正弦波であるから、角度をθとすると となるので、起電力は になる。
電圧や電流の大きさを表す方法には、瞬時値だけでなく、波形の面積の平均から算出する平均値、波形の二乗の面積の平均から算出する実効値がある。交流の場合は実効値が使用される。なぜかというと、抵抗R〔Ω〕に電流I〔A〕が流れると消費電力はI2Rである。直流の場合はIは一定であるが、交流の場合は正弦波で変化するのでI2の平均値を求めなければならない。これが実効値である。
更に同期機の場合は回転速度は周波数で決まる一定速度の同期速度である。また、直流機と異なり整流子は不要なので、導体数に変えて左側と右側導体を一括する巻線数を使う。こうしたことから、
a.平均値と実効値の関係は波形が正弦波の場合、
b.同期速度nは周波数f、極数pとすると、
c.巻線数Wと導体数Zの関係は巻線数は1周であるから、
d.同期発電機には並列回路はないので
これらを(4)式に導入すると、平均値Eは
実効値Vは
同期機は巻線の巻き方により合成電圧は理想値に対して低くなる。この関係を巻線係数Kと呼び、1以下になる。これを考慮すると、
同期機の起電力は交流であるから、実効値が使われること、周波数が使われること、巻線数が使われることなどを知ることが大切である。
第9図のように1点鎖線で示す固定磁界の中に導体を置いて表から裏方向に向かって電流I〔A〕を流すと、導体の周辺には電流Iによって図の点線のように右回りの磁界が発生する。その原理は第10図に示すアンペアの右ねじの法則に従い、磁界が導体を右周りに一周する。アンペアの右ねじの法則は右手を利用すると、親指は導体の方向に伸ばして、ほかの指は導体を握るように曲げる。通常は導体に流れる電流の方向に親指を向け、ほかの指の導体を握る方向が磁界の方向を示す。一方、コイルの場合は電流の方向にほかの指を向けて握ると、親指の方向が磁界の方向を示すことになる。
これを使って最初の磁界と導体の磁界を合成すると第9図のように導体の左側では二つの磁界の方向が反対であるので打ち消し合い、右側では同方向であるので重なっていくことになる。その結果、合成磁界は実線で示すように左側は磁束が少なくなり、右側は磁束が多くなってねじれ形の磁界になる。磁束はゴムのように直線を求めるので、右側は直線を目指して導体を左側に移動させようとする力を導体に与える。これが電磁力である。
電磁力の方向を表す方法としてアンペアの左手の法則がある。導体の電流の方向と、磁界の方向、発生する電磁力の方向については、第2図と同じであるが、今度は右手を左手に変えて、左手の親指、人差し指、中指を、それぞれ直角方向に設定すると、人差し指の方向=磁界の方向、導体に流れる電流の方向=中指の方向とすると、親指の方向=導体に発生する電磁力の方向となり、電磁力の方向を求めることができる。フレミングの右手、左手の法則をよく見ると、親指=力の方向、人指し指=磁界の方向、中指=電気(起電力または電流)の方向と共通である。発電機は右手を使って起電力=中指の方向、電動機は左手を使って電磁力=親指の方向を求める手段である。
次にこのとき導体に発生する電磁力の大きさについて考えてみよう。
第11図のように導体に電流I〔A〕が流れているとき、導体の微小部分dl〔m〕と直角方向にr〔m〕離れた点Pに発生する磁界の強さdH〔A/m〕はビオサバールの法則から、
P点にm〔Wb〕の磁極があるとすると、これに作用する力dF〔N〕は、
となる。この力は磁極mが固定されていれば、導体を移動させる力となる。
P点の磁極mから空気中においてr〔m〕離れた導体のdl点に生ずる磁界の強さH〔A/m〕はクーロンの法則から、空気の透磁率をμ0とすると、
(7)、(8)式から、
(10)
Hを磁束密度B〔T〕に変換すると、B=μ0Hであるから、上式は、
よって、電流I〔A〕が流れている直線導体l〔m〕に作用する力F〔N〕は、
となる。この(11)式が電動機の基本となる式である。
以上より電動機の電磁力は方向はフレミングの左手の法則、大きさは として求めることができる。
第12図の直流電動機で、固定子の磁界の磁束密度B、回転子の長さlの導体に電流I〔A〕が流れると、電磁力 が発生し、方向はフレミングの左手の法則により、図のように方向は左側の導体は上向き、右側の導体は下向きとなり、回転軸を中心に回転子を反時計回り(右回り)に回転させる力(トルク)が働くことになる。
トルクΤは回転子を回転させるモーメントで(軸からの距離)×(軸と直角方向の力)であるから、図から回転子の半径をr〔m〕、軸と直角方向の力Fとすると、導体1本のトルクT1は、
ここで、回転子の表面積Aは円周2πr×長さlであるから、
1極当たりの磁束Φ、磁極数pとすると、全磁束はpΦ、磁束密度Bは全磁束/表面積
これを(12)式に導入すると、
導体数Zとすると、全体のトルクTは、
並列回路数a、電動機の電機子巻線への入力電流Iaとすると、
以上より、
(15)式は重要で、特に を覚えておくことが大切である。
一方、回転子がn〔rps〕で回転しているときの運動エネルギーW〔J/s〕=〔W〕は、
W=力〔N〕×1秒間の移動距離〔m〕
ここで、1秒間の移動距離は円周×1秒間の回転数n=2πrn
W=F×2πrn=Fr×2πn=2πnT 〔W〕 (16)
(16)式は電力〔W〕とトルクの重要な換算式である。
上記については同期電動機についても同様である。ただし、同期機の場合はnは同期速度nsであるから(16)式に導入すると、
ここで、磁極回転子の回転数と周波数の関係は1〔Hz〕はN、Sの2極の回転子が1秒間に1周することであるから、f〔Hz〕では1秒間にf周することになる。
すなわち、1秒間の回転数=周波数/(磁極数/N、S2極)、よって、
同期速度nsは周波数fと磁極数pとすると、
次回は回路と連携した計算の方法、各種特性曲線などについて解説する。